前回、文房具カフェ店長推薦の万年筆の「インク」にまつわる情報をお届けしましたが、その中でもご紹介した自分だけの「オリジナルインク」を作ることのできるショップ、東京都・蔵前にある「ink stand by kakimori」にお伺いして、インク作りを体験してきました。

左奥がink stand。おしゃれな外観に「何のお店なの?カフェ?」と入ってくる方も

「ink stand by kakimori」は、2014年9月に有名文具店「カキモリ」が、同店舗の隣にオープンしたインク作りのための「スタンド」。市販インクのカラーバリエーションでは満足できない人たちが、自分だけの一色を求めて訪れます。

店内は、黒と白の配色にカウンターテーブルが配置されているシンプルな設計です。店長の広瀬さんによると、「インクの色を際立たせるために、店内はあえてモノトーンの世界観としました。これから自分の色を作り出してほしいという想いを込めています」とのこと。

バーカウンターのような店内。お店の奥には、インクの混色サンプルが置かれている

カウンターには、16種類のインク原液、スポイト、カップ、試し書き用の紙とガラスペンの「混色キット」が置いてあり、ここから2~3色のインクを選んで、自分の好きな分量を混ぜ合わせていくことでオリジナルインクを作成します。

来店する人が作る「色」の傾向を聞いてみたところ、人気なのはやはりブルー系。しかも鮮やかなものではなく、グレーを混ぜたような大人の色味を作る人が多いそう。黒との中間色的な色味が、市販品ではなかなか無いのが人気の理由のようです。

原色インクはブレンドすることを前提としたプライベートリザーブ社製のものを使用

試し書きに使うガラスペンは、使ったことがない人も多いのでは。フォルムの美しさも特徴です

さっそく、実際にインク作りを体験してみることに。「人気の色」のお話の中で、赤系を作る人が少数派と聞いたこともあり、赤っぽいインクを中心に、「Butter Cup」「Plum」「Shoreline Gold」をチョイスして混色してみました。

16色のインクに付けられた名前が、それぞれかわいくて絶妙。理科室の実験を思い出しながら、インクを一滴ずつカップに落としていきます。思い通りの色にたどり着かない…という時は、やり直しをすることもできます。ビーカーの中では濃く見えたインクも、実際紙に書いてみるとニュアンスが異なることもしばしば。

配合比率は重要なレシピとなるので、何をどのくらい入れたのか忘れないように

16種類を同比率で掛け合わせた場合の比較表。これをベースに、もう一色足すことも可能です

「瓶から見える液体の色と実際の色は意外と違う場合が多く、混ざりかたも水彩絵の具などとは違い、そこが面白いところでもあります。イメージをつかむには、ラベルの色や店頭の混色サンプルを参考にするといいと思います」と広瀬さん。

混ぜて書く瞬間のウキウキ感は体験する価値アリ。赤系、青系と2種類試した結果、青緑色のものをチョイスすることに

来店される方の傾向については、「もともと万年筆が好きでインクにもこだわりたい、という方ももちろんいらっしゃいますが、3割くらいの方は『万年筆は持っていないけれど、インクの色もかわいいし、始めてみたい』という方ですね」とのことでした。「ink stand by kakimori」はオープンしてまだ1年ですが、3カ月に1度のペースで訪れる方もいるとか! ちなみに、「土曜日は混み合うこともありますので、可能であれば平日のご来店がオススメです」とのこと

気に入ったものができたら、その調合比率を店員さんに伝えると、15~30分ほどでボトルに詰めたオリジナルインクとラベル、レシピカードを受け取ることができます。

色の配合が決まったら、スタッフさんに調合してもらいます

レシピカードももらえるので、使い切っても同じものを追加で作ることができる

カキモリの透明軸万年筆(3,240円)とオーダーインク(2,160円)のセット(右)(箱はサービスだそう)

また、万年筆を持っていないという人やギフトには、万年筆のインクが入れられるカキモリオリジナルのボールペン(1,728円)や万年筆も販売されています。贈る相手のイメージに合わせたインクを作成してセットでプレゼントするのもオススメです。

広瀬店長が、「これまでに無い自分だけの色彩を、ぜひ自分の手でつくりあげてほしいですね」と語っていたのが印象的でした。明るいバーカウンターのようなおしゃれな店内で、これまでに無い自分だけの色彩を作ってみたいという方はぜひ、ふらりと立ち寄ってみては。