松下電器(現パナソニック)の創業者で経営の神様と呼ばれた松下幸之助は、天才的なコピーライターでもあった。
1927年に発売された電池式ランプ「ナショナルランプ」は1年後には月産3万個を突破し、個人経営の町工場だった松下電器の大ヒット商品となる。その裏には、型破りな販売戦略があった。同年4月9日に大阪毎日新聞に掲載した三行広告だ。
当時、中小企業が新聞に広告を出すのは異例のこと。資金的にも相当な負担であった。それでも幸之助が決断に踏み切ったのは、これがナショナルの名を冠した初の商品だったからだ。新聞広告を使ってブランドの名を世に広める作戦だった。
社の命運が懸かった広告の文言を、幸之助は三日三晩考えた。何度も書き直した末に完成したのが「買って安心、使って徳用、ナショナルランプ」というコピーだった。ナショナルの名を世に広めたこの広告は、社内でいまも「伝説の三行広告」として語り継がれている。
※週刊ポスト2015年11月13日号