この件で、国土交通省が処分したのは、以下の3社だ。
この3社の関係について、整理しておこう。
マンション建設に関して情報が公開されるのは、売主が施工を発注した建築会社「三井住友建設」だけというのが一般的で、「元請け」といわれる。元請けの三井住友建設がすべての工事を行うのではなく、各工程でさまざまな事業者が下請けとして、実際に工事をしている。
今回問題になった、横浜市のマンションの基礎工事の一部に該当する「杭打ち工事」については、1次下請けが「日立ハイテクノロジーズ」で、実際に工事を行ったのは、2次下請けで旭化成の子会社である「旭化成建材」だ。
まず国土交通省によると、実際の杭打ち工事で、データ作成時に別のデータを流用するなどした旭化成建材については、その不誠実な行為はもちろん、工事現場に専任の主任技術者を設置しなかったことや1次下請けの業務を一括して請け負ったことなどが建設業法に違反するとしている。
次に、杭打ち工事を元請けから請け負った日立ハイテクノロジーについては、杭打ち工事を2次下請け業者に請け負わせて、施工には実質的に関与していなかったこと、工事現場に専任の主任技術者を設置しなかったことが建設業法に違反するとしている。
最後に、売主から直接工事を請け負った「元請け」の三井住友建設には、杭打ち工事について、下請けのこうした状況を把握していながら、下請け業者に法令違反に対する指導をしたり、是正を求めたりしておらず、国土交通省などへの通報も行っていないことが、建設業法に違反するとしている。
つまり、丸投げは建設業法違反だし、必要な技能をもった人をきちんと工事現場に置かなければダメということ。それについては、元請けにも責任があるということだ。
また、この事件を契機に発覚した、同様の施工データの流用等があったことが認められた8社についても、再発防止策などを報告するよう勧告がなされている。
どこが施工したかにかかわらず、マンションの購入者は、きちんとしたマンションを引き渡してもらえるよう売主に求めることができる。この場合のメインの売主は、三井不動産レジデンシャルだ。
マンションの基礎など構造上の重要な部分について欠陥があった(これを「瑕疵(かし)」という)場合、まずは売買契約に基づいて、売主にマンションの補修や損害賠償などを求めることができる(これを「瑕疵担保責任」という)。
さらに、2000年4月に施行された住宅品質確保促進法(品確法)により、新築住宅の場合は構造の重要な部分についての欠陥は、引き渡しから10年間瑕疵担保責任を負うことが義務付けられている。つまり、マンションの購入者は売主に対して、マンションの補修や損害賠償、住むこともままならないレベルの重大な欠陥なら契約の解除も求めることができる。
このマンションは2007年に竣工しているので、10年間の瑕疵担保責任の対象になる。売主は購入者全員に対してこうした責任を負って、適切な対処をしなければならない。
耐震偽装問題を契機に、売主に資力がなくて責任を全うすることができないということのないように、2009年10月以降に引き渡す新築住宅の売主は、保険加入などが義務付けられている。このマンションは、対象外ではあるが、売主が業界大手ということで資力がなくて倒産ということは考えにくい。
不誠実な施工会社に対しては、発注した売主が責任を追及することになるが、これについては購入者の関与外だ。購入者は、売主にどれだけ誠意ある対応を求められるかがポイントになる。
売主の三井不動産レジデンシャルは、早い段階から、「全棟建て替え」まで対応する用意があるとマンションの管理組合に伝えていた。マスコミの報道によると、管理組合が行った全戸アンケートに対して、9割近くが全棟建て替えを希望しているということだ。
今後建て替えが決議された場合には、退去・再入居の2度の引越しや売却して別の新居を求めることになり、住んでいる人が望んだ安定した生活は続けられないことになる。こうした事態を招かないように、国の適切な指導や業界自身による体質改善など、抜本的な対応を望みたい。