2015/03/18 15:21

新たなムーブメントの始まり! Helsinki Lambda Club、ファースト・ミニ・アルバムをリリース&メンバー全員インタヴュー

Helsinki Lambda Club

UK.PROJECTのオーディションで優勝し、昨年12月に限定生産の1stシングル『ヘルシンキラムダクラブのお通し』をリリースしたHelsinki Lambda Club。あれから3ヶ月、待望のミニ・アルバム『olutta』が到着した。フィンランド語で<ビール>の意味を表す『olutta』、お通しのあとのビールが最高なように、このミニ・アルバムからも最高の匂いがたちこめてくる。ビール片手に、メンバー全員の味わい深いインタヴューもどうぞ。

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Helsinki Lambda Club / olutta
【配信形態】
【左】WAV / ALAC / FLAC / AAC / mp3

【配信価格】
単曲(税込) 208円 まとめ購入(税込) 1,296円(税込)

【Track List】
01. All My Loving
02. ユアンと踊れ
03. Lost in the Supermarket
04. NIGHT MARKET
05. シンセミア
06. チョコレィト
07. テラー・トワイライト

INTERVIEW : Helsinki Lambda Club

昨年12月に1stシングルを発表してからというもの、“これから期待のアーティスト”として各所で名前を挙げられることが多くなった、Helsinki Lambda Club。彼らが今回リリースするミニ・アルバム『olutta』は、リスナーに改めてご挨拶と言わんばかりに突き抜けるようなメロディが光り、疾走感溢れるポップな作品となった。楽曲にクラッシュやペイブメントから引用したタイトルをつけたり、サウンド面においてもさまざまな音楽の影響を感じさせながら、それでいて完全に彼ら自身の新たなポップ・ソングとして昇華しているのがHelsinki Lambda Clubの大きな魅力だ。ここでは今作の楽曲がどのようにして出来上がったのかを紐解き、また“自分たちの殻を破る”という点をテーマに、いまバンドに足りないものについて語ってもらった。音楽シーンを駆け上がらんとする彼らの魅力の一端にまずは触れてみていただきたい。

インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 鶯巣大介
写真 : 有田昌弘

だんだん状況を把握してきたというか、自覚が出てきた

ーー正式にCDデビューしてから3ヶ月が経ちました。3ヶ月前と比べて気持ちに大きな変化は生まれました?

橋本薫(以下、橋本) : 僕個人として最近はただの素人っていう意識からちょっと変わってこれたのかなぁって気はしてますね。だんだん状況を把握してきたというか、自覚が出てきた。

稲葉航大(以下、稲葉) : うん。いままで「なんで俺ここにいんの」って思ってたけど(笑)。

佐久間公平(以下、佐久間) : 自分も前だと僕ごときが人様に向けて何かを発信していいのかなって思ってたんですけど、ちょっとずつインタヴューとかでも喋れるようになってきたかなと。

アベヨウスケ(以下、アベ) : 最初はやっぱりオーディションで優勝して音源を出すっていう状況にあんまり実感がわかなくて。でも実際に音源を出して、ちゃんと買って聴いてくれている人がいるっていうのがわかったんです。そうすると注目されていることに対しても、ちゃんと応えたいなって思えるようになりました。

ーーそういったなかで出来上がったこの『olutta』ですが、まずタイトルに込めた意味を教えてください。

橋本 : 当初は「自分たちでこれからムーブメントを作って行くぞ」っていう気合いを入れて、あのマッドチェスターから取って『ハシエンダ』ってタイトルを考えてたんです。けどなんとなく暗いというか、キャッチーさがないなと。そこで先に出したシングルが“お通し”だったから(1stシングルのタイトルは『ヘルシンキラムダクラブのお通し』)、「次ビールでどう?」っていう意見が出て。それでビールをフィンランド語で調べたらoluttaが出てきたので、響き的にもキャッチーだし、ちょっと含みがある感じも自分たちに合ってるかなと。

稲葉 : とりあえずビールで、みたいな感じかな?

