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三行広告が生んだ惨劇 百人超の子の命が奪われた寿産院事件

 新聞の片隅に載せられている「三行広告」には、市井の人々の本音を剥き出しにしたメッセージが詰め込まれている。しかしそんな三行広告が生んだ惨劇が「寿産院事件」だ。

 1948年1月のある夜、東京・新宿で4人の嬰児の遺体を運ぶ葬儀屋が非常警戒中の警察に見咎められた。遺体の数と埋葬許可証の数が合わなかったため、不審に思った警官が追及したことから、前代未聞の乳幼児の大量殺人が発覚する。

 舞台となったのは新宿柳町の助産院「寿産院」。院長夫婦は新聞・雑誌の三行広告で「子供を預かる」と宣伝し、1人あたり5000~8000円の養育費で引き取っていた。当時は避妊技術が十分でなく、中絶も法律で禁止されていた。満足に食べさせることができず、子供を手放す親も多かった。

 三行広告を見た親たちによって助産院には200人を超える乳幼児が集まった。院長夫婦は希望者に子供たちを売っていた。売れなかった子供には食事もろくに与えず、幼児に配給されるミルクや砂糖を横流しし、病気になっても放ったらかしにした。
 
 当時の報道によると、栄養失調で餓死したり、凍死したりした子供は103人にも上ったという。たった三行の広告がきっかけで100人を超える子供たちの命が失われたのである。

※週刊ポスト2015年11月13日号

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