「経営」という言葉を国語辞書で見てみると、意味の一つに「事業目的を達成するために、継続的・計画的に意思決定を行って実行に移し、事業を管理・遂行すること。また、そのための組織体。」とある。
もちろん、マンションの住民が営利事業をするわけではなく、管理組合のあり方が変わるということ。つまり「住民経営マンション」とは、「マンションの住民、具体的には管理組合が主体で、資産価値の維持や住み心地の改善のために意思決定を行い、管理・遂行する」ということのようだ。
「SUUMO」編集長池本洋一氏によると、マンションについては、大規模修繕のための積立金の不足懸念、理事会や総会への参加意欲の低さ、住民同士の関係性の低さ、住民の高齢化等の将来不安といった課題があるという。
一方で、マンションを「資産」と考える人が増加したり(画像1のグラフ参照)、積極的にマンションの管理に関与する住民が出てきたりといった兆しがあり、マンション管理のあり方が、管理会社主導型から住民経営型に変わっていくというのが2016年のトレンド予測だ。
池本氏は、トレンドを感じさせる事例をいくつか紹介している。
住民経営型の管理を実践しているマンションの事例として、「ブラウシア」と「有明マンション連合自治会」を紹介している。
「ブラウシア」は2005年に竣工した438戸の大規模マンション。東日本大震災を契機に管理会社任せではなく、管理組合が主体に運営していこうと、『ブラウシア理念』=「ブラウシア管理組合は、強固なコミュニティをベースとし、終の棲家として充実したマンションライフを実現する」をつくり、この理念のもとにビジョンや行動指針、理事会役員の活動方針を定めている。
その結果、マンションの長期修繕計画を30年から54年に引き延ばし、修繕積立金を増額したり、クリスマスや夏祭り、大消防訓練などのコミュニティ活動を積極的に行い、新規入居者向けのオリエンテーションを実施したり、公式ホームページを独自に作成したりといった成果を生み出している。
「有明マンション連合自治会」は、有明エリアにある5つの大規模マンションの管理組合が連合した組織で、住民相互の親睦を深める運動会などを開催したり、江東区と東京都交通局に要望して、バス便の増設にこぎつけるといった活動をしている。
管理会社以外にも、コミュニティ形成の活動をサポートする第三者機関が登場していたり、マンション管理会社の業界団体(マンション管理業協会)が、マンションライフの充実や管理向上の成功事例を集めたマンションライフ総合支援サイト「マンションのWa」を運営しているといった事例も紹介された。
最後に池本氏は、「マンション選びで立地が重視される傾向にあるが、『住民経営度が高い』=当事者意識を持つ住民による経営視点のマンション管理がなされているかが、新しい価値基準になりうる」と締めくくった。
マンションが抱える個別の課題を解決していくためには、住民の合意が図りやすいコミュニティの形成や、資産価値を維持するためのマンションの付加価値を上げる取り組みが欠かせない。これを住民が主体的に取り組む事例が増えるというのが、2016年の見立てだ。
それを後押しするキーワードとして、池本氏は何度も「パラレルキャリア」という言葉を挙げた。職場でのキャリアに加え、もうひとつの活動の場を持つこと。ここでは、管理組合活動に参加することだが、こうしたパラレルキャリア志向が強まることもカギになっていくようだ。
その他の領域については、次の通り。
○2016年のトレンド予測キーワード
「美ンバウンド」(美容領域)
「多国籍スクラムバイト」(アルバイト・パート領域)
「横丁ルネサンス」(飲食領域)
「育自休暇」(社会人学習領域)
「相互選択型入試」(進学領域)
「スタディ・ライフ・バランス」(小・中学生学び領域)