執行停止国提訴 知事冒頭発言・一問一答要旨


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 国地方係争処理委決定を相手取り訴訟を起こすことを発表した翁長雄志知事と弁護士の記者会見の冒頭発言と一問一答の要旨は以下の通り。

冒頭発言
 県が国地方係争処理委員会に審査申し出を行った件について、同委員会は12月28日付で当該申し出を却下する決定をした。これを受けて対応を検討してきたが、国土交通大臣を被告とする訴えを福岡高裁那覇支部に提起することとした。今後、訴状や証拠書類が整い次第、裁判所に提出する。
 同委員会は、国土交通大臣の執行停止決定の違法性について実質的な判断をせずに却下決定に及んでおり、この点について不服があるため、訴えるべきだと判断した。沖縄防衛局長が国交大臣に対して行政不服審査法に基づき審査請求および執行停止申し立てを行うことそのものが違法であり、またそれに基づき国交大臣が行った執行停止決定も違法である。裁判所にその旨、主張・立証していく。
 私は、今後ともあらゆる手法を用いて、辺野古に新基地は造らせないとの公約実現に向け、不退転の決意で取り組んでいく。県民の皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げる。
 ―新たな提訴の理由は何か。
 竹下勇夫弁護士 抗告訴訟は起こしているが、これ(抗告訴訟)自体は執行停止を差し止めるという意味合いが強い。早期に判断してもらいたい。国地方係争処理委員会の決定に対する提訴というのは本来、地方自治法が予定している訴えで、かつ係争処理委員会が「一見、不合理」という新しい考えを持ってきて判断を示している。きちんと裁判所で判断してもらうべきだと弁護団として考えている。もちろん最終的な判断は知事だ。
 知事 あらためて裁判所にしっかりと判断してもらう。県の主張は大変正しいと思っている。しっかりと主張していきたい。
 ―会見のタイミングの理由は何か。
 知事 係争処理委の結果について、これまで高等裁判所に訴えた例はない。弁護士、行政法研究者の意見を踏まえ、どのように対応するか慎重に検討を重ねてきた。2月3日が期限だが訴状を準備するのに時間がかかる。この時期に発表したら期限内に物事が収まる。きょうこのような形で会見をさせてもらった。
 ―提訴の時期はいつか。
 竹下弁護士 2月3日が地方自治法上提訴できる期限の最終日なので、提訴するのであれば、それまでにしないといけない。一方でこの裁判自体も代執行訴訟と同じような短期の裁判だ。第1回口頭弁論期日が15日以内という制約もある中で、少なくとも代執行訴訟の期日も念頭に置きながらでないと、裁判所との期日の調整も難しくなる。1月の終わりか2月の初めになる。
 ―係争処理委の判断は審査の結果に当たると考えているのか。
 竹下弁護士 係争委の小早川光郎委員長が会見で「審査の結果と準じて」という言葉を使っていた。そもそも係争処理委が却下できるという明確な規定は地方自治法上はない。係争処理委の規則などで決めていると思う。それで「審査を経ていない」と言えるかどうか。少なくとも国地方係争処理委が「前置の要件」で、そこを経ていれば(提訴)できるという考え方も当然ある。小早川委員長の会見を見ても、裁判所に訴えを起こせる前提で話しているように受け止めている。(提訴を)やれると考えている。抗告訴訟も今回の訴えもいずれも「執行停止を取り消せ」ということになろうかと思う。その意味では一緒なのかもしれないが。今回は「固有の資格」なのかどうなのかというところが一番大きな争点だ。(抗告と)全く同じではない。
 ―発表時期は宜野湾市長選を判断材料にしたか。
 知事 市長選とは全く関係はない。記者会見がプラスになるのかマイナスになるのか全く読める話ではない。私もよく皆さんから「やりますか」というような質問をされるので。こういう風に心の中で百パーセント決まったことは早めに発表した方がいいと思い、きょうの報告となっている。
 ―裁判への思いは。
 知事 官房長官も法治国家という話をされているが、今はすれすれの法治国家ではないか。地方自治や民主主義が問われている。これについては逐一、こういう形で県側の主張をし、政府との間で何が問題になっているかを理解してもらうためにも、私たちが理解されていない場合は、しっかりと主張していかないといけないと思う。
