米はおかずに合わせて選ぶべし!お米マイスターが教える目からウロコの“選米術”

f:id:Meshi2_Writer:20160411104103j:plain

東京・原宿と渋谷をつなぐ「キャットストリート」という道があります。その中ほどを曲がったところに、精米店があるのをご存知ですか? 

 

f:id:Meshi2_Writer:20160407105446j:plain

住所は、神宮前6丁目。

ビルの1階ではあるものの、米袋がたくさん積まれて、店の奥には精米機がいつも稼働しています。たたずまいは、まるっきり昔ながらのお米屋さん。

  

「こんな都会の真ん中にお米屋さんがあるのか!」

 

最初に見つけたときは驚きました。気になってネット検索すれば、ホームページを発見。そこに書かれてあった一文に、興味をひかれたのです。

 

新しいお米の楽しみ方を伝えたい。

だからお米の特徴や、

相性のよいおかずのことまで、

あますところなくご提案します。

  

「おかずまで提案」 というのに、ビックリしたんですね。うーん。お米とおかずの相性って、これまであまり考えたがこと、なかった。スーパーに行けば「コシヒカリ」や「あきたこまち」といった"おなじみ"のお米のほかにも「ゆめぴりか」や「ひとめぼれ」など、たくさんの種類が並ぶ時代。その違いも、あんまりよく知らないんだよなあ。それぞれの味の違い、そして「相性のよいおかず」を教えてもらいたい!

そうとなったら善は急げ。小池さんに取材を申し込みました。

  

ナント1合からでも購入可能!

f:id:Meshi2_Writer:20160407105426j:plain

昭和5年(1930年)創業、小池精米店の三代目、小池理雄(こいけ・ただお)さん。日本米穀小売商業組合連合会が認定する「五ツ星お米マイスター」の資格保持者です。まずは、気になる店内を見せてもらいました。 

 

f:id:Meshi2_Writer:20160407105455j:plain

壁にはその日に買えるお米の種類が壁に貼られており、希望のグラム数から購入できます。つまり、試してみたいお米を、少量から購入可能

 

これは、うれしい!

 

お米って、少ないものでも2キロ売りが多いですよね。違う種類を試してみたいけれど、買ってみて好みじゃなかったらその後が大変。でも、小池精米店なら1合からでも購入可能というわけです。「いやいや、もっと少なくてもいいんですよ」と小池さん!

 

f:id:Meshi2_Writer:20160407105638j:plain

お店にはところ狭しと玄米が並べられ、お店の奥で精米されては、毎日近隣のレストランへ配送されていきます。原宿周辺の飲食店で、小池精米店のファンは多いのだそう。

  

f:id:Meshi2_Writer:20160407105832j:plain

取材中も、精米機はフル稼働でした。音を聞いていると、ここが原宿エリアであることを完全に忘れてしまいます。 

 

f:id:Meshi2_Writer:20160407105510j:plain

小池さんのお母さん、篤子さん。

いまも現役の看板娘! 元祖・キャットストリート小町ですな。 

 

現代は「おかずに合わせてお米を選ぶ時代 」

さて、そろそろ小池さんにお話をうかがいましょう。まずは、

 

たくさん種類がある中で、どうやってお米を選べばいいの? 

 

こちらから、質問してみます。

 

f:id:Meshi2_Writer:20160407105844j:plain

例えば、つや姫ななつぼしというお米がありますね。この2つの特徴は、粒がしっかりとしていて、食感がいいんです。それが食べごたえにつながるんです。なので、

  • しっかりと食べたいとき
  • 腹持ちよくしたいとき

といったときにおすすめします。さらに言うと、

  • 味の濃いおかず

にもいいですね。濃いめの味に負けない存在感があります。

また、ササニシキ。このお米の特徴は、味わいがさっぱりとしていて、食べごこちも軽いんです。だから、「きょうは軽く食べたいな」というときや、胃を疲れさせたくないときなどにもいいんですよ。

 

現在は、本当に多くのお米の種類があります。
カレーとの相性を考えて開発された 華麗米なんてお米もあるんですよ。この華麗米、粒立ちがしっかりとしていて、ごはん粒とカレーの絡みがいいんです。そしてカレーの味を口の中で適度に中和させるように、噛みごたえのある食感となっています。

現代はもはや、ご自身の好みと、おかずに合わせてお米を選ぶ時代だと思いますね。

  

f:id:Meshi2_Writer:20160414181648j:plain

「お米の個性を知り、使い分ける」

おつまみによって合わせるお酒の種類も変わってくるように、自分が好きなおかずに合わせてお米を選び、味わう。このスキル、身につけられたら食卓の楽しみも広がるだろうなあ。

  

5大品種の特徴&おすすめの合わせ方

それでは実際に、スーパーでよく売られているポピュラーなお米5種類を選んで、小池さんにその特徴と "おすすめの味わい方"を解説していただきましょう。

 

①コシヒカリ

ご存じのコシヒカリ、日本で食べられているお米の約33%がコシヒカリです。

【特徴】

  • うまみの濃さ
  • 粘り気に富む
  • しっかりとしたお米の甘み

【味わい方】

コシヒカリといえば、うま味の強さ。そこをしっかりと味わうならば、漬物やおひたしなどのさっぱりした和のおかずがいいでしょう。もしくは塩辛など、いわゆる"飯の友"で、たっぷりごはんを味わってください。ちなみに、私の個人的なおすすめ“飯の友”は「酒盗」(カツオの腸の塩辛)です。ごはん何杯でもいけますね。

