目からウロコ! 「5W3H」を使った「自問自答」で文章をサクサク書く方法

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「文章を書くこと」と「自分との対話」に関係が?

あなたは、文章を書くときに、自分と対話をしていますか?

この問いに対する答えが「イエス」の方は、文章を書くのが得意で、人からよく「あなたが書く文章は分かりやすい」と言われているのではないでしょうか。

一方、答えが「ノー」の方は、もしかすると、文章を書くのが苦手で、人からよく「あなたが書く文章は分かりにくい」と言われているのではないでしょうか。

「文章を書くことと、自分と対話することに何の関係があるの?」と首を傾げている人もいるかもしれませんが、関係があるどころか、「文章を書くこと」は「自分との対話」そのもの。言うなれば“一心同体”です。

この感覚を理解したうえで、実際に「自分との対話」を増やしていくと、より読みやすく理解しやすい文章が書けるようになります。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「文章を書くこと」とは、自問自答をくり返すこと

「自分との対話」という言葉を、もう少し分かりやすく言い換えると「自問自答」です。つまり、自分自身に質問をして、その質問に答えていく。それをくり返すことによって文章は作られていくのです。

【例文1】

昨日、東京国際フォーラムで「ビジネスマンのための健康シンポジウム」を聴講しました。

たとえば、この文章を書くときにも、書き手の頭のなかでは、さまざまな自問自答が行われています。

自問:さて、何を書こう? 

自答:うーん、よし、シンポジウムを聴講したことを書こう

自問:いつ参加したの?

自答:昨日

自問:シンポジウムはどこで行われたの?

自答:有楽町の東京国際フォーラム

自問:何のシンポジウムだったの?

自答:「ビジネスマンのための健康」をテーマにしたシンポジウム

たった一文の裏にも、このような自問自答が行われているのです。もちろん、頭のなかで行っている自問自答は、ほとんどの場合、無意識かつ超高速です。自問自答している自覚がないのも無理ありません。

いずれにしても、文章を書くときに自問自答しているのは事実です。自問自答をせずに、人が文章を書くことは、おそらく不可能でしょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

質のいい自問自答が、質のいい文章を生み出す

例文1程度の文章であれば、無意識の自問自答で書けるはずです。ところが、それなりに“こってり”と文章を書かなくてはいけないケースでは、残念ながら「無意識頼み」というわけにはいきません。

読む人の興味を引き、なおかつ説得力のある文章を書くために、“無意識”ではなく、“意識的”に自問をする必要があるのです。たとえば、「シンポジウムで何か学びはあった?」といった質問をぶつけていかなければいけません。

自問:シンポジウムで何か学びはあった?

自答:いくつかあったけど、とくに痛感したのが「睡眠の大切さ」だね

このように、自問に答えることによって、次のような文章が書けるようになります。

【例文2】

昨日、東京国際フォーラムで「ビジネスマンのための健康シンポジウム」を聴講しました。何より痛感したのが「睡眠の大切さ」です。

自問自答した結果、文章に重要ポイント(「睡眠の大切さ」を痛感したこと)を盛り込むことができました。

では、さらに話を深めるべく、次の自問に移ります。

自問:ところで、なぜ睡眠が大切なの?

自答:傷ついた細胞が睡眠中に修復されるから。また、細胞が活性化して免疫力が高まるから

この自問自答の結果を文章に加えます。

【例文3】

昨日、東京国際フォーラムで「ビジネスマンのための健康シンポジウム」を聴講しました。何より痛感したのが「睡眠の大切さ」です。昼間の活動で傷ついた人間の細胞は、睡眠中に修復されるといいます。細胞が活性化すると、免疫力も高まるそうです。

さらに自問自答を続けていきます。

自問:では、睡眠が不足すると、どうなるの?

自答:細胞が修復されないため、肌、内蔵、脳(思考)、筋肉など、体にあちらこちらに不調を来しやすくなる。また、免疫力が低下して風邪や病気にもなりやすくなる

自問:シンポジウムで得た学びを、今後の自分の生活にどう活かす?

