「かまくら」のカタチは知ってるだろうが「横手の雪まつり」のホンモノの良さは知るまい。超メルヘンだぞ。

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雪でドーム状のアレを作って中でナニする「かまくら」はみなさんもご存知かと思うが、実際のところ、3m級のホンモノに入ったことはあるかね。

そもそも「かまくら」とはどういう意味のあるもので、中で何をするのかご存知かね。

 

恥ずかしながら私もよくわかってませんでした。

そんな自分を変えるためにちょっとした旅に出ました。

 

かまくらは水神さまを祀るお社

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幻想的とかファンタジックとか古い日本の情緒とか。

いろんな言い方がありますが、実体験してみた結果、これはメルヘンだと。ドイツ語のメルヘン。グリムやアンデルセンの童話の世界の、あのメルヘンっていうのが最もしっくり来るということがわかりました。

 

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いわゆる「かまくら」。ドーム型の雪洞は日本海側の豪雪地帯に伝わるものです。新潟の方では「ほんやら洞」と呼ぶらしいです。代表的なかまくらは秋田県横手市のお祭りになります。

 

小正月行事「横手の雪まつり かまくら」にはおよそ450年の歴史があり、市内に100基ほどのかまくらが作られます。もとは雪室で子供たちが遊んだものらしいのですが、実はあの「かまくら」には水神様が祀られる神棚があります。

 

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かまくらは神さまを祀るお社(おやしろ)なのです。

んで、神さまにお参りしてもらったお礼として子供たちがお客さんをもてなす行事なのです。「昔は子供たちが親たちから叱られることなく夜ふかしできる楽しい行事だったんです」なんて話をガイドさんに聞きましたよ。

 

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最近のかまくらにはこのようにLED電球が埋め込まれておりますが、会場によってはロウソクの灯りだけ灯しているところもあります。

かまくらは、暗くなってからが本番なのです。

 

かまくらはメルヘン体験

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さっそく、かまくらのひとつにおじゃまいたします。ここは「横手公園会場」。市内各地にかまくらがあるんですが、メイン会場とも言える場所です。

 

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このかまくらの受け持ちは3人の小学5年生です。

かまくらは町内会や地域の子供がその会場のおもてなしを担当します。

この日の場合、お城が見える横手公園会場はスポーツ少年団のバレーボールチームが受け持ちになっていました。

 

右から順に、みおん、ちせ、りん。バレーボールのチームメイトです。この地方で「どんぶぐ」という綿入れ半纏なんか着ちゃって、雰囲気出てます。

 

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おもてなしってどういうことなのかというと、こういうことです。

甘酒を飲ませてくれたり、餅を焼いてくれたりするのです。

 

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「あがってたんせ、おがんでたんせ」(あがってください、拝んでください)

 

かまくらの中から子供たちが声をかけてくるわけです。まあ実際は観光客がたくさんいてどんどん入れ替わるので、呼び込みするほど空いてもいないのですが「うちの神さまを拝んでいってください」というのがこの祭事の趣旨なわけです。

 

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外は雪が降って寒いんですが、かまくらの中はなんとなく暖かい。

ほかほかの甘酒と焼きたての餅をいただきながら、ちょっとした会話を楽しみます。

「このかまくらは厚みも50から70センチくらいあって丈夫にできているんです」
とか。

「子供のころにかまくら作ったりしましたか?」
とか。

この子たちは甘酒を振る舞ってくれるだけじゃなくて、かまくらのガイドもできるし、話し上手で世慣れてるんですね。小さいころから何年もかまくらの担当をやってるので、実はけっこうなベテランだったりするんです。油断できないです。

 

ものを食べることって、なにを食べるのかも大事ですが、どこで誰と食べるかっていう状況もまた大事ですよね。

 

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雪降る夜にですね、暖かそうな灯りが漏れている雪洞に招かれてですね、子供たちと他愛無い会話を楽しみながらごちそうになるひとくちサイズの焼き餅や温か〜い甘酒の味わいときたらですね。

 

いやこれはメルヘンですよ。

どんなおとぎ話に出てくるドリーミングなメニューよりも、実際にこうメルヘン体験としていただく甘酒の、存在感と言うんですかね、ちょっとたとえようもないです。

メルヘンを体験できるお祭りなんです。異常にメルヘンな茶話会なんです。

 

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ちなみに、りんちゃんは手のひらに忘れ物しないためのメモをしておりました。明日の学校のやつ。かわいい!