左からDr.アベヨウスケ、Gt.佐久間公平、Vo.&Gt.橋本薫、Ba.稲葉航大

橋本 : お通しとしての1stシングルがあって。今回の『olutta』はミニ・アルバムなので、メイン料理のガツンという感覚ではなく、スッと入っていく感じはビールといっても差し支えがないだろう、って感じ(笑)。

アベ : 上手い例えだな。成長したよ(笑)。

ーーよくわかりました(笑)。でも本当に今回の7曲はクオリティが高いですよね。作品全体のコンセプトはあったんですか。

橋本 : そうですね、歌がメインにあるというか。あとは結果論かもしれないんですけど、出会いと別れっていう部分が軸にあるなぁと感じたり。でも基本的には、音楽的な細かい要素でどうこうっていうよりは、「グッとくる」っていう感覚を大事にした結果集まった曲ですね。

ーー橋本さんのいう「グッとくる」っていうのをもう少し詳しく説明してもらってもいいですか。

橋本 : ほんと言葉にできないんですけど... 例えば、リズムがこうなってて、ここの絡みがどうとか説明できる部分で味わい深い曲もあると思うんです。でもそういうのを抜きにして「あぁいいなぁ」と聴いて単純に思える要素を大事にしました。言葉で説明できない部分のよさっていうのが、このアルバムには多く詰め込まれています。

ーーうん。特に5曲目の「シンセミア」は、あれだけ引っ張って、サビで一気に開けたのは、僕的には「グッとくる」ポイントでした。

アベ : ありがとうございます。俺も「シンセミア」は1番気に入っているんです!

橋本 : このミニ・アルバムのなかでも1、2番くらいに新しい曲。この作品ができるまで、やっぱりキラー・チューンを作んなきゃっていう気負いがずっとあって。そういう部分に捕らわれて曲を作ってたんですけど、なんかそれが急にピンとこなくなって。

ーーなにかきっかけが?

橋本 : 曲を作ってる過程でandymoriの解散ライヴとか踊ってばかりの国のワンマンとかいろいろなライヴを観て、小細工抜きで突き進む姿が胸にきたんです。そこからギミックでなんとかしようとしてるのが嫌になって、そのとき自分で歌いたいことをとにかく歌おうって気持ちに切り替わって作ったのが「シンセミア」です。個人的には思い入れがあるので、そういった部分で「グッとくる」指数が高い気がします(笑)。

下手な人のほうが必死さが伝わることがあるんですよね

ーー確かに彼らはあんまり小細工してないですもんね。メンバーのみなさんにとって「グッとくる」指数が高い曲はどれでしょう。

佐久間 : このアルバムだと「NIGHT MARKET」です。最後の大サビの盛り上がり方とかは「グッとくる」指数が高めでしたね。

稲葉 : 何点くらい?

佐久間 : 「グッとくる」指数…。89「グッとくる」くらい(笑)。

ーー(笑)。 「NIGHT MARKET」はアルバムのなかではちょっと毛色の違うスロー・バラードで、こういうニュアンスもあるんだなって思いました。稲葉さんはどうですか?

稲葉 : 1曲1曲が好きなんですけど、このミニ・アルバムの流れが結構いいなと思ってて。曲順を決めるのは全員ですごく悩んだんですけど、勢いがあって、でも最後の「テラー・トワイライト」はあっさりしてるところとかすごくいいなって。

橋本 : 短くてさっぱりしてて聴きごこちもいいし、歌詞的にも最後希望を持たせる感じがあるんで、テラーで終わるのはなんとなく自分たちのなかで決まってたんです。あと聴く人を「あ、終わった。ちょっと物足りない」ってぐらいの気持ちにさせたいっていう目的もあったし。

ーー1曲目「All My Loving」、2曲目「ユアンと踊れ」は昔からあった曲ですよね?

橋本 : そうですね。どっちも前の自主制作盤には入ってるんですけど、「All My Loving」は2年前くらいにバンドに落としこんだ曲です。4年前くらいから曲のオケはあって。当時女性ヴォーカルのガレージ・バンドみたいなのやりたいなと思って、そういうイメージで作りました。結局使わなかったんだけど、メロディがいいからやろうと思って。「ユアンと踊れ」は… あれも2年前?

アベ : うん。大体同じくらい。

橋本 : 2曲ともまだこのメンバーになる前、バンドもそんなに上手くいってないときからあった曲ですね。

ーー3曲目の「Lost in the Supermarket」ってクラッシュにも同名の曲がありますよね。みなさんにとってクラッシュは思い出深いバンドなの?

