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「親と実家を考える本」 by SUUMO
「親と実家」を考える本 編集部
2015年11月19日 (木)

ウチは大丈夫!? 意外と身近な“遺産争族”

ウチは大丈夫!? 意外と身近な“遺産争族”
(c)テレビ朝日
この秋、テレビ朝日で放映中のドラマ『遺産争族』。大好きな向井理様が主演とあって見始めたが、一話ごとに展開される“争族(相続)問題”には意外と身近なものも。そこで、ドラマの相続問題を昨今の一般家庭にありがちな事例に置き換え、家族円満に相続できる方法を調べてみた。
※冒頭の写真は、木曜ドラマ『遺産争族』より。テレビ朝日系列、毎週木曜21:00~(主演:向井理、榮倉奈々、岸部一徳、伊東四朗ほか 脚本:井上由美子)

世話をしてくれた『ムコ(ヨメ)』にも遺産を譲りたい

このドラマは、3人の娘を持つ大手葬祭会社会長河村龍太郎(伊東四朗)が、孫娘(榮倉奈々)と結婚してムコに入った河村育生(向井理)に「遺産を相続させたい」と考えるところから始まる。例えばこれが「世話になっている“長男のヨメ”にも遺産をあげたい」という話だったらどうだろう……。兄弟姉妹のいる方にとって、気になる問題ではないだろうか。

被相続人(亡くなった親)が、生前に対策を講じなかった場合、その遺産は原則として民法で定められた“法定相続人”に配分される【図1】。子どもの配偶者は法定相続人にはならないため、「ヨメにも遺産をあげたい」場合は生前に遺言を遺すなどの対策を講じる必要があるのだ【図2】。

【図1】配偶者は常に相続人となる。それ以外の相続人は、第一順位が子ども(子どもが死亡等の場合は孫)、第二順位が父母(父母が死亡等の場合は祖父母)、第三順位が兄弟姉妹となる。順位の高い相続人が1人でもいれば、下位は相続できない(「親と実家」を考える本 by SUUMO)

【図1】配偶者は常に相続人となる。それ以外の相続人は、第一順位が子ども(子どもが死亡等の場合は孫)、第二順位が父母(父母が死亡等の場合は祖父母)、第三順位が兄弟姉妹となる。順位の高い相続人が1人でもいれば、下位は相続できない(「親と実家」を考える本 by SUUMO)

【図2】遺言書がある場合はその内容に従って遺産を分ける。ただし、法定相続人には法律によって “遺留分”が認められている(このケースでは法定相続割合の2分の1)。例えば遺言書に「妻(母)と長男夫妻だけに相続させる」と書かれている場合、長女は母と長男夫妻に、遺留分として750万円(全体の[8分の1]=法定相続割合[4分の1]×[2分の1])の返還請求ができるのだ(遺留分減殺請求)(「親と実家」を考える本 by SUUMO)

【図2】遺言書がある場合はその内容に従って遺産を分ける。ただし、法定相続人には法律によって “遺留分”が認められている(このケースでは法定相続割合の2分の1)。例えば遺言書に「妻(母)と長男夫妻だけに相続させる」と書かれている場合、長女は母と長男夫妻に、遺留分として750万円(全体の[8分の1]=法定相続割合[4分の1]×[2分の1])の返還請求ができるのだ(遺留分減殺請求)(「親と実家」を考える本 by SUUMO)

【図2-1】被相続人と養子縁組を結んだ“養子”は実子と同じ身分を取得し、遺産に対しても実子と同等の権利を持つ。ただし、養子縁組をするためには妻(母)の承諾が必要だ(妻が亡くなっている場合などは不要)。なお、ヨメが「父・母」2人の養子になると、母が亡くなったときの遺産も、長男、長女と均等の割合で相続できる(「親と実家」を考える本 by SUUMO)

【図2-1】被相続人と養子縁組を結んだ“養子”は実子と同じ身分を取得し、遺産に対しても実子と同等の権利を持つ。ただし、養子縁組をするためには妻(母)の承諾が必要だ(妻が亡くなっている場合などは不要)。なお、ヨメが「父・母」2人の養子になると、母が亡くなったときの遺産も、長男、長女と均等の割合で相続できる(「親と実家」を考える本 by SUUMO)

「熟年再婚」した父親の遺産が、再婚相手の子にいってしまう!?

