住まいの雑学
のぞいてみよう外国の住宅事情
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嘉屋 恭子
2015年4月28日 (火)

離婚と引越し…。アメリカの実家が空き家にならないワケ

離婚と引越し…。アメリカの実家が空き家にならないワケ(写真:iStock / thinkstock)
写真:iStock / thinkstock

2014年の総務省統計では空き家が13.5%となり、空き家や“実家の片づけ”などがニュースをにぎわしている昨今。先日もTV番組で空き家特集が放映されていたが、その際、アメリカ出身のタレントが「アメリカには、実家がないんです」と発言していた。はたして、実際のところはどうなのだろうか。日本の空き家問題解決の糸口になるのか、取材してみた。

実家の概念が薄い米国。理由は離婚と引越しの多さ!

広大な国土に、さまざまなルーツを持つ人々が暮らすアメリカ。確かに日本のような実家のイメージは湧いてこないが、実際のところはどんな意識なのだろうか。アメリカで暮らす不動産エージェント・西川ノーマン裕子さんに聞いてみた。

「アメリカのどの地域・階層・人種をみるのかで異なりますが、“実家”という概念はまったくないわけではありません。例えばヒスパニック系やアジア系は、比較的一カ所に長く住み、祖父母も3世代一緒というケースもあるので、こうなると日本と同じような『実家感覚』は強くあるかと思います」

なるほど、アメリカでは「住まい」や「家」「家族」に関する思い入れにも多様性があるようだ。

「また、人種を問わず、子どものころ、親と一緒に住んでいた家があり、まだそこに親が住んでいると、子どもが独立してからもホリデーやバースデーなどで集まったりします。そのときは日本人が『実家に行く』というのと同じ感覚です」。とすると、冒頭のアメリカに実家がナイという説には反するようだが、一方で、アメリカならではの事情もあるようで、「総じて日本よりも実家の概念が薄い」のではという結論になった。その事情を聞いていこう。

「ひとつはアメリカの離婚率の高さです。日本より離婚率の高いアメリカでは、1000人につき6.8人結婚し、3.6人離婚、つまり結婚した半数は離婚すると言われるほど。また、転居回数も多く、頻繁に引越すんです。ですから、両親が一カ所にずっと住み続けていることは多くありません」

離婚と引越しーー。アメリカの「実家」といっても、やはりその国ならではの、ライフスタイルを反映した事情があるのだな、と実感する。

引越しや移住に積極的なのは、アメリカのスピリット!?

それでは、なぜそんなに頻繁に引越しをするのだろうか。

「国土が広くて、車での移動も多いため、たとえ同じ地域の中であっても転職で別のエリアに仕事が見つかると、長距離の運転で通勤するよりも、引越しして近いところに住む考え方をしますね。それに、中古物件の流通が盛んなことも大きいです。また、基本的には他国から移住してきたり、土地を開拓して移り住んできた歴史があるため、『先祖代々引き継いだ土地』を大切にする感覚の人は少数派。ライフスタイルの変化に伴って地域間を移動するのが当たり前なんです」(西川さん)

筆者が素朴な疑問として抱いた「アメリカに実家はナイ説」だったが、その本質を迫っていくと、アメリカの国の成り立ちにまで遡る結果に(!)。また、移民を受け入れているアメリカでは、まだまだ人口が増え続けている。

「これも地域や不動産市況にもよりますが、基本的にアメリカでは人口が増え続けているため、中古住宅になっても、環境やメンテナンスが良ければ価値が下がらず、取引されます。そのため、必然的に実家が空き家になることも少ないですし、日本と比較しても空き家率は低いと思います」

今回はアメリカの実家と空き家事情を取材したが、想像以上に「アメリカらしさ」あふれる結果となった。成熟した文化を持つヨーロッパ各国や成長著しいアジアではまた、違う「実家事情」があるはず。機会があればぜひ、他国の実家事情も聞いてみたいと思う。

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のぞいてみよう外国の住宅事情 土足生活に代表されるように、日本と外国の住まい事情は違うもの。ちょっと気になる外国の住まいや生活事情をのぞいてみましょう。
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