橋本 : クラッシュは僕くらいですかね、めっちゃ好きなのは。クラッシュのなかでも「Lost in the Supermarket」が1番好きなんです。この曲をめちゃくちゃ分析してパクるとかじゃないですけど、その「Lost in the Supermarket」の雰囲気を抽出できたらなぁって考えでスタートした曲です。

Helsinki Lambda Club - Lost in the Supermarket
Helsinki Lambda Club - Lost in the Supermarket

ーーなるほど。「テラー・トワイライト」もペイブメントのアルバム名ですけど、これも橋本さんが好きなバンド?

橋本 : そうですね。ヘタウマというか、あのヨレヨレ感が好きなんです。演奏が上手くて曲がよくても、あんまり伝わってこないことってあるじゃないですか。なんか下手な人のほうが必死さが伝わることがあるんですよね。ペイブメントはそういう部分だったり、ひねくれてニヒルを気取ってるけど、音楽好きなんだな、人が好きなんだなって感じがにじみ出てたり。そういう人間臭いところが好きです。

ーー橋本さんはそうやって普段からなにかのバンドに敬意を表しつつ曲を作ることが多い?

橋本 : いや、普段はそんなに。ちょこちょこ歌詞とかをオマージュしたり、パロディっぽく散りばめたり、ってのは好きなんですけど、そこからスタートして曲を作るってことはいままでしてこなかったんです。だからこれは結構珍しいパターン。あと「Lost in the Supermarket」は自分じゃない別の人を主人公にして歌詞を書いてる曲でもあって、このアルバムのなかでも異色なんですよ。

ーーほかのみなさんはペイブメントとかクラッシュはどう思ってるの?

稲葉 : ペイブメントはそんなに…(笑)。クラッシュはまぁ聴いてたけど… みたいな(笑)。ロンドン・コーリングだけ聴いてたって感じですね。

ーーなるほど。前回のインタヴューでも4人の好きな音楽はバラバラってことでしたけど、やっぱりバンドのために好きな音楽をみんなで無理して共有してるってわけではないんですね。確かにヘルシンキの音楽聴いてても、橋本さんが「ペイブメント好きだからペイブメントみたいなのやろうよ」っていってる感じはしないし。

橋本 : そうですね。全然そこらへんは強制してるわけではないです。

やっぱ歌も上手くなんなきゃいけないですし、もっと説得力も欲しい

ーー好きな音楽に影響を受けつつも、バンドとしては染まりきってないところがかっこいいなって思ってて。だからメンバーは橋本さんがやりたい音楽、好きな音楽をどういう風に受け止めてフレーズを考えたりしてるのかなと気になったんですよ。

アベ : 聴いてる音楽によって薫が影響を受けてるなって、デモを聴いても感じるんです。けど一度薫が自分のなかに入れて出したものなんで、やっぱりどれを聴いても結局は薫の曲になってるんですよね。例えば「Lost in the Supermarket」でも、自分もそんなにクラッシュをがっつり聴いてたわけじゃないんで、バンドで演奏する前に1回原曲を聴いてみたりします。でも自分がこうしたらよくなると思うことをやればいいと思ってるので、原曲がこういう雰囲気だからとかは考えないようにしてて。そのままみんなで元の雰囲気に寄せてもマネッコでつまんないですしね。

ーー曲を受け取ってからそれに合うもの、本当に自分がいいと思うフレーズを練ると。

アベ : そうですね。これってこういうネタなんだろうなって聴いててわかる部分はいっぱいあるんですけど、あんまり気にしすぎないようにしてるというか。今回のアルバムに関していえば意識したのはやっぱり薫の歌を聴かせるっていうところですね。

ーーそれが今回できた部分だと。じゃあ逆にいまヘルシンキラムダクラブにとって足りないところって、みなさんどこだと思いますか。

アベ : 難しいな…。なんだろうね。

橋本 : まぁいろいろあると思うよ。

アベ : そうだなぁ。次こうしたいという意味でいえば、今回は歌がストレートに聴こえてくるものにはなったと思うので、そこに加えて演奏面でもそれぞれのクオリティを上げることだったり、単純にこのフレーズの絡みがいいとか、今回ともっと違う面でおもしろさを出すことにチャレンジしていきたいですね。

ーー なるほど。全体を底上げしたいってことですね。佐久間さんと稲葉さんはどう思います?