さて、最近は離婚・再婚を経て新しい家庭を築く人が増えている。2014年の調査では、結婚した夫のうち約19%が再婚。60歳以上の再婚数(夫)も2000年の1.4倍となっているのだ(厚生労働省“人口動態調査2014年”)。こういった“再婚家庭”も遺産相続時にトラブルになることが珍しくない。

例えば、退職金や貯蓄、マイホームなど6000万円の資産がある60代の男性(A)が再婚するケース。その数年後、A⇒後妻(B)の順で亡くなる場合、【図3】のように遺産の半分(3000万円)をBが、Bの死後はその連れ子が相続することになる。
しかしAの子にとって、「自分の父母が長年かけて築いた財産を後妻の連れ子に渡す」のはスンナリ納得できる話ではない。熟年カップルの再婚を子どもが反対したり、父親が亡くなったときの遺産相続を巡るトラブルは、こんな心情から起こることが多いようだ。

【図3】夫(A)が亡くなった時点の法定相続人は「Aの実子と後妻(B)」の2人で、Bの連れ子には遺産相続権はない。一方、Aの実子はBの遺産を相続できない。つまりAの遺産のうち後妻(B)が相続した分は、Bが亡くなるとすべてBの連れ子が相続することになる(「親と実家」を考える本 by SUUMO)

【図3】夫(A)が亡くなった時点の法定相続人は「Aの実子と後妻(B)」の2人で、Bの連れ子には遺産相続権はない。一方、Aの実子はBの遺産を相続できない。つまりAの遺産のうち後妻(B)が相続した分は、Bが亡くなるとすべてBの連れ子が相続することになる(「親と実家」を考える本 by SUUMO)

再婚時に考えたい“相続トラブル”回避策

親(または自分)が再婚するときには、こういったトラブルを避けるための対策を立てておきたい。方法のひとつは「遺言書を書くこと」。後妻には先の人生を安心して過ごせる額を遺し、残りは全額自分の子どもに遺すなどの分け方が考えられる。なお、この場合は法定相続人の“遺留分”にも配慮しておきたい。例えば【図3】の例の場合、後妻(B)の遺留分は全体の4分の1である1500万円となる(法定相続割合[2分の1]×[2分の1])。

このほか、【図4】のように「父親(A)の実子を後妻(B)の養子にする」方法もある。ただし、養子になると養親(後妻)の扶養義務など、実子と同じ義務が生じることも知っておこう。

【図4】夫(A)の子が後妻(B)の養子になれば、Bが亡くなったとき、Bの子と均等に遺産相続できる。つまり、【図3】で父親から相続した3000万円と合わせて4000万円を相続できる(「親と実家」を考える本 by SUUMO)

【図4】夫(A)の子が後妻(B)の養子になれば、Bが亡くなったとき、Bの子と均等に遺産相続できる。つまり、【図3】で父親から相続した3000万円と合わせて4000万円を相続できる(「親と実家」を考える本 by SUUMO)

法定相続人の法定相続割合は一般的な基準としては平等なものだといえる。しかし、個々別々の事情によっては、紹介した例のように家族に不公平感を与え、トラブルの種になりかねない。
遺産相続をきっかけに家族が“争族”にならないため、親が元気なうちに「これまで子どもたちにしてきた贈与」、「介護時の子どもたちの役割」、そして「遺産の配分」などについて親子でよく話し合い、皆が納得いく遺産相続の形を決めておくことが大切だ。

ライター 森島薫子
監修/NHB税理士法人 税理士 福田浩彦

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