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ユニバーサル・ミュージック・グループの会長兼CEOルシアン・グランジ(Lucian Grainge)は2020年まで同職を延長する契約でレーベルと合意しました。

世界60カ国以上で50以上のレーベルを運営するユニバーサルミュージックは世界最大のレーベルグループです。そのトップを努めるグランジは音楽業界で最も影響力のあるビジネスパーソンの一人として知られています。

ユニバーサル・ミュージック・グループの親会社であるフランスのVivendiは、グランジとの契約延長に合わせて、ユニバーサルミュージックの収益成長を継続させ、音楽業界の変革をリードする役割を果たすための5年計画を発表しました。

そのプランでは次の5つの戦略を掲げています。

・デジタル音楽でのマネタイゼーションの促進
・プラットフォームとのパートナーシップによるオーディオおよびビジュアル・コンテンツのリーチ拡大
・ブランドおよびスポンサーシップとの戦略的提携の強化
・業界トップのアーティスト・マネジメントおよびタレント発掘能力の推進
・アフリカ、インド、中国など潜在性の高い市場への投資の継続」と5つの戦略を掲げています。

この戦略のキーパーソンがルシアン・グランジになります。

1986年にPolyGram Music Publishingを立ち上げたグランジは、その後ユニバーサルミュージックUKの会長、ユニバーサルミュージック・グループ・インターナショナルの会長兼CEOなどを努め、2011年からユニバーサルミュージック・グループの会長兼CEOを務めています。グランジが会長になってからユニバーサルミュージックのデジタル音楽からの収益は2010年が10億300万ユーロだったのが、2014年には16億4000万ユーロと58%成長しています(しかし売上は4年で2%しか上がらず)。

またグランジは2011年のユニバーサルミュージックのEMI買収とパーロフォン・レーベル・グループのワーナーミュージックへの売却を指揮しています。さらにBeats by Dreの株式14%をアップルに売却(4億ドル以上の売上を計上)、ジェイ・ZのRoc Nationとの提携など音楽以外でのビジネスで成功を収めてきました。音楽業界誌Billboardが選ぶ音楽業界で影響力のある100人「Power 100」で毎年のように上位に位置するほどで、業界で影響力と発言力を持つ人物と言えます。

グランジは「定額制音楽配信」の強いサポーターの一人で、聴き放題の有料配信が音楽の未来だと公の場で発言を繰り返してきました。一方ではSpotifyやYouTube、Pandoraなど無料で広告モデルの配信を行う音楽サービスでは、音楽ビジネスのエコシステムが維持できないと懐疑的な見解を示してきました。この人の発言や行動によって、音楽サービスとの契約でしたり交渉がどちらに進むかが決まるとも言えるので、当面はユニバーサルミュージックはサブスク型音楽サービスでのビジネスには積極的に関わっていくことになるのではないかと予想ができます。

ソース
Vivendi: Five-year development plan for Universal Music Group – Lucian Grainge committed to UMG and Vivendi at least until 2020(Vivendi)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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