2016/01/15

いよいよ始まる『電力自由化』 会社選びのポイントとは

最近、ニュースやワイドショーでよく見かけるようになった「電力自由化」の話題。「なんとなく聞いたことはあるけど、なにがどう自由になるのかまではよくわからない」という人も多いのではないだろうか。

簡単に説明すると、これまで電気は東京電力や関西電力など、居住する地域の電力会社からしか買うことができなかったが、2016年4月からは、さまざまな会社から電気を買うことができるようになる。これが、「電力自由化」だ。

自由化によって生まれる市場規模は年間8兆円ともいわれている。この巨大市場を狙って、なんと100社以上が参入を表明。その業種は通信事業者やガス会社、鉄鋼メーカー、石油小売り、ハウスメーカーなど多種多様である。

当然、各社とも現在の電気料金よりもオトクなプランや付帯サービスを準備している。しかし、選択肢が増えれば増えるほど、なにを基準に選べばいいかわからなくなるものだ。

大別すると、「使えば使うほど安くなる」or「一定の割合で安くなる」

まず確認してほしいのは、現在の自宅の電気料金だ。

現在、多くの人が居住地域の電力会社と契約しているのは「3段階料金制(従量電灯)」。これは、時間帯や曜日に関係なく、使用量に応じて料金が決まるというもの。その際、電気料金の単価は使用量に応じて3段階に分けられている。

電気使用量が低い第1段階の場合は、国が保障すべき最低生活水準の考え方を導入した比較的低い料金設定に。それより電気使用量の多い第2段階は標準的な家庭の1カ月の使用量をふまえた平均的な料金。さらに電気使用量が増える第3段階はやや割高な料金設定となっている。

一般的に、従来の電気使用料金は、この3段階の合算額(+基本料金)が主流であった※。
※実際の支払い額には最低料金・再生可能エネルギー発電促進賦課金・燃料費調整額・消費税等相当額などが加算されます。

これに対し「電力の自由化」は、各家庭の電気使用状況に合ったプランを自由に選択できるようになった、という点に大きなメリットがある。

現時点で各社が掲げるプランを大別すると下記のように2つのパターンに分けられる。

どちらがオトクになるのかについては、各家庭での電気使用量によるが、どういった家庭に向いているかは、概ね以下のようになる。

■パターンA
 「電気を使えば使うほど得するプラン」はファミリー世帯に!

電気の使用量が増えるごとに割引率が上がるため、主に電気をたくさん使うファミリー世帯がオトクになる。ただし、基本料金の設定などにより、電気をあまり使わない家庭では電気代が変わらない、場合によっては損をする場合もある。必然的に家族が多い家庭での割引率が上がるので、主にファミリー世帯が得をするプランといえるだろう。

たとえば、大阪ガスの料金プランを見てみよう。まず、基本料金が499.95円。加えて、最初の120kWhまでが22.78円で、それ以降は使用した電気量に応じて25.46円、26.08円、32.60円と単価が上がっていく。ホームページには使用量を入力することで、どの程度オトクになるのかを判断してくれるシミュレーターがあるので実際に利用してみた。(条件はベースプランA ガスセット割引)

・電気使用量の月平均が200kWh=オトクにならない。

・電気使用量の月平均が250kWh=2,376円(約3%)オトクに。
 ※ガスセット長期2年割引のオプションあり。

・電気使用量の月平均が300kWh=4,752円(約5%)オトクに。
 ※ガスセット長期2年割引のオプションあり。

このように、使えば使うほどオトクになることがわかる。

■パターンB
 「電気をたくさん使ってもあまり使わなくても一定の割合で得するプラン」は、単身や2人家族世帯に!

こちらは電気の使用量に関係なく、割引率が一定というもの。Aとは違って、電気使用量が少ない家庭でも必ずオトクになるので、主に単身世帯にオススメだ。

Bには、自社ブランド「myでんき」を通じて電力小売りを行う東燃ゼネラルなどが挙げられる。こちらもホームページに使用量を入力することで、どの程度オトクになるかを判断してくれるシミュレーターがあるので、実際に利用してみた。(条件は東京電力と50Aで契約)

・「年間2,430kWh(月平均約200kWh)の電気を使用」=約3,500円(約5%)オトクに。

・「年間3,603kWh(月平均約300kWh)」=約5,100円(約5%)オトクに。

このように、たくさん使っても使う量が少なくても割引率が大きく変わらないことがわかる。

自分がどちらに当てはまるかは、概ね、電気料金が1万円を超えるかどうかを目安にするといいだろう。

深夜電力を使っていると、乗り換えで電気料金が上がることも......

