これからの住まい・暮らし
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末吉 陽子(やじろべえ)
2015年6月1日 (月)

主夫芸人が伝授! 家事が楽しくなる考え方の秘訣とは?

主夫芸人が伝授! 家事が楽しくなる考え方の秘訣とは?
写真撮影:末吉 陽子
結婚後も仕事を続ける女性が増えている昨今。夫婦共働きとなると、家事は平等に分担したいもの。とはいえ、女性に比べると家事をそつなくこなせる男性はまだまだ少数派かもしれません。もちろん男性に限らず、家事が苦手だからと嫌々やっているようでは、家事の腕も上達しないものです。
ときに退屈に感じてしまう家事ですが、せっかくなら前向きに取り組めないものでしょうか?
そこで、その道5年の“主夫”である中村シュフさんに、家事を楽しくするための秘訣を教えてもらいました。

「家庭に入ってほしい」彼女からのプロポーズで主夫業に転身

もともとコンビのお笑い芸人だった中村さんですが、5年前から「家庭に入り」主夫になることを決意。以来、家事のエキスパートとして働く妻を支えつつ、“パート”でテレビやラジオ番組、イベントの司会までこなすなど、ちょっと異色な芸人活動を行っています。

そもそも中村さんは、なぜ主夫になろうと思ったのでしょうか?

「僕は、男子校出身なのですが、高校に入学する少し前に男子も家庭科が必修になったんです。男ばかりのむさくるしい教室で、家庭科の先生が授業中に発した『これからの時代は、家庭科は男性こそ学ぶ必要がある』というメッセージが強烈に印象に残りまして。当時、将来は芸人になりたいという夢を持ちつつも、教師になりたいとも思っていたので、家庭科の先生として、母校へ教育実習に戻ってきても面白いんじゃないかと。家庭科は勉強よりも好きだったこともあって、大学の家政学部に進学しました」(中村さん、以下同)

しかし大学卒業後は教師にはならず、憧れだった芸人の世界へ飛び込んだそう。

「家庭科の教員免許も取得したものの、お笑い芸人の夢も捨てきれず、卒業後1年くらいアルバイトをしながら2003年にコンビで芸人活動をスタートしました。2006年にはM-1グランプリ準決勝にも進出したのですが、紆余曲折を経て2010年にコンビを解散。それから、芸人としてのモラトリアム期間に突入していたところ、当時付き合っていた彼女から『仕事は私がするから家庭に入ってほしい』と突然プロポーズされたんです。彼女にはホントに助けてもらいました(笑)」

もともと家事に抵抗がなかったこともあって、その申し出を即行で快諾。主夫業も全く苦にならなかったといいます。そのうち、「元芸人で専業主夫なんて面白いし、お前だけしかいない!」という先輩芸人からの声に後押しされ、ピン芸人としての活動もスタート。現在にいたるそうです。

中村シュフ流「家事を楽しむコツ」とは?

家事に加え、3歳と生後9カ月お子さんの育児にも奔走しながら、テレビやラジオを舞台に活躍中の中村さん。今年4月に出版したエッセイ集『主夫になってはじめてわかった主婦のこと』(猿江商會)のなかでは、「部屋が片付かない原因は『思い出』と『可能性』」、「家事の『連鎖』がハマるとけっこう快感」、「育児は失敗を避けようがない『イレギュラー家事』」など、思わず頷きたくなる名言がたくさん飛び出します。

ユニークな視点で家事を見つめている中村さんに、家事をするうえで大切にしている考え方を聞いてみると、“家事を楽しむヒント”をたくさん発見することができました。

【画像1】日課の、洗濯物を干しているところの様子。「柔軟剤をどれにしようか選んでいるときって楽しいですよね!」と中村さん(写真提供:中村シュフ)

【画像1】日課の、洗濯物を干しているところの様子。「柔軟剤をどれにしようか選んでいるときって楽しいですよね!」と中村さん(写真提供:中村シュフ)

「毎日繰り返される家事にやりがいを感じない、パートナーが手伝ってくれない、など家事にはさまざまな悩みがつきもの。ストレスを抱え込まないためには、“感情を言語化”して積極的に解決するように心がけるといいでしょう。

家事をストレスに感じているという方の話を聞いていると、“何が苦手”で“解決するためにはどうしたらいいのか”というところに踏み込んでいないのかなと思うことがあります。解決のための行動を起こさずに、『めんどくさい』とか『パートナーに言っても分からない』という感情だけに留めてしまうと、ストレスに変化してしまいやすいのかなと。

例えば、食器を洗うのがめんどうだという場合は、『食洗器を使うのはどうか』とか、『相手に手伝って貰えないか相談しよう』とか、具体的にどうしたらいいか考え、パートナーとコミュニケーションをとりながら、自分や家族に合ったオリジナルの家事のスタイルを見つける。そうすることで、苦手意識からも解放されるのではないでしょうか」

家族の1日を組み立てる“ハウスワークデザイナー”としてのこだわり

感覚で動く女性に対し、男性は理屈で動くといわれるだけに、解決のために理詰めで考え行動するのは男性ならではのアプローチかもしれません。また、家事を効率よくこなすための「戦略」を立てて取り組むようにすると、一つひとつのタスクをクリアするやりがいや達成感を得られるようです。

「家事を上手くやるには、 “料理” や“掃除”という単体ではなくて、全体のバランスを取りながら切り盛りするという感覚が大切なんだと思います。一日・一週間・一カ月という“ミクロ”と“マクロ”の視点で家事のスケジュールを考えながら、個人と家族全体の予定を調整することがキモではないでしょうか。

仕事でいうと『コーディネーター』に近いイメージかもしれませんね。重要なのは、どの家事にどれくらいのパワーを掛けるか、全体の流れのなかでどれに重点を置くかというのを取捨選択し、適切に判断することです。あと、単なる家事という枠組みを超え、“家族の1日をデザインする“という感覚を持つのもいいと思います。家事を効率よく行うことで家族にとって充実した時間を生み出す、いわば『ハウスワークデザイナー』ですね」

家事のなかにひとつでも“これが好き”と思えるものを持つ

そうした姿勢で取り組めば、家事を通じてさまざまなスキルアップにもつながると中村さんはいいます。

「家事って義務的に仕方なくやるイメージがあるかもしれませんが、皆が心地よく暮らすためにどうしたらいいか考えるのは、仕事でのマネジメント能力や部下を育成する力にも通じる、やりがいのあることなんじゃないかなと思います。

それに、家事も突き詰めれば、プロの領域に達することだってできる。料理だってシェフ並の腕前も目指せるだろうし、掃除も効率的な方法を追求していった結果、市場でヒットするようなアイデアグッズを生み出せるかもしれない。家事の一つひとつが、そんな夢と希望の宝庫だと思います。そういう意味では家事のなかに、ひとつでもこれが好き! 極めよう! という気持ちを持てるものがあると、日々の生活が随分と違ったものになるのではないでしょうか」

中村さん自身も、つまらないと思われがちな家事を面白くするため、常に思考転換できないかと考えているそう。

「家事は生きていくうえで逃れられないものです。でも、『しっかりやらないと』と気負いすぎると自分が疲弊してしまう。それは快適に暮らせていないということになってしまいます。手を抜くところは抜きながらも、やりがいや楽しさを見つけることはいくらでもできると思うんです」

仕事でも育児でも、考え方次第でどんな風にも楽しめるもの。中村さんの考え方を取り入れて、自分なりの家事の楽しみ方を見つけてみたいところです。

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