今年6月に東京証券取引所が定めた「コーポレートガバナンス・コード」が注目されている。2人以上の社外取締役の専任や株主権利の確保による経営チェックなどで企業のガバナンスを強化する試みだ。
“日経新聞風”に解説すると、欧米の投資家はこの動きを「不透明な日本企業を評価しやすくなる」と歓迎するため、企業の価値は上がる──とされている。
しかし、金融関係者や個人投資家も熟読するほど注目されている金融情報サイト『日刊闇株新聞』発行人のA氏は、「とんでもない話だ」と語気を強める。同氏は2011年に発覚した巨額の粉飾決算「オリンパス事件」の際に、事件の背景や「飛ばし」と呼ばれる損失隠しの具体的手口を次々と暴露し、大きな注目を浴びた。どの新聞やニュースよりも詳しく報じたうえ、後からそれらの情報がすべて真実だったとわかり、業界が騒然となった。
「オリンパスなどの不祥事を受けて“監視を強めないと会社は悪いことをする”といった風潮から新たにルールを設けたわけです。
しかし、金融庁の求めるガバナンス・コードは単に“行儀よくしなさい”“外部の識者を経営陣に入れなさい”という内容であり、企業にとって最も重要な『利益を上げる』行為を否定している。これで“儲ける経営”などできるわけがない」(A氏)
拙速なガバナンス・コードの導入が経営の足枷になり、ひいては株価の低下につながるとA氏は主張する。
「評論家のような連中が外部取締役として経営陣に入り、儲かりそうな案件でも“コンプライアンス的に危ない可能性が少しでもあるものはとにかくダメ”と法的にOKなはずの案件まで過剰にストップをかけるようになる。
本来、企業が得た利益は内部留保して投資に回すほうが効果的だが、株主価値を高める名目で配当を上げると財務状況を圧迫する。
企業統括はもちろん重要だが、ガバナンス・コードを慌てて取り入れるような会社はダメ。短期的に株価が上がるかもしれないが、長期的には企業活力を損ない、企業価値が棄損する。本当なら、それこそがまさに株主に対する背信行為です」(A氏)
やはり“日経新聞流”の解説とは観点が全く異なる。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号