 それが裁判の中で行われるのか、政治的な意味合いでやりとりがあるのかはそれぞれ違うと思うが、この件は国と地方自治の在り方をしっかり捉えてやらないと、将来に禍根を残すし、けじめをつける必要がある。その中でしっかりした判断をしてもらうというのが私の判断だ。
 ―今回の提訴の発表は市長選に影響があるか。
 知事 全く読めない。あくまでも訴訟は訴訟で、県の主張をより理解をしてもらう意味でやっている。
 ―訴えに抗告訴訟とは違いがあるのか。
 竹下弁護士 抗告訴訟は広がりがある。今回起こそうとしている裁判の主たる争点は、固有の資格なのか、そうでないのかというところが、まさしく争点だ。本来、係争処理委員会に申し立てた結論について、不服がある時にはこれを出すことができるという明文規定、自治法上の提訴権があるわけだから行う。抗告訴訟は係争処理委の判断がいつ出るのか分からなかったし、既にある執行停止について、何かしておかないといけないということがあった。その中の争点の一つとして、固有の資格なのかどうなのかということは当然入っているが、それ以外にも争点がある。本案の方は時間がかかるが、その前の執行停止の差し止めのところで早く結論を出してもらいたいということがあった。
 ―代執行の第18準備書面で、違法確認で県の主張が通らなかった場合、判決に従うという回答をした。
 竹下弁護士 裁判所がどういう趣旨でこういうことを知事に求めたのか真意を測りかねているところはあるが、代執行の要件の中でやるべきことは全てやらないといけないのではということを私たちは主張している。これは代執行訴訟の中で一番大事な肝になる部分だと思っている。裁判所がそれに理解を示してくれたと考えれば、当然、あの違法確認もできたでしょというようなことがあるわけだ。それについて、県は従いますかと聞かれれば、確定した判決に従わないという回答は法治国家として、三権分立の世界として、行政の主体としてあり得ないのではないか。
 ―県はあらゆる手法で阻止との姿勢だが、知事としてどう整合を取るか。
 知事 いま私が提訴をしているのは固有の資格についてとか、行政不服審査法で執行停止をさせてから、代執行をやるというのは、工事を止めておいて、別のところで工事をするのはどういうことなのかというようなこともある。法律の範囲内での客観的な公正な判断をお願いしたいということと、私が「ありとあらゆる手法」と言うのは、官房長官らが「16年前に知事が認めたじゃないか」「当時の市長が認めたじゃないか」と言うのは違いますよと。あの時はこうだったんですよというような話も、これは政治的な意味合いで、やり取りをしている部分がある。だから、そういった裁判と、民意を問うという意味では、宜野湾市長選も一つの考え方としては出てくる。それから、県民全体の総体としてもいろんな運動がある。県政を預かる者とすれば、この辺野古を埋め立てて基地を造るということは歴史的にも、いろんなことを含めて理不尽なものがあるので、あらゆる可能性を追求するという意味であらゆる手段でもって阻止をしたいということだ。
 ―国と三つの裁判で争う異例の構図だ。
 知事 「県民に寄り添って、県民の理解を得て物事を進めていく」と政府はずっと言っている。ただ、この件に関して、そういうものが見えてこない。私からすると強権的な手法、それが裁判にもなっている。歴史的な原点みたいなものをあらためて申し上げると、私たちが自ら提供した基地の土地はない。全部、強制収用で取られ、それが老朽化したから、また沖縄が負担しろ、それができないなら代替案を出せと言われること自体が地方自治、民主主義という意味で理解し難い。それを「法治国家だから」、前は「粛々と」という言葉を使いながらやっていた。
 そういったことを見るにつけ、県民を代表する知事、沖縄の政治家として、しっかりけじめをつけてやらないと、今日までの歴史的な経緯がこれからも長く長く沖縄に負担としてつながることになる。沖縄県で政治をやっている者はお互いの子や孫が平等に日米安保体制を支えていくことがなければ、大変厳しいものになる。今日までやっている行為はそういうことだ。