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連載元編集長の鎌倉古民家リノベ移住
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長井純子
2016年2月12日 (金)

古民家リノベ[1] 鎌倉の築90年平屋と運命の出会い

古民家リノベ[1]鎌倉の築90年平屋と運命の出会い
写真撮影:長井純子
リクルートで住宅一筋、10誌以上の住宅誌編集長も経験して、フリーランスとしても住宅関連メイン。取材を通じてさまざまな物件を見る機会にも恵まれ、目も肥えたし、読者にアドバイスできる知恵もつけた。プライベートでは都内にマンションも購入、更にリノベーションもして快適に暮らしていた。それが突然、「鎌倉の古民家」に方向転換することに……。
●連載「元編集長の鎌倉古民家リノベ移住」
10誌以上の住宅情報誌の編集長を経験してきた筆者が、都内マンション暮らしから鎌倉の築90年古民家への移住を決意。物件との出会い、リノベーションのパートナー探し、プランの検討、コストダウン方法など実体験に基づくノウハウや失敗談を含めた本音を7回連載でお伝えします。

夢は先延ばししない。いつかでなく、いま、海辺に住む!

住宅一筋でキャリアを重ねてきたが、特に最初から住宅業界志望だったわけではない。新卒でリクルートに入社し、たまたま最初の配属先が住宅部門だった。ひとくちに住宅というが、「注文住宅」「リフォーム」「都心マンション」「リゾート」「賃貸」……など分野別でそれぞれに価値観も異なり、発見も多く、日々進化する奥深い世界。探求は尽きず、フリーランスとなった今でも住宅というテーマに関わっており、この出会いは本当にラッキーだった。

【画像1】左:担当した数々の住宅誌のおかげで「住まい」をさまざまな角度から見る機会に恵まれた。編集長初仕事がリゾートの「海辺に住む」だった 右:1999年発行の「長く暮らすための住まいづくり」は使い捨てにしない住宅の価値提案がテーマ。初の古民家取材もあり、現在の選択につながる(写真撮影/長井純子)

【画像1】左:担当した数々の住宅誌のおかげで「住まい」をさまざまな角度から見る機会に恵まれた。編集長初仕事がリゾートの「海辺に住む」だった 右:1999年発行の「長く暮らすための住まいづくり」は使い捨てにしない住宅の価値提案がテーマ。初の古民家取材もあり、現在の選択につながる(写真撮影/長井純子)

仕事を通じてさまざまな家を見てきたものの、社会人になって実際に住んだのは実家と都内に購入したマンションの2カ所だけ。長年住み続けたマンションもさすがに設備の故障が相次ぎ、2年前にライフスタイルに合わせてリノベーション。間取りも全面変更してまさに自分仕様にしていたので、居心地も良く満足していた。海好きなので「いつか海辺に住む」、仕事柄住宅好きなので「いつかこだわりの一戸建て」とは思っていた。でも、仕事が忙しいから都内を離れられないし、女の一人暮らしにはマンションが安心。いつか、いつか、と思いつつ、ずっと先延ばしにしてきた。

【画像2】左:社会人6年目まで住んだ実家は築50年一戸建て。思い出を残しつつ、母が快適に住めるよう6年前にリノベーションした。右:壁は漆喰塗り、床は無塗装と自然素材にこだわってリノベーションした自宅マンション。リノベの楽しさと効果はこの時実感した(写真撮影/長井純子)

【画像2】左:社会人6年目まで住んだ実家は築50年一戸建て。思い出を残しつつ、母が快適に住めるよう6年前にリノベーションした。右:壁は漆喰塗り、床は無塗装と自然素材にこだわってリノベーションした自宅マンション。リノベの楽しさと効果はこの時実感した(写真撮影/長井純子)

そこに2015年の春、人生初の入院と手術。さすがの健康自慢も年齢を自覚し、幸い命に関わる病気でなかったが、人生に残された時間を考えた。やりたいことは沢山ある、結婚のように一人じゃどうにもならないものもあるけれど、出来るものから今やらなくちゃ……。

そこで急浮上したのが「海辺に住む」という夢。一人で一戸建てに住んだっていいじゃない。仕事もフリーランスだから毎日の通勤があるわけではない。いまがそのタイミングなのでは? 退院後、約1カ月自宅療養で外出もままならなかったこともあり、家にこもってインターネットで物件情報を探し続けた。

物件探しの大前提は「こだわり」の優先順位を明確にすること

インターネットの物件情報だけで、ピンと来た。憧れの街、鎌倉。駅に近い、小さな平屋。こじんまりした平屋なら、一戸建てでも私の手におえるのでは。「築年不詳」で古そうだけど、風情がありそう。妄想がかきたてられ、見る前からその気だった。そして実際に見て、もっと気に入った。

