<社説>’15回顧 沖縄の暮らし 支え合いの精神を強固に


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 ことしの県民の暮らしぶりを振り返ると、晴れと曇りが混在した年ではなかったか。

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」の恩恵は沖縄には薄かったが、入域観光客が絶好調だったことを背景に個人消費は堅調だった。一方で、庶民の暮らしの負担感は強まり、沖縄社会全体に多くの課題が残っている。
 数多くの予兆があったにもかかわらず、最も弱い命を守れなかった。3歳の長女に暴行を加えて死なせた疑いで21歳の男が7月に逮捕された。家庭内暴力(DV)による虐待とされている。
 児童相談所が職権による一時保護を決めていたが、対応が後手に回り、尊い命を守れなかった。有識者が原因などの検証作業を続けている。多くの機関が関わりながら、防げなかった。その根本的な原因をしっかり突き止め、再発防止に生かしてほしい。
 出生率全国一の沖縄にとって、仕事と子育てが両立できる環境づくりは急務の課題だ。ところが、県内の待機児童数は県都・那覇市が539人となり、4月時点で市区町村単位で全国3番目の多さだった。全国ワースト100に12市町村が入っている。
 県は待機児童解消に向けた保育士確保策として、沖縄で3年間勤務することを義務付けた地域限定保育士を導入した。仕事をする親にとって子の預け場所確保は欠かせない。保育ニーズに施設整備が追い付かない悪循環を断ち切る対応に踏み出した形である。
 県と市町村が2分の1ずつ拠出し、患者の医療費自己負担分を無料にする「こども医療費助成」をめぐり、県は10月から通院医療費助成の対象年齢を3歳以下から就学前まで引き上げた。それに伴い、未適用の10市町村でも患者負担が軽減されたことは評価できよう。
 心と体の性が一致しないなどの性的少数者(LGBT)が暮らしやすい社会づくりを目指し、那覇市は7月、「性の多様性を尊重する宣言」を出した。全国2番目だった。個性と能力を尊重し、LGBTの人々が安心して暮らせる社会づくりに向けた機運を高めたい。
 県内の介護休業取得率(推計)は全国平均の半分に満たない状況が続く。沖縄の美風といえる相互扶助の精神「ユイマール」を発揮し、仕事と介護を両立できる環境づくりを急がねばならない。