東芝が2008年4月から2014年12月までの間、経営トップの関与のもと、組織ぐるみで総額1518億円の利益を水増ししていた実態が21日の第三者委員会の報告書で明らかになった。同日行なわれた東芝の記者会見では、田中久雄社長と前社長の佐々木則夫副会長、西田厚聰(あつとし)相談役の歴代3社長が引責辞任。
不正に関与したとして辞任した取締役は田中、佐々木両氏を含めて8人。取締役16人の半数にのぼる。次期社長候補と目されていた副社長4人、財務や監査担当の役員らが経営の中核から去った。
粉飾決算が露見した背景には西田氏と佐々木氏の派閥抗争があり、家電閥の西田派からの内部告発が号砲となりインフラ閥の佐々木派もリークで応酬、全部門にわたる粉飾決算の発覚に繋がったというのが多くの東芝関係者の見立てだ。
泥沼の人事抗争によって社長候補が一気に消えた東芝の立て直しには、「しがらみのない外部の人材を引っ張ってくるしかない」という声が上がって当然だ。しかし、外部招聘には弊害もある。
「東芝の業務は専門的。例えば半導体は『好不況の波』が激しい。また、原子力などのインフラ部門は数年先を見据えた巨大プロジェクトなので地道にコツコツと計画を進める必要がある。西田氏も佐々木氏もそれぞれの分野のことをよく知っていたからある程度の実績を挙げられた。何も知らない外部の人間が舵取りできるかという疑問は社内で出ています」(中堅幹部)
さらに、日本企業の“悪癖”がある。東芝に詳しいジャーナリストが語る。
「これまで社外取締役を招聘した日本の他社のケースでは、人事を主導する人物の旧知の経営者や天下り役人ばかりが選ばれてきた。社長はもちろん社外取締役でさえも、取締役会に生き残った人たちの“お友達”で固める可能性が高い」
そうなれば体質改善など望み薄で、混迷の果てに結局は何も変わらないことは明らかだ。
※週刊ポスト2015年8月7日号