とはいえ、「いざチャレンジ!」と思っても、DIY初心者にとってお部屋の改造はハードルが高いもの。興味はあっても、なかなか一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。
そんななか、DIYの敷居をぐっと下げるユニークな仕掛けのカスタマイズ賃貸「CLASKIT(クラスキット)」がこの春誕生しました。プランからセレクトするだけでオリジナリティあふれるカスタマイズ空間がつくれてしまうという、ウワサの物件を訪ねてみました。
CLASKITの第一弾となる物件があるのは、西武鉄道池袋線「桜台駅」から徒歩2分ほどの場所に建つ6階建てマンション。もともと、医療関連施設が入居する予定だったという1階から3階までのフロアを住宅に用途変更し、CLASKITとして今年4月に入居者募集をスタートしました。
その特徴は、「カスタマイズメニューから好みのキットを選んで組み合わせを考えるだけ」というシステム。カスタマイズキットとしてあらかじめ用意されているキットのメニューは、大きく分けて「壁」「床」「オプション」の3種類。パネル上の穴にフックをかけてバッグや帽子など色々掛けられるウォールキット、1488色から選べる壁用ペイント、杉やヒノキなどの床用無垢材、デザインのバリエーション豊富な輸入壁紙、アーティストによる壁面アート、ハンモックなどの小物類まで、住まいをいかようにもカスタマイズできるキットが充実しています。
入居者には入居時に「カスタマイズポイント」300ポイントが付与され、好きなカスタマイズキットと交換して部屋のカスタマイズを楽しむことができます。変更できるのは、原状回復義務のない壁面や床材などで、施工は業者に委託するのでラクチン。ちなみに、施工費用も全てポイントで賄えるそうです。
こうしたキットを組み合わせてどんな部屋をつくるか、考えるだけでもワクワクしそうです。なお、最初に与えられる300ポイントだけでかなりの改造が可能とのことですが、ポイント分の費用は全て大家さんが負担してくれているそう。お金の心配をせずにカスタマイズにチャレンジできるのもうれしいポイントです。
内覧から2カ月も立たないうちに満室になったという全5室。果たしてどんな仕上がりになっているのでしょうか? CLASKITの物件を借りているという、山口貴弘さんのお宅を訪ねてみました。
10年務めた商社を昨年4月に退社後、フリーランスとして独立したという山口さん。以前は、ワンルームマンションを借りて仕事をしていたそうですが、手狭に感じていたところCLASKITの募集を知り内覧へ。1LDKの広々したスペースとCLASKITのコンセプトを気に入り、即決で入居を決断したとか。
CLASKITとの出会いをきっかけに部屋づくりの楽しさに目覚めたという山口さん。今では色々手を加えたくて仕方がないそう。
「今までも、『こんな部屋にしたいな』と思うことはよくありましたが、カスタマイズするにしても制約があったりして、最初から諦めていた感じですね。この物件に出会ったことがきっかけで、これまで蓄積していた部屋づくりへの欲求が解放されている気がしています。自分のこだわりが活きた部屋で暮らすと、モチベーションも随分違います」(山口さん)
しかし、このCLASKIT。そもそもどんな背景があって誕生したのでしょうか?
企画・デザインを担当した株式会社ツクルバの奥澤菜採さんにお話を伺いました。
「DIYに興味があるけど、自分で部屋をカスタマイズするほどの自信はない、という方が最初の一歩を踏み出すきっかけを掴むにはどうすればいいのか。そんな考えからスタートして、CLASKITのアイデアが生まれました。
『ぼんやりと部屋のイメージは持っているけど、どんなアイテムを選べばいいのか分からない』という悩みも多いということで、こちらでオリジナルのキットを用意して、カタログからインテリアを選ぶように手軽にセレクトし、施工はプロの業者さんにお願いするスタイルにしました。それによって、入居者の方はキットの組み合わせを考えることだけに集中していただくことができます。
また、CLASKITを企画したときに一番こだわったのは、自分のライフスタイルを反映できるキットを用意したところです。例えば、本が好きな方は壁一面を本棚にしたり、山口さんのようにアウトドアのグッズを見せながら収納したり。CLASKITの組み合わせを考えることは、どんな風に過ごしたいか、自分の暮らしを再認識することにもつながるんです」(奥澤さん)
キット選びから施工までに掛かる手間を考えると、とくに初心者は尻込みしてしまう住まいのカスタマイズ。その点、CLASKITなら厳選されたキットから、組み合わせを考えればいいだけなので失敗や挫折の心配もありません。今後も別の物件で、導入する予定があるというCLASKIT。カスタマイズ賃貸の新しいカタチとして、ますます注目が集まりそうです。