信じる味を伝えたくて20代で起業。 東京・吉祥寺「LIGHT UP COFFEE」の挑戦

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「吉祥寺に新しいタイプのコーヒーショップがあって、うまいらしいんですよ。しかも起業したのが25歳ぐらいの男性ふたりで、ほぼ学生からそのまま独立してやってるらしいんですね。ハクオーさん、ちょっと行ってみません?」

 

と『メシ通』編集Mさんの誘いが。

「新しいタイプのコーヒーショップ」って、一体どんなところだろう?

 

これは行ってみたいと、さっそく東京・吉祥寺へ向かいましたよ。

 

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吉祥寺パルコから徒歩7、8分ぐらいのロケーション、とっても陽あたりのいい場所にあるのが「LIGHT UP COFFEE」(ライトアップコーヒー)さんです。

 

初めてなら、ぜひ3種類のテイスティングセットを

まずは店主のおふたりに登場してもらいましょう!

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川野優馬さん(左・24歳)と、相原民人さん(25歳)。

おふたりともフレッシュ!

 

はじめまして、よろしくお願いします!

 

さて、何を頼んでみようかな?

 

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種類はいろいろありますが、3種類の産地を飲み比べられるセットがあるんです。そちらはいかがでしょうか?(相原さん)

 

おお、それは楽しそう。では、「テイスティングセット」をお願いします!

 

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カナダから直輸入したという「エスプロプレス」なる器具を使ってコーヒーを入れ出す相原さん。

 

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これ、フィルターが2重なので微粉が出にくく、味わいがスッキリするんです。抽出効果が高いんですよ 。(相原さん)

 

手つきがあざやかで、しばし見惚れてしまう。

ボタンひとつでプシューッと出てくるコーヒーもいいけど、人の動きから飲みものが作りだされてくるのを見るのも、私はひとつ「ごちそう感」が得られるものだなあ、と思ったり。

 

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▲テイスティングセット(680円)

 

白のシンプルなカップに入れられたコーヒー、色の微妙な違いが分かりやすいですね。

うしろのカードにはコーヒーの

  • 産地
  • 農園・精製所
  • 生産処理法

 などが記されています。

 

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左は、中米・ニカラグア共和国のリモンシージョ農園で生産されたコーヒー。下に書いてある「デリケート・ナチュラル」というのは生産処理法のことだそう。

 

コーヒーの実のまま乾燥させて作られているコーヒーで、非常に華やかでフローラルともいえる風味があるんです。口当たりが豊かなコーヒーですね。(相原さん)

 

それに対して、右側のコスタリカ産のコーヒーはがらっと雰囲気が変わる。

おお、コーヒーの同時飲み比べってしたことがなかったけど、やっぱり違いが分かりやすいものだなあ。

 

こちらのコスタリカ産はウォシュットという水洗式の処理方法で作られています。甘みと酸味のバランスが良くて、誰からも好かれるタイプのコーヒーといえるでしょうね。カンデリージャという小規模な精製所のものですが、去年より味わいが進化してるんです。どんどん進化している作り手さんなんですよ。(相原さん)

 

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さらに、それぞれのカードの裏側には、事細かにコーヒーのディテールが書かれてあります。

3種類のうちのもうひとつはケニア産で、その風味は相原さんの表現を借りると「ケニアの肥沃な土壌で自然そのままに栽培されたコーヒー、テロワールを感じさせる味わい。ジューシーな果実感がある」とのこと。

 

うーん……まるでワインバーでソムリエの話を聞いているようだ。

 

ええ、ワインの原料となるブドウだって畑で作られる果実。コーヒー豆だって畑で作られる果実ですからね。一緒ですよ!(相原さん)

 

なるほどっ!

 

コーヒーも農作物、作り手や土壌、処理方法で、味わいが随分と変わってくるもんなんだなあ……。ワインを選ぶような観点からコーヒーを選ぶって、新鮮な初体験でした。

 

バリスタのデザインセンスが活きた店内

こちらのお店のコーヒー、実際に飲んでみると苦みや渋みよりも先に、香りがスーッと体の中に入ってくる。

なんだろう、このやさしさは?

コーヒーって苦くて渋みがあって……そんなイメージが消えていく。人によっては薄さを感じるかもしれないけど、とっても飲みやすくて味わいの違いが分かりやすい。

 

相原さんのコーヒー、うまいっす!

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 「そうですか……ありがとうございます」

 

そんな相原さんは、日本大学芸術学部出身。バリスタであり、ロースターであり、そしてデザイナーの顔も持っています。

 

お店には彼のデザインやイラストがいっぱい!

 

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コーヒー豆のパッケージに貼られているこれらのイラストも、すべて相原さんの手によるもの。うーん、このポストカードがあったら欲しいなあ。動物たちの表情がなんともいえず、愛嬌があるのですよ。

 

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好みに応じた豆のセレクトや、オリジナルブレンドも作ってくれるそう。

オリジナルパッケージも作れるそうで、これは惹かれる!

お子さんやペットのイラストを描いてもらって、オリジナルコーヒーパッケージを作ってプレゼント、なんていいかも!

