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金井直子
2015年5月8日 (金)

自宅の仕上げは自分たちで! “新築DIY”を楽しむ人が増えている

自宅の仕上げは自分たちで! “新築DIY”を楽しむ人が増えている(画像提供:HandiHouse project)
画像提供:HandiHouse project

自宅を新築する際に、自分で壁や床を塗装したり、床材や梁をエイジング加工したりするといった、“新築DIY”(Do It Yourself)を行う人が年々増えています。「なぜ自分で?」「どんな風に行っているの?」と気になって、実際に自宅の壁塗りや床張りを家族で行ったという施主さんの現場を訪ねてみました。

壁や天井の仕上げを家族みんなで行う、『参加型の家づくり』

訪ねたのは、東京都武蔵村山市の閑静な住宅街に立つ福田さんのお宅。引き渡しを10日後に控えた3月半ばごろのことでした。「今日は洗面室の塗装を仕上げています」と施主の福田綾さん。次男のさくちゃんと、洗面室をオレンジ色の塗料で仕上げている建築中の現場です。

この日で現場は6回目だという福田さん。既にほとんどの壁は白やオレンジ色に塗装済みです。「この家の室内は全部、私たち家族4人で塗装します。現場には計10回通って完成させる予定です」と微笑む。

【画像1】6回目の現場ともなると、塗装の腕もだいぶ上がってきました。さくちゃんも真剣に仕上げ中。自分の家を仕上げる楽しさ・物づくりの心がお子さんにも伝わっています(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像1】6回目の現場ともなると、塗装の腕もだいぶ上がってきました。さくちゃんも真剣に仕上げ中。自分の家を仕上げる楽しさ・物づくりの心がお子さんにも伝わっています(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

福田邸は、「自分でつくった愛着のある家で暮らす」をテーマに、ワークショップ形式での家づくりを実践する建築家集団「HandiHouse project」と、東京都東村山市の地域工務店「相羽建設」の「木造ドミノ住宅」(※)がコラボした新築住宅。一級建築士で大工でもある「HandiHouse project」の加藤渓一さんが、福田邸の設計と施工管理に加え、内装の施工、家具・建具の造作を行い、室内の壁と天井の塗装を施主の福田さん家族が行うというプラン。これまで中古住宅のリノベーションを中心に行っていたHandiHouse projectが手掛けた新築住宅の第一号だそうです。

※「木造ドミノ住宅」とは:構造躯体・断熱と内装・設備を分離した「スケルトン・インフィル構造」で、室内に必要な柱は1~2本となり、外壁と床面の強度を上げた強固で断熱性の高い箱とすることで、間仕切りのないオープンな空間が実現。子どもの成長や家族のライフスタイルに合わせて室内を変化させていくことが可能。内装と設備をセルフビルドしやすいつくりでもある。

「現場に来るたびにどんどん仕上がっていくのが楽しい!」

HandiHouse projectの加藤さんによると、「工事費の見積もりを基に、施主さんがDIYの分担箇所を決めます。関わる度合いは施主さんによってさまざまですね。初心者でもDIYしやすいのは壁・天井の塗装、床張りなどがあり、なかでも難易度が低いのは塗装。室内の塗装を全部行うとコストを大幅に抑えられます。でも塗る面積が尋常ではないので、あとから『しまった。予想以上に大変』と思う施主さんも多いようです(笑)」

一方、施主の福田さんは「最初に塗装方法の簡単なレクチャーを受けました。道具や素材はすべて用意してくれますし、加藤さんは毎日現場で造作工事をしているので、その横で安心して臨めました」。
最初は失敗もあり、塗料が梁や柱にはみ出してしまったこともあるそう。

「天井を塗るのが特に大変でしたが、だんだん上達してきました。スケジュール通りに進まないと加藤さんから『これが終わらないと住めませんよ!』『遅れても手伝えませんよ〜』と、よくお尻を叩かれましたね(笑)」

それに対して加藤さんは、「福田さんのように最初からやる気満々の方でも、途中でくじけそうになりますが、やめられると困っちゃうので、本気になってもらうよう発破をかけ続けます。施主さんが塗装職人さんも兼ねるわけですからね。挫折しそうになるのを乗り越えて最後までやり遂げると、大きな達成感や満足感が待っていますよ」

