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「新たな方向性に挑戦するように自分を奮い立たせたかった」― アッシュのティム・ウィーラーが、初のソロ・アルバムを語る
1994年リリースの1stアルバム『トレイラー』から20年間で全英アルバム・チャートで2度の1位、18曲ものトップ40シングルを生み出してきた北アイルランド出身のロック・バンド、アッシュ。そのフロントマン/ソングライターとして弱冠17歳でデビューを果たしたティム・ウィーラー。2001年には、英国作曲家協会が選出するアイヴァー・ノヴェロ賞を受賞するなど、ソングライターとしても高い評価を得ており、近年では映画音楽を手掛けるなどマルチに活動するティムが、2014年10月、初となるソロ・アルバム『ロスト・ドメイン』をリリース。父の死がきっかけとなり制作された今作は、ティム自身がドラム以外のほぼすべての楽器を演奏し、いつにも増して内省的な詞からは、ソングライターとしての新たな魅力が伺える内容となっている。今年7月にザ・レンタルズのバンド・メンバーとして【NANO-MUGEN FES. 2014】へ出演する為に来日したティムに話を訊いた。
スクリーン上で自分の音楽が映像と一緒に流れた時のパワーに惹かれた
??先週末のザ・レンタルズとのライブは如何でしたか?たまにはサイドマンとして演奏するのもいいですよね。
ティム・ウィーラー:アメイジング!すごく楽しかったし、サイドマンとして演奏するのは大好きなんだ。フロントマンとしてツアーをする時に一番ハードなのって、毎日きちんと声のケアをすることなんだよね。それをやらなくていいのは、すごく楽だよ。肉体的なストレスから解放されるっていうか(笑)。それに彼らの曲も大好きなんだ。日本に来たのも3年ぶりで、前回はアッシュとして【NANO-MUGEN FES.】に出演して、その時もザ・レンタルズのバンドをやったんだ。
??今はNYで暮らしているのですか?
ティム:そうだよ。住んでいるのはブルックリンだけど、スタジオはマンハッタンにあるから毎日市内には行ってるよ。
??アーティストとして、NYのどの様なところに惹かれますか?
ティム:2005年から住んでいるけど、エネルギーに満ち溢れているところが好きだね。クリエイティヴな人種のるつぼで、とてもインスパイアされる。住む前にも、1年に一度は、インスパイアされる為に訪れていた街なんだ。バンドをやってる人も沢山いるし、音楽コミュニティがいいよね。1日に20曲書くというチャレンジもやり始めたんだ。これまで5回ぐらいやっているけれど、友人たちに声をかけて、同じように1日で20曲作ってもらって、後日参加者全員でビールとかピザを持ち寄って集まるんだ。そういうのって、田舎に住んでたら絶対できないことだよね。趣味が合う人がそんなにたくさんいないと思うし(笑)。
??その前というのは地元、それともロンドンで暮らしていたのですか?
ティム:ロンドンに9年ぐらい住んでいたけれど、スタジオを確保するのがすごく難しいんだよ。だからNYで、すんなり見つかったのは意外だったね。それにアメリカからは、いい音楽がたくさん生まれているから。
??イギリスにいた時の方が、特定のサウンドの曲を作らねばならないという固定概念があった?
ティム:そうだね。それが引っ越した理由の一つかも。制作環境が変わって、より自由になることができた、とは自分でも思うし。イギリスにいた時は、そういった批判的な意見も結構多かった。それにミュージシャンの年齢に関しても、アメリカの方が寛大だ。歳を重ねることで、演奏が上達し、成熟していくという考える人が大半で、たとえばブルックリンには30~40代のバンドもたくさんいる。でもイギリスだと、バンドがピークを迎えるのは若い頃みたいな考えが一般的だよね。今は、少し変わってきているのかもしれないけれど、僕が暮らしていた頃は、それをダイレクトに感じたよ。
??なるほど。最近では、TVや映画などのスコアも手掛けていますが、元々興味があったことだったのですか?
ティム:コンポーザーのイーラン・エシュケリと仲良くなって…、それからコールドプレイを通じて、マット・ワイトクロスという監督に出会ったんだ。彼はアッシュのミュージック・ビデオも何本か手掛けていて、機会があればやってみたい、と話してみて実現したんだ。アッシュとしてもダニー・ボイル監督の『普通じゃない』のテーマ曲を書いたことがあって、そのプロセスがとても面白かった。後は、「Kung Fu」が本当にジャッキー・チェンの映画に起用されたり、スクリーン上で自分の音楽が映像と一緒に流れた時のパワーに惹かれたんだ。
??過去の曲が起用されるのとシーンにあった音楽を新たに作曲するのとでは、また違いますしね。とは言え、最初は困難もあったのでは?
ティム:より劇中の様々な感情を形どる手助けをすることが出来るからね。最初はすごくハードだったよ、普通に曲を書くのとは、まったく異なる規律が必要になってくる。でも、納得させるのは、監督1人だけだからね(笑)。アッシュの場合は、メンバーはもちろんだし、ファンのことも考え、自分の内なる部分を掘り下げ、曲のテーマなども自ら選ばないといけない。スコアの場合は、目の前にある映像に自分が反応しながら、息を吹き込んでいくから、より直感的だよね。当初は、専門用語も全く分かなかったから、学ぶことも多かったけれど、友人達と仕事をするのは楽しいし、ギターを色々な形で使えるのは面白かったね。
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リリース情報
関連リンク
ロスト・ドメイン
2014/10/29 RELEASE
YRCU-98010 ¥ 2,444(税込)
Disc01
- 01.スノウ・イン・ナラ
- 02.エンド・オブ・アン・エラ
- 03.ドゥ・ユー・エヴァー・シンク・オブ・ミー?
- 04.ホスピタル
- 05.メディシン
- 06.ヴィジル
- 07.ファースト・サイン・オブ・スプリング
- 08.ヴェイパー
- 09.ホールド
- 10.ロスト・ドメイン
- 11.モンスーン
- 12.アリアドナ (日本盤ボーナス・トラック)
- 13.リアド (日本盤ボーナス・トラック)
- 14.シェルタード・ユース (日本盤ボーナス・トラック)
- 15.ワン・ラスト・ソング (日本盤ボーナス・トラック)
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