 

②ひとめぼれ

【特徴】

  • さわやかな甘みがある
  • 粒立ちがよく、つるっとしている
  • のど越しがいい

【味わい方】

炊いたときの粒立ちがいいので、私のおすすめは炊き込みごはんです。炊き込みにしても、お米が型崩れを起こさず、きれいに仕上がります。

 

f:id:Meshi2_Writer:20160411134100j:plain

 

③あきたこまち

【特徴】

  • やや固めの食感
  • しっかりとしたお米の甘さがある
  • 後味さっぱり

【味わい方】

さっぱりとした味わいなので、洋食おかずと好相性。汁気のあるものとは特に相性がいいんですよ。ロールキャベツや煮込みハンバーグとの組み合わせがおすすめ。また食感がしっかりしているので、チャーハンにしてもいいですね。炒めても粒立ちよく楽しめます。

 

④ササニシキ

【特徴】

  • 粘り気が少なめ
  • さっぱりとした味わい

【味わい方】

さっぱりと食べられるのがササニシキの身上。粘り気が少ないので、寿司めしによく合うんです。ササニシキを寿司めしに使用しているお寿司屋さんは少なくないんですよ。巻き寿司をつくるときにもおすすめです。また、油っこいおかずのときに合わせると、口のなかを洗ってくれるので、すっきりと食べられます。

 

f:id:Meshi2_Writer:20160417133436j:plain

 

⑤ゆめぴりか

【特徴】

  • もち米のような粘り
  • もっちり感に富む
  • 口の中にお米の甘みが長く残る

【味わい方】

冷めたときにもおいしく食べられるお米です。水分を逃さないんですね。だからおすすめは、おにぎりです。パサつかず、時間が経ってもおいしく食べられますよ。

 

f:id:Meshi2_Writer:20160411115706j:plain

 

うーん……こんなにもお米の特徴と、それに応じた使い方が違うものなんですね……。

取材後、いろいろと組み合わせを試してみましたが、私はさっぱりしたササニシキと中華おかず(酢豚や八宝菜、レバニラなど)の組み合わせが気に入りました。たしかに中華独特の味に染まった「口」が噛むうち洗われて、また次のひと口に行きたくなる。

  

小池流「お米をおいしく炊くコツ5カ条」

さて、せっかくお米マイスターの小池さんにお話をうかがったのですから、基本的なポイント、「お米をおいしく炊くコツ」についても質問してみましたよ。

 

①研ぎすぎないこと

しっかりと研ぎが必要だったのは、もはや昔の話です。基本、2~3回すすぐぐらいのイメージでいいですよ。水を入れたら手で軽くかき回して、水を捨てる。これを2~3回程度繰り返してください。

 

②水の質

なるべくなら浄水、またはミネラルウォーターを使うと、よりおいしく炊けます。水道水はどうしてもにおいがお米につきやすいのです。

 

③浸水時間

お米を研いだら、水につけますね。この時間ですが、「夏は30分、冬は1時間」これが最低時間だと思ってください。余裕があれば、この倍の時間ほどつけるのがおすすめです。またお米を水につけた場合は、炊飯器のモードにご注意を。浸水時間も含めて「炊きあがりまでの時間」になっている炊飯器は少なくありません。機種によって違いますので、よく説明書を読んでくださいね。

 

④炊き上がったら、ほぐす

炊き上がったら、すぐフタを開けて、しゃもじ等でお米を全体的にほぐしてください。余計な水分を飛ばすことで、よりおいしく食べられます。

 

お米の管理は冷蔵庫で!

お米は、冷蔵庫に入れておいたほうが品質を保てるんです。酸化のスピードが遅くなるので、おいしさがキープできるんですよ。また、お米は冷たい状態から炊き始めたほうがデンプンを糖化させる酵素がよく働くので、甘く炊き上がります。

 

以上、お米をおいしく炊く5つのコツ、ぜひ実践してみてください。

小池さん、ありがとうございました!

 

f:id:Meshi2_Writer:20160417133547j:plain

 

現代はパンや麺類の需要が増えて、「お米は日本人の主食!」と言い切れる時代ではないのかもしれません。しかし、日本人のお米への関心は決して薄れたわけではないと思っています。

私は昨年『にっぽんのおにぎり』という本をつくり、おかげさまで多くの反響をいただきました。小学校で講演する機会なども得たのですが「おにぎりの中で一番白むすびが好き!」という声がとても多かったんです。その理由が「お米のうまさが一番よく分かるから」という通なもの。小学生にして、この頼もしさ。

またおにぎりイベントなども開催したことで、「おいしいおにぎりを握れるようになりたい」と願っている人の多さも実感しました。

ともかく、この"百米繚乱"の時代に、自分好みのお米を選ばないのは損!

小池さん直伝お米炊きのコツも含め、ぜひぜひいろんなお米の味にチャレンジしてみてください。 

 

お店情報

小池精米店

住所:東京渋谷区神宮前6-14-17
電話番号:03-3400-6723
営業時間:8:00~20:00(配達時間 9:30~17:00)
定休日:日曜日、祝日  第2・第4・第5土曜日、お盆、年末年始

komeya.biz

※本記事は2016年4月の情報です。

 

執筆・撮影:白央篤司

白央篤司

フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。「食と健康」、郷土料理をメインテーマに執筆をつづける。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。

過去記事も読む

トップに戻る