【画像2】「うまく仕上がっていますね」と福田さんを労う加藤さん(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】「うまく仕上がっていますね」と福田さんを労う加藤さん(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像3】洗面室の塗装を終えて休憩中の福田さん親子。後ろの白や藍色の壁も福田さん家族による塗装です(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像3】洗面室の塗装を終えて休憩中の福田さん親子。後ろの白や藍色の壁も福田さん家族による塗装です(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

『自分でもつくれるんだ』『自分でやりたい!』と目覚める人が増えている

福田さんが新築することになったきっかけは、住んでいた賃貸住宅が老朽化で取り壊されることになったこと。

「築50年位経っていそうな平屋でした。鍵がネジ式の木製窓でインターホンがないなど、まさに昭和レトロそのものの寒くて不便な家でしたが、自分で壁を塗ったり棚をつくったりしても良いという条件に惹かれて、とても気に入って6年ほど暮らしました」と福田さん。

引越し先を探したものの、自分で手を加えてもよい平屋の賃貸物件はなかなかなく、「自分の好きな家に仕立てたいなら家を建てる?」という夫の言葉で、新築へ気持ちが傾いたそうです。

【画像4】平屋にあったレトロなレリーフ模様の型ガラスを譲ってもらい、新居のドアに再利用(写真撮影:左/SUUMOジャーナル編集部、右/相羽建設)

【画像4】平屋にあったレトロなレリーフ模様の型ガラスを譲ってもらい、新居のドアに再利用(写真撮影:左/SUUMOジャーナル編集部、右/相羽建設)

福田さんがDIYに目覚めたのはお父様の影響。「実家では小さいころから、父が棚をつくったり、押入れを改造したりしている姿を見て育ったので、自分でも『ここに棚があればいいのに』と思ったら、つくっちゃうようになりました」

自邸の現場については、「来るたびにどんどん家が仕上がるので、楽しくてわくわくしますね」と笑顔を見せます。家族全員がそろって現場で作業をしたのは3回ほど。それ以外は来られる家族だけで通い、時にはお父様が一人でマイ工具を片手に、床張りや塗装などの作業をしにくることもあったそう。

「父はここに暮らすわけではないのに、『ここまで施主が参加できるのはいいね』とDIYを一番楽しんでいました。夫も家づくりに興味はあっても自分でものづくりをすることがなかったけれど、もともとものづくりが好きな長男と一緒になってかなり楽しんでいました。次男も遊びながらたくさん手伝ってくれたんですよ」と、楽しい思い出を語る福田さん。

【画像5】左/家族で塗装中の一コマ。右/床張りをするお父様とさくちゃん。家族みんなで仕上げていくという気合いが伝わってきます(画像提供:HandiHouse project)

【画像5】左/家族で塗装中の一コマ。右/床張りをするお父様とさくちゃん。家族みんなで仕上げていくという気合いが伝わってきます(画像提供:HandiHouse project)

4月3日に晴れて入居となり、「ここはあの時、苦労して塗った場所だな、ここはとても良く塗れたところだな」と暮らしの折々に思い出がよみがえるそうです。

「建築中の家を見ていたので、床下や壁の構造までよく知っています。建築の一部である塗装だけでもみんなで手掛けたので、『自分の家』という思いが強くなりました」

入居後もキッチンに棚を増設し、ロフトへの登り綱をつけるなど、DIYがさらに進行中の福田邸。「アイデアを思いつくと、あれこれ工夫してみたくなります。この家の端材や塗料もまだ残っているので、どんどん棚が増えていくかもしれません(笑)」と微笑む福田さんでした。

新築の家を取材することの多い筆者ですが、「家族で床を塗装」「漆喰塗りを頑張った」という人から、「好きなタイルと木材を張ってアレンジ」「柱や梁、床に凹凸や傷を付けるエイジング加工でアンティークスタイルに」という凝った人まで、ここ数年、新築DIYを楽しんでいる人に出会うことが多くなりました。

自分でやる人が増えているというのは、コストダウンのためだけでなく、福田さんのように、「家族でつくること」や「愛着のある家で暮らすこと」が大きな楽しみとなっているからなのでしょう。

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