 

あったけえ空間だよう!

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ところ変わって、ここは「羽黒町武家屋敷通り会場」。地域の子供たちが受け持つエリアです。江戸情緒たっぷりの武家屋敷が並ぶ道の中にかまくらがたくさん作られています。

 

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4年生と5年生のグループです。

黄色い着物の子「わかちゃん」が茶道教室に行っているので、そこのつながりで集まったとのこと。何度かやって慣れてる子とかまくら初心者の子がいます。周りにはお母さんたちも集まってあれやこれやと指示しています。

 

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みんなしっかり着物で揃えてきて、この子たちも楽しいんでしょうね。

「あがってたんせ、おがんでたんせ」(あがってください、拝んでください)

たくさんの観光客を相手に「何年生ですか?」とか「ずっとやってるの?」とか、もう何度も聞かれているであろう質問にもにこやかに答えています。

 

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七輪で餅を焼くなんてことはこの祭りの時にしかやらないんでしょうけど、しっかりした手つきでちゃんとできています。

食べ物も、いぶりがっこかまぼこなどのバリエーションもあります。きっとお母さんたちが持たせてくれたんでしょう。

あったけえ、あったけえ空間だよう。

 

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「横手の雪まつり かまくら」では、河原にミニかまくらをたくさん並べたドリーミングな仕掛けもあります。

とにかく市内のあちこちにかまくらがあるメルヘン都市になっており、街を揚げての歓迎ムードなんですね。循環バスが15分おきに走っているので各会場間の移動も楽です。

静かな雪の夜に、ぼんやりとファンタジックな灯りがあちこちに浮かぶ街になります。

 

おもてなしの心は降り積もる雪のように

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さて、かまくらの中に入ってのおもてなしは小中学生まで。

高校生になるとかまくら「卒業」となります。

市民ホールでケバブやりんご飴を食べていた高校生たちに話を聞きました。

 

卒業した彼女たちは、こんどはお祭りへフラッと遊びに来ます。ウェーイ的なノリで来るのだそうです。こうして夜店の食べ物を食べてお友達とおしゃべりするのは、かまくらを卒業した高校生の特権というわけです。

 

それでもかまくらにちょっと顔を出して、中学生の後輩に「餅の焼き方が間違ってるゾ」とかなんとか先輩風を吹かせて慣れ合うんだそうです。なんだかタテ社会ッスね。

この子たちは、もう覚えてないくらい小さいころからかまくらをやっています。この大きな祭りだけではなく、地元のかまくらでも小さいころから「あがってたんせ」ってやってたんですね。完全に地元に根づいた小正月行事なんですよね。

 

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ああそうか、そうなのです。

この辺のほとんどの子は、かまくらでおもてなしの役をやった経験があるわけです。

お姉さんも、お母さんも、おばあさんも、ずーっと昔からずっとです。

かまくらで「おがんでたんせー」と言うおもてなし役を引き継いできたんです。

うっわー、歴史の厚みを感じます。

それこそ、降り積もる雪のようにずっとずっと、おもてなしの心が重なってきたことによる、このメルヘン体験なんですよ。

なんかもう超楽しかった。来年はぜひ皆さんにもぜひ行ってほしいですね。

 

お問い合わせ

横手市観光協会

http://www.yokotekamakura.com/

 

書いた人:鷲谷憲樹

鷲谷憲樹

フリー編集者。ライフハック系の書籍編集、専門学校講師、映像作品のレビュアー、社団法人系の広報誌デザイン、カードゲーム「中二病ポーカー」エバンジェリストなど落ち着かない経歴を持つ器用貧乏。好きな立教OBは中島かずき。

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