消費税10%への増税は2017年の4月1日から。とはいえ「来年の話……」と油断してはいられない。住宅の購入・新築等の「契約」から「引き渡し」までは、数カ月程度の期間がかかるからだ(新築マンションは1年~2年かかる物件もある)。
消費税は、原則として引き渡し時点の税率が適用される。しかし、こういった住宅ならではの事情に配慮して、「経過措置期限」が設けられている。
新築マンションのうち「間取りや内装等について特別の注文ができる物件」は、2016年9月30日までに契約すれば、2017年4月以降の引き渡しでも「消費税8%」が適用されるのだ【図1】。2016年の住宅購入・新築等は、この期限も考えて資金計画や物件の情報収集などを早めに始めることがポイントになりそうだ。
なお、ここでいう『特別な注文ができる物件』とは、家の間取りを標準仕様から変更できる物件や、壁の色、ドアの形状などを複数のプランから選べる物件など。モデルルームなどで確認しておこう。
なお、消費税増税の影響を受けるのは、新築住宅の購入・家の新築や増改築・不動産会社から中古住宅を買う場合など。売主が個人の中古住宅や土地購入は、物件の価格には消費税がかからない。
新築マンションの価格は消費税込みで表示されていることが多いが、実際に消費税がかかるのは「建物価格」だけで、土地分にはかからない。表示されている価格のうち、消費税額がいくらなのか、建物価格と土地価格の内訳がどうなっているのかは、モデルルームで聞いてみないと分からないことが多い。
ここでは一例として、建物価格が全体の60%と仮定して試算してみよう。例えば税抜価格5000万円、消費税率8%の場合、消費税は「5000万円×60%×8%=240万円」となる。このようにして価格帯別に増税負担を試算したのが下の【図2】だ。
2017年4月以降、増税による負担を軽くするため「すまい給付金」が拡充される。ただし、年収約775万円超は給付金の対象外だ(専業主婦家庭の場合)。また、拡充の幅は10万円~30万円なので、給付金がもらえる場合でも、増税による負担をすべてカバーしきれないケースが多いと考えられる【図3】。
一方、親や祖父母から資金援助を受けて家を買う人は、消費税10%で買うほうがおトクなことも。2016年10月以降に住宅購入等の契約を結び、親や祖父母から住宅代金や購入諸費用に充てるお金の一部をもらうと、2500万円までは贈与税がゼロになるからだ【図4】。
例えば1000万円もらう場合、2016年9月末まで(非課税枠700万円)に比べ、10月以降の贈与税額は19万円ダウン。また、2000万円もらう場合は286万円ものダウンになる。
このため、親や祖父母などから資金援助を受けられる人は、消費税増税でアップする額と、贈与税の非課税枠の拡充によってダウンする額を比較して、住宅の契約時期を考えたい。
消費税が5%から8%へ上がった2014年の前年(2013年)、首都圏の新築マンションは、9月までに供給数が大幅に増え10月以降急減した【図5】。増税前の駆け込み需要が多く、供給もそれに呼応した動きとなったのだ。
2016年も同じような供給動向になるのだろうか? 首都圏の新築マンション供給数について、東京カンテイ市場調査部主任研究員の高橋雅之さんは、「昨年(2015年)は約4万8000戸でミニバブル直後以来の5万戸割れとなりましたが、2016年は駆け込み需要による供給増加で再び5万戸を超えてくると予想しています」と話す。
さらに供給のピーク時期については、「前回の増税時ほどではありませんが、2016年の4月ごろから供給は増えるでしょう。一方、経過措置期限後の10月以降に需要が冷え込むと、事業主が供給を見合わせることも考えられます」と語る。
満足できる物件を見つけるポイントは、供給が多く選択の幅が広い時期に物件探しを行うこと。2016年は、春先から夏場にかけてが『探し時』になりそうだ。
2013年ころから上昇が続く首都圏の新築マンション価格。不動産コンサルタントの岡本郁雄さんは、2016年もこの傾向が続くと予想する。
「マンション供給が見込めるエリアの土地価格は、2015年も全体的に上昇(下表)。なかでも都心をはじめ立川駅や武蔵小杉駅など再開発が活発な地域の上昇率が高く、これらのエリアではマンション価格も上昇が予想されます。一方、千葉県や埼玉県などでは価格上昇が緩やかなエリアも見られます」
【神奈川県】
横浜市(神奈川区、西区、中区、南区)、川崎市(中原区、高津区)
【埼玉県】
さいたま市(大宮区、浦和区、南区)
【千葉県】
◎鎌ヶ谷市、流山市
※平成27年都道府県地価調査(国土交通省)より。商業地地価の対前年平均変動率3%以上の市区。◎の市区は変動率5%以上
また、マンションの建築費も急上昇している。「集合住宅の建築費はこの3年間でおおよそ15%程度アップ。原油安などの影響もあり現在は横ばいですが、今後も東北地方の復興やオリンピック関係の建設需要が見込まれるため、当面は高い水準で推移すると予想されます。こういった状況から2017年くらいまではマンション価格が下がることは考えにくいでしょう」(岡本さん)
次に、金利の動きを見てみよう。住宅ローン金利の指標となる長期金利は、日銀の金融緩和により2015年は市場最低水準で推移した【図6】。2016年以降はどうなるのか。
「2015年の景気は足踏みしましたが、2016年は下半期に消費増税前の駆け込み需要が見込まれるなど、徐々に上向きそう。長期金利もごく緩やかな上昇が予想されます。2016年は現在の水準(約0.2%)から0.5%程度までの変化に留まるでしょう」と話すのは、みずほ総合研究所経済調査部の主任エコノミスト市川雄介さんだ。
さらに2018年以降については、現在の金融緩和政策がいつ転換されるかがポイントになるという。「景気が比較的好調なアメリカでは、12月に小幅な利上げが行われましたが、日本の利上げは2019年ごろからと予想しています」
住宅ローンは引き渡し時の金利が適用される。新築マンションの場合、契約から引き渡しまで1年~2年程度かかることもあるので、金利動向をにらみながら買い時を考えることも大切だ。
2016年の新築マンション市場は、「価格上昇、供給減少、金利はほぼ横ばい」と予想される。そして2017年には消費税増税が控えている。そんな一年、どのように動けば満足な住宅購入ができるのかまとめよう。
1.資金計画を早く立て 情報集めをスタート
親から資金援助を受けるなら早めに相談して贈与額を決め、いつごろ契約すればいいか検討を。9月末までに契約するなら物件の情報収集を早めにスタートしよう
2.広いエリアで物件を探してみよう
予算や広さの条件に合う新築マンションは、希望エリアでは見つからないこともある。少し先の駅や通勤時間が同じほかの沿線・駅など、視野を広げて探してみよう。
3.春先から情報集め 5月までには見学しよう
2016年は4月からゴールデンウィークにかけて物件が増えそう。供給が多く選択の幅が比較的広いこの時期に見学できるよう、春先から情報収集を進めておこう。
監修/NHB税理士法人 福田浩彦(税制関係)
※本記事は『SUUMO新築マンション』2015年12月22日号に掲載した記事を、SUUMOジャーナル用に再構成したものです