佐久間 : 個人的に好きなギタリストとかはめちゃくちゃ演奏に説得力があったりして、そういうのはどこから出るんだろうって考えたら、結局人間性から生まれるものだって気づいたんです。人間性だったりこれまでなにをしてきたかっていう部分。僕そういうのペラッペラなんで(笑)、そういう人間としての豊かなバックボーンを身につけていきたいなと。だから僕のギターに説得力をのせるために、とりあえず家の外に出て行きたいなと思います。

一同 : (笑)。

稲葉 : 佐久間もいったように、演奏技術とかももちろんなんですけど、それだけじゃ伝わらないような部分、ライヴでの魅せ方、かっこよさがもっと欲しいと思う。

ーーつい最近イースタンユースの吉野寿さんにインタヴューしたときに、こんなにぶれない心を持っていれば、そりゃあ凄い曲が書けるでしょって心から感じたんですよ。だから二人がいま言ったことってミュージシャンにとって本当に真理だと思います。橋本さんはバンドがこれから大きく躍進するためになにが大切だと思っていますか?

橋本 : 大体みんながいってくれたようなことではあるんですけど、やっぱ歌も上手くなんなきゃいけないですし、もっと説得力も欲しい。いま歌詞とかも結構おもしろいっていってくれる人が多いんですけど、まだ常識からはみ出せてないなという気持ちが自分のなかにはあります。突き抜けた感じが全然ないというか、もっと狂いたいというか。

ーー4人に共通してるなと思ったんですけど、多分みんな真面目コンプレックスがあるんですね。

橋本 : あはは(笑)。なんか変に真面目な部分があったりします。やっぱり努力でどうこうなるもんでもないし、変われないっちゃ変われないかもしれないんですけど、もうちょっと生きていくなかでいい具合にはみ出していけたら、もっと間口も広がるかなって気もしてます。でも僕自身がそんなに振り切れてる人じゃないんで変にそういうのをお手本にしようとしてもダメかなとも思ったり。考えて進むのか、剥き出しのままで行くのか。全然別のベクトルですけど、そこを考えずなんとなく進んで行きたくはないですね。自分達にあったやり方を見極めていけたらライヴももっとよくなると思う。

ーー音楽をよくするために自分たちの殻を破っていくんだって課題をバンドで共有してるんですね。これを訊けてこれからがすごい楽しみだなって思います。次の方向とか見えてますか?

橋本 : いままで身近なことを歌いたいって思ってたんですけど、今回でそれをやりきった感があるので、次はもうちょっと音楽的な部分からアプローチを考えてみたり、別の視点から歌詞を考えてみたりしたいなっていうモードに切り替わってます。例えばくるりみたいに歌詞っていうよりも詩として成立するくらいのものが書きたいなと。

ーーもう新しいところを目指してるんですね。次の作品も楽しみにしてます!

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LIVE INFORMATION

2015年3月22日(日)@Zepp福岡“FX2015"
2015年3月28日(土)@高崎clubFLEEZ
2015年4月6日(月)@心斎橋Pangea
2015年4月7日(火)@京都MOJO

THE こっけんろーるBAND×Helsinki Lambda Club共同企画
2015年4月18日(土)@下北沢BASEMENT BAR& THREE

VIVA LA ROCK2015
2015年5月4日(月・祝)埼玉スーパーアリーナ

『olutta』レコ発ライヴ“oluttanative”
2015年5月28日(木)@新代田FEVER

PROFILE

Helsinki Lambda Club

2013年夏、西千葉のガザル(カレー屋)でバンド結成。PAVEMENTとCLASHが恋人同士になってしまったような、ポップなのにどこかひねくれたメロディと、ひねくれているようで割と純粋な心情を綴った歌詞を特徴とする。2014年上旬から数々のオーディションに入賞し、UK.PROJECT主催のオーディションにて、応募総数約1000組の中から見事最優秀アーティストに選出され、新木場スタジオコーストで開催された「UKFC on the road 2014」への出演を果たす。同年12月10日にUK.PROJECTから2曲入り8cmシングルのリリースも叶い、ますます注目されたい願望は高まるばかりだが、世間の飽きやすさも承知しているので、飽きられないよう色々と画策中。

>>Helsinki Lambda Club HP

[インタヴュー] Helsinki Lambda Club

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