自答:これまでは睡眠を軽んじてきたけど、元気に仕事を続けるためにも、これからは、どんなに忙しくても、1日最低6時間の睡眠を確保しようと思う

【例文4】

昨日、東京国際フォーラムで「ビジネスマンのための健康シンポジウム」を聴講しました。何より痛感したのが「睡眠の大切さ」です。昼間の活動で傷ついた人間の細胞は、睡眠中に修復されるといいます。細胞が活性化すると、免疫力も高まるそうです。この修復が阻害されると、肌、内蔵、脳(思考)、筋肉など、体にあちらこちらに不調を来しやすくなるほか、免疫力が低下して風邪や病気にもなりやすくなるといいます。元気に仕事を続けるためにも、これからは、どんなに忙しくても、1日最低6時間の睡眠を確保するつもりです。

自問自答をくり返すことによって、例文2や3よりも、文章に深みと説得力が備わりました。もしも「では、睡眠が不足すると、どうなるの?」「シンポジウムで得た学びを、今後の自分の生活にどう活かす?」という自問をしなければ、例文4のような文章は書けなかったはずです。良くも悪くも、自問自答の差は、文章力の差に置き換わるのです。

自問の基本は「5W3H」です

自問の基本は「5W3H」です。ご存知の方も多いと思いますが、「5W3H」とは、情報を伝えるときや、情報を掘り下げるときなどに使える質問ツールです。

■When(いつ/期限・時期・日程・時間)

■Where(どこで/場所・行き先)

■Who(誰が/担当・分担) 

■What(何を/目的・目標)

■Why(なぜ/理由・根拠)

■How(どのように/方法・手段)

■How many(どのくらい/数量)

■How much(いくら/費用)

伝えるべき情報を「5W3H」で掘り下げることによって、文章作成に必要な情報が手元にそろいます。ここまで紹介してきた自問も、すべてこの「5W3H」をベースにしています。

自問:さて、何を書こう? (What)

自問:いつ参加したの?(When)

自問:シンポジウムはどこで行われたの?(Where)

自問:何のシンポジウムだったの?(What)

自問:シンポジウムで何か学びはあった?(What)

自問:ところで、なぜ睡眠が大切なの?(Why)

自問:では、睡眠が不足すると、どうなるの?(What)

自問:シンポジウムで得た学びを、今後の生活にどう活かす?(How)

「5W3H」を使って自在に自問できる人は、書くべき材料を手元にそろえるのが得意な人です。逆にいえば、「書くべき情報がない」と途方に暮れたり、人からよく「何が言いたいのかよく分からない」と指摘されたりする人は、「5W3H」を使って意識的に自問する必要があります。

メール文章も、自問自答がカギを握る

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自問自答は、仕事で使うあらゆる文章作成に有効です。たとえば、毎日活用するメールでのやり取りにも使えます。

次の文章は、部下の木村さんが、上司に送ったメールです。

木村です。行ってまいりましたが、残念ながら、いい返事がいただけませんでした。提案内容を見直して、改めてご連絡します。

このメールを見た上司は「ん、何のことだ?」と表情を曇らせました。

木村さんは伝えたつもりでも、上司には伝わっていない……これでは本末転倒です。時間と労力のムダですし、取り返しの付かないミスやトラブルにつながる恐れもあります。伝わらなかった原因は、木村さんの「言葉足らず」、ひいては「自問自答不足」にあります。自問自答をせずに文章を書くと、このような「伝わらない悲劇」が生まれるのです。

では、改めて自問自答してみましょう。上司への報告メールですので、何はさておき「5W3H」を使って、きちんと基本情報を手元にそろえることが大切です。

■When(いつ?):昨日4月5日

■Where(どこで?):取引先のD社

■Who(誰がいい返事をしなかったのか?):D社の進藤課長

■What(何の返事?):新商品Yの在庫管理委託のお願い

■Why(いい返事をしなかった理由は?):採算が合わない(在庫管理のコストがかかりすぎる)

■How(どのように対応する?):在庫管理に必要な人員(パート)の人件費を弊社で持つ

■How many(パートを何人雇う?):1人(1日7時間、月20日稼働)

■How much(パート代にいくらかかる?):1カ月で約12万円

答えを導き出したら、そのなかから必要な情報を選択して、メールを修正します(不要な情報を盛り込む必要はありません)。

木村です。新製品Yの在庫管理委託の件ですが、D社の進藤課長からいい返事がいただけませんでした。在庫コストがかかりすぎて採算が合わないとのことです。在庫管理に必要なパート1名の人件費をうちで持てるようなら承諾いただけるかもしれません。いちど提案内容を見直してみます。

メールをするときには、受信者がどんな情報を受け取りたがっているか(知りたがっているか)、どんな情報を受け取れば喜ぶかをよく考えたうえで、「5W3H」で自問自答を行います。好き勝手に自問自答するのではなく、相手(読み手)の立場を考えて自問自答することが大切です。

いわゆる「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」のメールでは、とくに言葉足らずにならないよう注意しましょう。情報が不足したメールは、読み手の負担になるほか、ミスやトラブルの原因にもなりかねません。

商品やサービスの宣伝・広告・セールス文にも使える!