編集長時代、よく「お買い得物件や掘り出し物はありませんか?」と聞かれた。値段にはそれなりの理由があるので、万人に好条件の物件は当然それなりのお値段。掘り出し物はそうそうない。けれど、価値観は人それぞれ、個々人にとっての掘り出し物であれば、ちゃんと探せば見つかる可能性も高い。

限りある予算の中、場所も間取りも環境もすべて条件が整った物件では手が出ない。まずは自分が重視する条件を明確にすることが重要。私の場合、実現したいのは「好きな街での自分らしい暮らし」。そのためにこだわるのは、「鎌倉」「駅に近く安全な立地」「リノベーションし甲斐がある素材」。実現したい理想像を描き、こだわりポイントは(知識はあるゆえ気になることは沢山あっても)あえて3つに絞り、その代わり我慢できることはスッパリ諦めた。

「諦めポイント」の考え方次第で出会いの幅が広がる

諦めたポイントも3つ紹介しよう。まず、敷地の「接道条件」。一戸建ては、これが敷地面積以上に価格に影響する。ここは鎌倉にありがちな、細く長い私道を通ってやっとたどりつく立地。車が入らないので駐車スペースも取れないし、建て替えには別途手続きが必要となる場合もある。リノベーション工事をする場合も運搬費用等がかさむため割高になる、いわば訳アリ物件だ。が、工事は一時の事。車は乗らないし、海辺の街を自転車で走ろうと決めていたから、私には問題なし。敷地までの細い道も風情のうち、と思おう。

さらに「周辺環境」。海が見えて日当たりも良く、駅からも近い、なんて無理。駅に近いことを最優先にしたため、四方を2階建て・3階建てに囲まれた平屋は、見下ろされて日当たりも悪い。当然周囲からの視線も気になるが、一人暮らしという意味では人目があることがかえって防犯になる、と割り切った。海は見えないが、自転車ですぐだ。

そして「狭い間取りと古い設備」。風情はあるものの、住むとなると設備も間取りも大幅な手入れが必要そう。だがそもそもフルリノベーションを前提に探していた。古くて結構、リノベーションし甲斐があると考えた。広さは元のマンションより一回り広くなる程度で荷物の多い私には若干不安だが、これもプランを工夫すればいい。

一目惚れでスピード契約するまでのチェックポイント

このように欠点に見えることも含めて許して愛すことができれば、もはや運命(笑)。あと重要なのが「タイミング」。じっくり粘って価格交渉に成功するパターンもあるけれど、今回は他に検討者がいることも聞いていたので、スピードで勝負。まさに一目惚れだったので、見学後にすぐに購入意思を表明しつつ、気になるポイントを確認することに。

短期間に鎌倉にせっせと通った。最初の物件見学が昼間だったので、後日夜遅い時間に駅から歩き、人通りや騒音など夜間の状態を確認。周辺を歩き回ってコンビニやスーパーなどの生活施設もチェック。市役所では防災課で気になる災害情報を、建築課で建て替えることになった場合に必要な手続きなどを確認。「築年不詳」とされていたが、大正13年に建物課税が始まっている記録があり、築90年を超すらしいと判明。古いながらきちんと住み継がれ、いままで生き抜いてきたことへの尊敬の念が生じた。次は私がバトンを受け取って、90歳の古民家に更に長生きしてもらおう。

誠意と熱意が伝わったのか、不動産会社担当者や売主さんにも恵まれ、懸念点もみるみるクリアになっていった。そして現地見学から約2週間後には契約、約1カ月で引き渡しという超スピード決断となった。

【画像3】初めて現地見学に行ったとき撮影した外観写真。周辺の高い建物に囲まれた小さな平屋は、可愛らしいお婆ちゃんがちょこんと正座しているような印象。なぜか懐かしく感じるこの姿に一目惚れ(写真撮影/長井純子)

【画像3】初めて現地見学に行ったとき撮影した外観写真。周辺の高い建物に囲まれた小さな平屋は、可愛らしいお婆ちゃんがちょこんと正座しているような印象。なぜか懐かしく感じるこの姿に一目惚れ(写真撮影/長井純子)

運命の物件に出会う秘訣、それはとにかく自分自身の優先順位を明確にすること。「こだわりポイント」は厳選して、人が嫌がることでも「諦めポイント」として気にならなければ、がぜん確率は高まる。男女の出会いと似ているかな!? 次回から、この古民家がリノベーションでどう変わっていくかをご紹介!

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連載 元編集長の鎌倉古民家リノベ移住 10誌以上の住宅情報誌の編集長を経験してきた筆者。都内マンション暮らしから鎌倉の築90年古民家へ移住するまでのノウハウや失敗談を7回連載でお伝えします。
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