激戦区で“観客動員”を伸ばすベースボール居酒屋『リリーズ 神田スタジアム』監督 髙橋雅光さん【男の野球メシ#02】

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12球団ファンOK! 敷居の低さが売りのカジュアル居酒屋

東京千代田区、JR神田駅の北口を抜けてすぐ。「元気ハツラツ!オロナミンC」の松井秀喜と「イチロ・ニッサン」の若かりし頃のイチローが出迎えてくれる雑居ビルの2Fに、異色のベースボール居酒屋『リリーズ 神田スタジアム』はある。オープンから2年あまり。サラリーマンの“聖地”新橋とならぶ激戦区・神田で、着実に“観客”の心をつかんできた店の“監督”に、その秘訣をうかがった──。

 

実は独立するにあたって、『野球居酒屋をやろうと思う』って言ったときは、10人いたら10人全員に『やめておけ』って反対されたんです。巷では野球人気の衰退が叫ばれて久しいうえに、ペナントレースがあるのは1年の半分だけ。ただでさえ飲食店の競争が激しい神田という土地柄を考えたら、それは至極まっとうな反応だったと思います。でも、僕のなかではやっぱり『自分で商売を始めるなら、徹底的に好きなことを突きつめてやりたい』って思いが強かった。まぁ、要するに無謀だったんですね(笑)

 

自身が長く勤めた飲食系企業の系列店が入っていた物件を、そのまま居抜きで譲り受けて改装したという店内には、その想いをぶつけるかのように、ユニフォームをはじめとした野球グッズが所狭しと並んでいる。

 

だが、そんな“ごちゃ混ぜ感”の漂う野球一色の雰囲気こそが、当初から漠然とあった“勝算”のひとつだと監督は言う。

 

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▲野球まみれの店内。4台あるテレビでは当日の試合や名場面集を随時放映中

 

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▲人工芝にホームベース型の座布団。こうした芸の細かさも酒の肴に

 

元選手や関係者がやっているお店は、それが老舗になればなるほど、店主と常連客の距離感が近すぎて、逆に敷居が高かったりしますよね。でも、僕自身もそうであるように野球ファンの大多数は、野球経験のないライト層。だからこそ、そういうライトな野球ファンでも居心地のいい空間にしようっていうのは、当初から狙いとしてあったんです。すでに常連客のたくさんいる老舗が多い神田のような街で、焼き鳥屋をやってもしょうがないって思いもありましたし。

 

そんな徹底した“ファン目線”の店作りと、TwitterやFacebook、ブログといった、この手の居酒屋があまり手を出さないネットツールの積極的な活用が功を奏して、店の存在は瞬く間にクチコミで拡散。いまでは多いときで1日あたり70〜80人もの野球ファンが、ひいき球団の別なく集まる評判のお店へとなりつつある。

 

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▲各種スポーツ新聞や野球関連書籍も豊富に揃えている。文系野球ファン必見!

 

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▲監督が自ら集めた秘蔵コレクションの数々。なかにはレアすぎる逸品も

 

とは言え、基本的に試合のない月曜日はやっぱりヒマですし、対戦カードによっても当然バラつきは出てきます。日本シリーズなんかだと、第4戦ですんなり決まって、第5戦以降の予約がぜんぶキャンセルなんてこともありますしね。もちろん、それも含めての野球居酒屋ですから、そういうときでもお客さんに楽しんでもらえる工夫を考えるのが、僕の仕事だとは常日頃から肝に銘じてますけどね。

 

監督自身がそう語るように、店では『LILIES BASEBALL LIVE』と題したイベントを毎月ペースで定期開催。この6月には、元ヤクルト・中日の川崎憲次郎氏、つい先日の7月には、川端友紀選手ら女子プロ野球・埼玉アストライアの面々をゲストに招くなど、バラエティ豊かな人選で独自色を打ち出してもいる。

 

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▲カープの赤ヘルトマト 380円。ネーミング&ビジュアルがまず楽しい

 

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▲からくり屋敷 東京DOMEサラダ 580円。巨人に負けた日に持ってこい?

 

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▲猛虎の豚平焼 580円。ソースとマヨネーズでタテジマを表現

 

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▲フルカウント揚げタコ焼き 580円。決して食べかけではありません!

 

いちばんのこだわりは“料理”ではなく“野球”という潔さ

料理に関しては、ウチはまず“こじつけダジャレ”のネーミングありきで、メニューを開いて、ひと笑いしてもらえればそれでいいという考え方。だから、『商品化できそうだな』ってものでも、名前が決まらないからボツってパターンもよくあるんです(笑)。ただ、そのぶん、こと野球に関してだけは、常に本気で向きあいたい。お金さえかければ、同じような店はできるかもしれないけど、もともと好きな人を相手に商売をする以上、そこは絶対伝わるし、手を抜いたらすぐにバレるものだと思いますしね。

 

休みの日には自らチケットを買って各地の球場に繰りだし、ナマの野球にふれることも自分にとっては大事なライフワークだと、監督は言う。その本気度は、店内を彩るユニフォームをはじめとした数多のコレクションからも一目瞭然。

 

各球団の“配布日”(ファンサービスの一環として球場で応援用にユニフォームが配られる)にはほぼ毎回行ってユニフォームをゲットしているそうで、表に飾られているおよそ100着と同じぐらいの数がすでに予備としてストックとしてあるというから驚きだ。

 

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▲6月のイベントでは、元ヤクルト&中日の川崎憲次郎さんが来訪(写真提供:リリーズ 神田スタジアム)

 

世間では「好きなことを仕事にするとしんどい」みたいなことがよく言われますけど、僕から言わせれば、毎日好きな野球を観ながら働けて、こんなに楽しい仕事はない。好きだからこそ、ここぞというときに踏んばりも利くと思いますし、自分自身にヘタな言い訳をせずに済む。そもそも、仕事にしたぐらいで好きじゃなくなるなら、それは最初からたいして好きじゃなかったってだけのことなんじゃないかな、と。

 

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心の底からプロ野球を愛する監督が作った、野球好きの、野球好きによる、野球好きのためのベースボール居酒屋『リリーズ 神田スタジアム』。この場所には、どんな旨い料理にも勝る、“野球”という名の最高の肴と、酒がある──。

 

さぁ、ビール片手に野球が観たくなってきたみなさん。神田で“同志”が待ってます!

  

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▲JR神田駅北口を出て、北に徒歩1分

 

お店情報

ベースボール居酒屋 リリーズ 神田スタジアム

住所:東京都千代田区内神田3-22-10 竹内ビル2F
電話:03-3254-0185
営業時間:17:00~23:30(ラストオーダー23:00)
定休日:日曜日
公式サイト:ベースボール居酒屋リリーズ神田スタジアム - ベースボール居酒屋リリーズ神田スタジアム

※本記事は2015年7月の情報です。

 

撮影:石川真魚

 

書いた人:鈴木長月

鈴木長月

1979年、大阪府生まれ。関西学院大学卒。実話誌の編集を経て、ライターとして独立。現在は、スポーツや映画をはじめ、サブカルチャー的なあらゆる分野で雑文・駄文を書き散らす日々。野球は大の千葉ロッテファン。

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