自問自答は、商品やサービスの宣伝文や広告文、カタログやリーフレット、ウェブ上でセールス文章を書くときなどにも、強力な効果を発揮します。

なぜなら、消費者や見込み客が知りたい情報を盛り込むほか、消費者が抱いている疑問や質問に丁寧に答えることによって、読む人の納得度が高まるからです。納得度が高まれば、当然、商品やサービスを購入する人が増えます。

逆に、知りたい情報が盛り込まれていない、あるいは、自分が抱えている疑問や質問の答えが盛り込まれていない場合は、安心感や信頼感が得られにくくなるため、商品やサービスの購入につながりにくくなります。

この商品・サービスについて、一般消費者はどんな疑問を持っているだろうか? どんなことに不安を感じているだろうか? それらを具体的に考えることによって、自分にぶつけるべき自問が見えてきます。

以下は、架空の商品「あったか非常食キット」の説明文を書く際の自問自答です。頭のなかで行われるやり取りを、実況中継でお伝えします。

自問:通常の非常食と何が違うのですか?

自答:簡単に食材を温めることができます

自問:火を使うのですか?

自答:いいえ。付属の加熱缶に薬剤を投入するだけで、すぐにお湯が沸きます。この袋を使って「おじや」を温めていただきます

自問:それにしても、非常時に、わざわざ温かい食べ物が食べたい人なんているのでしょうか?

自答:温かい食べ物を食べる目的は、からだを温めるためです。冬場であれば、からだを温めることによって、体温の低下や凍死のリスクを減らせます。また、温かい食べ物には気持ちを前向きにする作用もあります

自問:食料はどれくらい入っていますか?

自答:大人1人が72時間生存するために必要な量が入っています。具体的には、おじや300g×1袋、チキンサラダ缶1個、防災ビスケット1缶、ミネラルウォーター500ml×3本です

自問:食料だけのキットなんですね?

自答:いえ、食料のほかにペンライトとホイッスルも入っています

自問:ところで……なぜ72時間なのですか?

自答:災害発生から72時間が経過すると生存率が急激に低下するというデータに基いています

自問:袋の大きさと重さはどれくらいですか?

自答:縦45×横30×厚さ8cmです。リュックにも入るコンパクトさです。重さは1.3kg。小学校の低学年でもムリなく運べます。

自問:もしも水に濡れたらどうなりますか?

自答:パッケージは完全防水仕様です。浮力もあるため、水没する心配もありません

自問:そのほかに何か特徴はありますか?

自答:暗闇でも見つけやすいように、袋には反射シールをつけています

自問:食料の保存期間はどれくらいですか?

自答:4年の長期保存が可能です。

このように、自問するときには、読者(消費者、ユーザー、クライアントなど)の代りにするという意識が大切です。読者の疑問や不安が解消されなければ、当然、商品やサービスを購入する確率は下がります。もちろん、質問に答えられないからといって、そのまま放置するのはもってのほか。分からないときは調べるなどして、必ず答えを出さなければいけません。

厳しい(鋭い)質問にもしっかり答えることができれば、実際の文章にしたときに、読む人から「なるほど!」と納得度の高い感想を引き出すことができます。そうなると、おのずと商品やサービスの購入につながりやすくなります。

仕事でのアウトプット全般に好影響を与える!

勘の言い方はもうお気づきだと思いますが、「5W3H」による自問自答は、文章作成に限らず、アウトプット全般に使えます。プレゼン、スピーチ、会議での提案や主張、営業トーク、接客のおもてなし……などなど。

もちろん、社内における上司や部下とのコミュニケーションでも、自問自答のスキルの有無が大きくものをいいます。自問自答のスキルが低ければ、必要な情報や気持ちを相手に伝えることができず(=理解してもらえない)、自問自答のスキルが高ければ、情報や気持ちを相手に伝えることができます(=理解してもらえる)。

自問自答のスキルは、使えば使うほど磨き上げられていきます。ふだん何気なく連絡用のメモを書くとき、あるいは、ふだん何気なく会話をするときにも、「5W3H」を使った自問自答を心がけることで、過不足なくアウトプットする筋肉が鍛えられていきます。

幸いにも、対面による瞬間的なコミュニケーションと異なり、文章によるコミュニケーションの場合、多かれ少なかれ考える時間があります。慣れるまでは、自問自答のやり取りを手帳やノートに記してもいいでしょう。「5W3H」を使った自問自答を習慣化して、より読みやすく理解しやすい文章を紡いでいきましょう。

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著者:山口拓朗

『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』著者。

伝える力【話す・書く】研究所主宰。「伝わる文章の書き方」や「メールコミュニケーション」「キャッチコピー作成」等の文章スキルをテーマに執筆・講演活動を行う。自問自答のやり方は『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)にも掲載。モットーは「伝わらない悲劇から抜けだそう!」。

山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/

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