40歳以上の日本人の約20人に1人が緑内障という疫学調査がある。緑内障とは一つの病気ではなく、眼圧(眼球内圧)によって視神経が圧迫され視野や視力が障害される病気の総称だ。
急性と慢性があり、急性では急に眼圧が高くなるため眼が重い、見え方が悪いなどの自覚症状がでることもある。しかし、慢性はほとんど自覚症状がなく進行し、気づいたときには重症で、失明寸前ということもある。
東京逓信病院眼科の松元俊院長補佐兼眼科部長に聞いた。
「眼圧に対する抵抗力は人によって違います。他の人にとっては問題ない眼圧でも、ある人にとっては高すぎることもあります。日本人にはこの正常眼圧タイプの緑内障が多く、眼圧を計っただけでは緑内障とは診断できません。眼底検査で視神経の状態を診て、視神経が痩せて萎縮していたら緑内障を疑い、視野検査などの精密検査を行ないます」
緑内障は中高年になると増える目の成人病であり、最大のリスクは老化による視神経の抵抗力の低下だ。また加齢に伴い、眼の中に栄養を補給する液体(房水)の排出口である隅角に、ごく小さな細胞の破片が詰まって房水が流れにくくなり、その結果、眼圧が高くなることもある。他にステロイド軟膏などの薬物により、眼圧が上がることもある。
緑内障の治療は眼圧を下げることである。視神経が耐えられる程度まで眼圧を下げる治療を行なう。治療法は4種類ある。【1】点眼薬【2】内服薬【3】レーザー治療【4】手術で、イギリスを除く先進国では【1】の点眼薬が第一選択だ。
点眼薬は薬理作用別に数種類あり、手軽に使えて副作用も少ない。内服薬は手足の指先のしびれや、ビールがまずくなるといった味覚の変化や下痢などの全身的な副作用がある。レーザー治療は入院の必要がなく何度でもできるメリットがあるが、眼圧を下げる効果は不確実である。
イギリスにおいて手術が治療の第一選択になっているのは、点眼薬や内服薬は長期間使用しなければならないため薬剤費用を考慮すると手術の方が経済的だと考えてのこと。しかし、緑内障の手術の成功率は約60%と低く、日本では手術を最初に行なうことは特殊なケースに限られる。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2013年5月3・10日号