リクルート住まいカンパニーが、シニア層を中心とした「自宅の住み替え実態」について調査したところ、住み替えを経てよりアクティブに生活を楽しむシニア像が見えてきたという。調査結果を詳しく見ていこう。
調査対象は、自身が50歳以降に住み替えを行い、現在首都圏に在住する50代~70代の男女1029人。
50歳以降の住み替えであれば、住み慣れた場所から離れたくはないだろう。実際に、調査結果では「同一駅圏内」「同一市区町村内」「場所は変わらず」といった住み替えが52.1%と半数を占めた。一方で、「他の市区町村」や「他の都道府県」も47.9%と半数近くを占め、遠距離の住み替えも多いことが分かった。
住み替え先は、賃貸住宅やマンション、一戸建ての購入、二世帯住宅の新築などさまざまだが、住み替えの理由は、家や設備の「老朽化の解消」によるものや、駅から近い、買い物など利便性がよいなど「アクセスの向上」によるものが上位を占めた。
「住み替えた後に実現できたこと、新たに始めたことは何か?」を聞いたところ、図1のように「生活利便性が高い暮らし」「安心・安全な暮らし」「健康に暮らせる環境」を手に入れた割合が高かった。また、「駅から近いので、出かけやすくなった」「新しい趣味を楽しめる」「新しい友だちができた」など、住み替えをきっかけにアクティブに暮らしている姿が想像される結果となった。
住み替えるまで住んでいた家の種類(持ち家、実家、賃貸など)と、その家を住み替えた後どうしたか?を聞いたところ、最も多かったのは、「今までの家は持ち家で、住み替え時に売却した」が31.4%だった。これを持ち家だった人(全体の45.9%)に絞って割合をみると、約7割が売却したことになる。
「住み替える上で不安だったこと、躊躇したこと」については、トップ3が「もともと住んでいた家の家財道具の処理」「新居費用の捻出など経済的負担について」「住み慣れた地域を離れること」だったが、同様に持ち家だった人に絞ってみると、「持ち家の売却や、新たな家の購入などの手続きの面倒さ」がトップとなり、「家財道具の処理」がそれに続いた。
今回の調査結果は、50代、60代、70代と住み替えた時の年代別でも分析をしている。
もちろん細かい点では、年代別による違いが見られるのだが、筆者が注目したのは大きな傾向に違いがない点だ。
70代の住み替え先は、賃貸住宅やマンション、一戸建ての購入、二世帯住宅への新築やリフォームが多く、高齢者向けの住宅や老人ホーム、子どもや親族の家などへの住み替えは意外に少ない。
住み替えで、安心安全や利便性の高さ、健康に暮らせる環境を求めるのは70代も同じだが、むしろ「新たな友だちができた」「夫婦仲が深まった」「ボランティア活動に参加するようになった」「若い世代と交流できる機会が生まれた」といった項目では70代が最も高くなっている。
70代でこの前向きさには、驚くばかりだ。
インターネットができること、首都圏に住んでいることなどの調査条件があったという側面もあるだろう。しかし、住み替えの不安点・躊躇材料となる、家財道具の処分や費用の捻出、場合によっては住み慣れた土地を離れるというハードルを乗り越えないと、住み替えはできないので、シニア層になって住み替える人は、前向きでアクティブな人が多いということなのだろう。