物事には必ず終わりがやってくる。犬のしつけのトレーニングにも必ず卒業があるが、その後、まったくトレーニングをしなくなるのは犬のためによくないという。犬の飼い方の基礎知識や生態などを分かりやすく解説した『イヌのホンネ』(小学館新書)著者で、犬のしつけ教室・Can! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導する西川文二氏が、しつけトレーニングの効能について解説する。
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犬のしつけのトレーニングにも卒業がある、ってな話を以前した。しつけのトレーニングは、日常生活を快適に、安全に、ストレスなく過ごすために不可欠。ってことは日常生活で必要な行動が諸々できるようになれば、トレーニングの時間はもう不要。しつけのトレーニングを「卒業」する、ってのはいわばこのことを意味する。
ところがこの卒業を迎えることで、問題もでてくる。それは、飼い主とのコミュニケーションの時間が減ってくる、ってこと。
何かを教え教えられる、その二者の間には、濃密な時が流れる。人間の場合、小さい子ほどいろんなことをお母さんが教える。だけど成長するにつれ、教えることは減ってくる。結果、コミュニケーションの時間も、減ってくる。
で、ですね、私めはしつけのトレーニングの卒業を迎える飼い主さんには、こうアドバイスする。芸を教えましょう、ってね。実際私めも、今は亡き初代パートナーには、5歳を越えてから毎年最低2個は、新しい芸を教えてた。
ハーイにバックにゴロンにオジギ、腕の輪くぐりに足にオテ……それぞれの詳細をここでは述べませんけどね、犬に新しい何かを教え続けるってことは、犬の脳には新しい回路ができ続ける、ってこと。犬のアンチエイジングにもきっと役立つはずですわな。
芸は身を助くじゃないけれど、まぁ、芸はいろいろ役に立つ、ってこってすよ。
※週刊ポスト2015年3月6日号