 

ハートの花が咲くラテアートにうっとり

さて、相原さんと川野さんの出店ストーリーに話を戻しましょう。最初はふたりとも、まったくもってコーヒーが好きじゃなかったというからビックリ。

 

 そうなんです。たまたま一緒のコーヒーショップでバイトしていて知り合ったんですよ。そもそもの入口はラテアートなんです。仕事としてそれをやるうち、ハマったんですね。うまくなりたかった。バイトが終わってから、めちゃくちゃ二人で練習したんですよ。(相原さん)

 

その成果は現在、お店のカフェラテなどでも発揮されているんですよ。相原さん、ちょっとそのワザ見せてくれませんか? 

 

「いいですよー」と声が聞こえたか聞こえないかのうちにあれよあれよと…… 

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「カフェラテをどうぞ」

 

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なんともクリーミーなハートが出現!

 

ラテアートに関しては、川野君のほうがうまいんですよ、彼はラテアートのコンテストでチャンピオンにもなったことがあるんです。(相原さん)

 

おお、それはすごい。川野さんのも見せてください!

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「いいですよ、ちょっと待ってくださいね」

 

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「はい、どうぞ」

 

おおお、ハートの花が!

このカフェラテ、見た目だけじゃなく、味わいもとっても良かったなあ……。

オリジナルカップの青、なんともいい色でしょう?

 

素材本来の味を伝えていきたい

さて、ラテアートにハマって“自主練”を繰り返すうち、ショッキングな出来事に遭遇したというふたり。それはいったい……?

 

ラテアートにのめり込むうち、他のお店のことも気になってきたんです。それでお店巡りをしているうち、ノルウェーから進出してきた「フグレン トウキョウ」のコーヒーに出合って衝撃を受けたんです。「なんだ、この果実感は!!」って。(川野さん)

 

その味わいとは、浅煎りをベースにしたもの。今まで得意じゃなかった“コーヒー独特の苦み”がなくて、すっきりとした酸味、フルーティな風味さえ感じさせるものだったそう。

この出会いから、コーヒー自体への興味がどんどん膨らんでいったという川野さんと相原さん。ここで実行力が炸裂、ふたりは実際に北欧へ。いろいろと飲み歩き、さらにはロンドンなどでも“経験値アップ”を重ねていきました。

そうしたプロセスを経て、いまにつながる「自分たちが好きなコーヒーの立体像」がだんだんと見えてきたのだそう。

 

そして、自分たちの店舗の設立へ。

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でも、そのときはまだ学生でバイトでという立場で社会経験もなく、世の中に「自分たちのコーヒー」という武器だけで出ていくのは、正直ためらう部分はなかったのですか?

 

スピード感が大切だと思ったんです。「いま、自分たちの手で広めたい!」そう思ったからすぐやろう、と。経営ノウハウを学んでからじゃなくて、いまやろうと。
いろんなことは、やりながら勉強していけばいいと思いましたし、なんとか資金を集めることもできました。そこに迷いはなかったです。リスクを考えたら、そりゃいろいろあるとは思いますけど、何かをやるときにリスクって考える時点で、そんなにやりたいことじゃないと僕は思うんですよ。(川野さん)

 

と、キッパリ。この潔さで開店されたのが2014年7月。取材中もお客さんは途絶えることはなく。ファンはかなり増加中のよう。

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お店はなんとも、和気あいあい。二人の入れるコーヒーの味に魅せられて、新たなスタッフも増えているようです。

 

「各国のコーヒー農家さんが丁寧に作ったコーヒー豆、その味わいをきちんと伝えたいんです。素材の味をきちんと伝える。今までは、よくない品質のコーヒーをごまかすために、深煎りして苦味をつけて、それを隠すという一面もあったと思っています。カフェイン摂取のため、眠気覚ましのためだけに飲むようなものじゃないコーヒーをつくりたい。(川野さん)

 

日本のコーヒー市場はいま、どんどん成熟してきてます。良い飲み手が増えれば、それだけ良い作り手へ還元することができる。そしてまた良い品質のコーヒー作りが盛んになって、また新たな飲み手も増えていく……そう信じています。そうした循環をつくっていきたい。(相原さん) 

 

「素材としてのコーヒーの味を楽しもう!」

そんな飲み方を増やしていけたら、というふたりの気概、なんともすがすがしく。

いいなあ、志(こころざし)だなあ、と感じ入りました。 

 

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実はこちらのお店、目の前が公園なんです(吉祥寺西公園)。

取材日はいい陽気で、親子がのんびりシャボン玉づくりをして遊んでいたり。そんな光景を眺めながらの、コーヒータイム。

 

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テイクアウトして、公園で楽しむにもいい季節ですね!

吉祥寺散歩の1コースとして、「LIGHT UP COFFEE」に寄ってみてはどうでしょう。

 

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相原さん、川野さん、ごちそうさまでした!

 

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お店情報

LIGHT UP COFFEE(ライトアップコーヒー)

住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町4-13-15
電話番号:0422-27-2094
営業時間 10:00~20:00
定休日:無休

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:白央篤司

白央篤司

フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。「食と健康」、郷土料理をメインテーマに執筆をつづける。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。

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