街・地域
025-JNL_300-300
SUUMOジャーナル 編集部
2015年10月30日 (金)

暮らしにつながるインターネット、普及への課題とは

暮らしにつながるインターネット、普及への課題とは
写真:iStock / thinkstock
あらゆるものがインターネットにつながる「IoT(Internet of Things)」。住まい・暮らしの分野でも、スマートロックやHEMSというかたちで私たちの生活で実際に使われはじめてきたが、普及が進むためにはまだまだ課題が多い。このたび東京大学生産技術研究所が、IoT実現に向けてどのような問題があるかを取りまとめた。その結果のなかから、特に一般の利用者に関わりが深いことを紹介しよう。

セキュリティとプライバシーの問題

今回の調査は、通信事業者やインターネットサービスプロバイダー、アプリベンダーといったIT事業者と、住宅や設備メーカー、家電メーカーといった製品をつくる事業者それぞれに、IoTを実現するためにどのような課題を感じているかをヒアリングし、まとめられたものだ。

まず、個人や家庭でのIoT利用に関わるところとして、セキュリティの問題が挙げられている。
「スマートロック」をはじめ、玄関ドアがネットワークにつながっている製品がすでに実用化されており、遠隔地から鍵の開閉が行えたり、入退室履歴が取れる機能がある。製品には最新のセキュリティ技術を導入しているが、安全性が高められていても、玄関ドアは20年~30年使われるということを考えると、IT技術の進歩とともにセキュリティが陳腐化して、危険性が高まることが指摘されている。玄関ドアはそのままでも、ネットワークにつなぐ製品や通信サービスは、20年~30年の間に、何度も世代交代してしまう。機器の入れ替えにはもちろんコストがかかるし、コストを敬遠して機器の入れ替えをしなければ、セキュリティの危険性が高まってしまうだろう。

また、記録されたデータは誰のものなのかという点も問題に挙げられている。
事業者のものか、利用者のものか、というだけでなく、利用者の家族のなかで意見が異なるケースもあり、許諾を取るのも複雑になっているようだ。具体的な事例として、HEMSの実験を行った事業者が、そのデータの扱いについて設置した家の世帯主にそのデータの利用許諾を得たケースがある。このケースでは、後日、その配偶者から許諾について異議が挙げられ、結果的にその家のデータは得られなくなってしまったことがあったという。

トラブル原因の切り分けは利用者自身が行わなければならない

製品に何らかの問題が起こったとき、その原因の切り分けをどのように行うかも問題とされている。それは、個人が自宅でPCを使っていて何かトラブルがあったとき、トラブルの解消は基本的に自分で行う必要があることと同じだ。

これが、IoTではより一層深刻度を増すという。
例えばスマートハウスで、エアコンや風呂、ドアなどがネットワークでつながり、何らかのトラブルでそれらが利用できなかったときの不便さは、PCでメールが送れないときの不便さよりもはるかに大きい。

そして、利用者自身でどの機器がトラブルの原因なのか切り分けなければならない。ネットワーク機器の問題か、それとも接続している家電製品の問題なのか、はたまた通信環境の問題なのか、それらの判断を自分で行わなければならないというのは、なかなか難しいだろう。
原因の切り分けをユーザーの責任で行う必要があると、うまく切り分けることができず、どのメーカーに修理を頼めばよいのか分からない、あるいはメーカーに修理を頼んでも自社の責任ではないと修理を断られてしまう、といった事態が想定されるという。

IoTによって、暮らしが便利になっていくことは間違いないが、普及が進むためには、セキュリティやプライバシーなどで、解決しなければならない課題も多い。暮らしのなかにIoTを取り入れようとする際は、サービス利便性だけでなく、故障したときのことや、セキュリティ対策にも目を向けてほしい。これからも、技術の進歩とともに、利用者が信頼し、安全に使えるようになるための取り組みに注目していきたい。

●参考
東京大学生産技術研究所 「IoT(Internet of Things)実現に向けた問題のヒアリング取り纏め」
前の記事 あんなトイレやこんなトイレ! トイレだらけのミュージアム
次の記事 ”笑いが響く路地に”熱海っ子の挑戦[リノベスクール生のその後]
SUUMOで住まいを探してみよう