注意したいのは、オール電化住宅で深夜電力を利用していたり、太陽光発電などの自然エネルギーや蓄電池を導入したりしているケース。この場合、格安な深夜電力を使っていることが多く、従量電灯の考え方で乗り換えると、逆に損をしてしまう可能性もある。

また、たくさん電気を使う夏を中心に考え、A「電気を使えば使うほど得するプラン」に乗り換えたが、あまり使わない冬も考慮すると、年間ではB「電気をたくさん使ってもあまり使わなくても一定の割合で得するプラン」の方がより得だった、というケースがあることも覚えておきたい。

まずは、各地域の電力会社から送られてくる「ご使用量のお知らせ」をしっかりと確認して、契約種別や使用量、段階別の電気料金などを把握し、その数値をもとに、乗り換えようと考えている電力会社のホームページなどにあるシミュレーターで比較検討をするといいだろう。

自分のライフスタイルからピッタリの電力会社が見えてくる

電気料金以外での選択方法として、“付帯サービス”がある。前述した通り、多種多様な業種が参入を表明しており、KDDI(au)をはじめとする通信事業者や、ガス会社なら東京ガスや大阪ガス、ガソリンスタンドならJX日鉱日石エネルギー(エネオス)や東燃ゼネラル、ケーブルテレビならジュピターテレコムや東急パワーサプライ、ハウスメーカーならミサワホーム、コンビニならローソン、インターネット通販なら楽天など、一度はお世話になったり聞いたことがあったりする企業が目白押しだ。

これらの企業は、自社のサービスとセットで電気を売ることで割引をしたり、ポイントを付けたりしている。どの電力会社がオトクかは、ライフスタイルによって大きく変わる。サービス内容は各社さまざま。たとえば、ローソンはPontaカードのポイント獲得や商品引き替えクーポンなどを検討しているという。また、エネオスはTポイントが貯まる。ユニークなところでは、ミサワホームがオーナー向けに提供する「ミサワでんき」。電気代の3%を独自の電子ポイントで還元し、自宅のメンテナンスやリフォーム費用のほか、独自の通信販売サイトでの商品購入費用などに充てることができるという。

家族全員がauの携帯電話を使っているとか、コンビニはローソンしか使わずにPontaポイントを貯めているとか、クルマをよく使ってガソリンを入れるスタンドはエネオスに決めているなど、自らの生活を棚卸しして、セットにすることで最もオトクになるのはどの会社かを見極めることが必要となる。

自然エネルギーなど発電方法で電力会社を選ぶ方法も

電力会社選びでもうひとつ気に留めておきたいのが発電方法。自然エネルギーで発電した電気を販売するという会社もあるので、エコや環境問題に興味があるならば、検討してもいいだろう。

また、エネルギーの地産地消を目指して、地方創生の一助とするとして電力会社を立ち上げる自治体もある。地元を応援したいという気持ちがある人にはぴったりかもしれない。

ちなみに、乗り換えることで電力の安定供給ができなくなったり、停電が増えたりするのではないかという心配があるかもしれないが、そこは問題ない。停電のときには地域の送配電事業者、関東ならば東京電力、関西ならば関西電力が対応。また、電気設備のメンテナンスも地域の送配電事業者が行う。

電力会社から毎月送られてくる「電気使用量のお知らせ」に、「お客様番号」と「供給地点特定番号」が明記されている。写真は東京電力

乗り換え自体も簡単で、乗り換えたい新電力の事業者に申し込みするだけ。すべての電力関係事業者が加盟する「広域的運営推進機関」が運用する「スイッチング支援システム」により、送配電を行う事業者との契約や契約解除などがワンストップで行われる。また、電力会社を変更するには 電気使用量を知らせる検針票などに明記された「電力会社のお客さま番号」と「供給地点特定番号」が必要なので、検針票はとっておこう。

4月のサービス開始に向けて今後、各社からサービス内容の発表や追加が予想される。それらを待ちつつ、検討するのもいいだろう。

まとめ:電力自由化でやるべきこと

① 今の自宅の電気料金を確認する
② 世帯などでパターンを見極める
③ 電気代をシミュレーション
④ ライフスタイルなどから付帯サービスを検討
⑤ 電力会社から投函される「検針票」を保管
⑥ 各社の発表を待つ

文:コージー林田
絵:鈴木麻子
サムネイル画像提供:“twobee/Shutterstock”