だれもが一度は見たことがあるだろうジブリの名作「となりのトトロ」。映画公開が1988年だったので、なんと今年で公開から25年が経つ。本作の主人公、サツキやメイたち草壁一家が生活する家を再現した「サツキとメイの家」は、2005年の「愛・地球博」で大人気のパビリオンだったが、現在も愛知県長久手市にある「モリコロパーク」で見学することができる。この夏はジブリの新作「風立ちぬ」の公開が予定されており、また人気が高まりそうなサツキとメイの家。「まだ行ったことがない!」という人に、改めて見どころをご紹介しよう。
昭和30年代が舞台となっている本作。サツキとメイの家は、もともと別荘として昭和初期に建てられたものを賃貸として借り、朽ちかけたタイル貼りを自分たちで手入れして暮らしているという設定だ。ふたりはボロボロの家を見て「おばけやしき!」とはしゃぐが、かけ湯や洗い湯のための小浴槽をもつ浴室やタイル貼りのおくどなどは、当時としてはかなり贅沢なつくりとなっているのだ。
サツキとメイが蚊帳を吊って寝た居室は、ふすまやガラス戸を開け放てば周りの自然と一体になったような開放的なつくりで、池から渡る風が涼を運んでくれる。屋外には井戸があり、実際にポンプを押して水を汲むことができる。また大学講師でもある父親の書斎は、蛇腹の扉を開けば抜群の採光性を誇る。
昭和初期の建物はこの家のように、冬は厚着をすることで寒さに対応できるため、夏の過ごしやすさを基準に設計されていて、密閉型の現代建築とはかなり対照的だ。また欄間や縁側など、建物と外、部屋同士の境界がずいぶん曖昧につくられているが、これは狭い生活空間を少しでも広く使うための工夫でもあった。
下駄箱の中には靴やぞうり、茶ダンスの中には茶碗や調味料がずらっと並ぶなど、建物内はサツキやメイの声が聞こえてきそうなほど、生活感にあふれている。サツキのランドセルの中には当時の教科書が詰まっているなど、物語に出てくるような細かい小道具を探すのも楽しみの一つだ。
家の中は春夏秋冬の季節に合わせて少しずつ展示内容がかわるため、夏の蚊帳や冬の火鉢など、来館するたびに当時の暮らしの新しい発見ができそう。
子どもたちがマックロクロスケを見つけようと走り回る、昭和の原風景のような「サツキとメイの家」。映画の世界を楽しむばかりでなく、和洋折衷の特徴的なデザインや開放的な間取り、スタジオジブリ監修の庭と借景など、今も参考になるような暮らしの知恵が詰まった空間だ。
見学は当日券でも可能だが、混雑する夏休みは予約をするのが確実。見学してから改めて映画を見ると、またひと味ちがうかも?