まず、「持家長期継続居住者の住宅に対する意識調査」の予備調査では、50歳以上で20年以上継続居住している人の今後の住み替え意向は、約16%が「住み替える派」、約84%が住み替える意向のない「住み続け派」だった。
この中から住み替え派(568件)、住み続け派(542件)に対して本調査を行い、「住み続ける、住み替えるためのコスト」に注目して分析したものが、今回の調査結果だ。
「住み続け派」のうち、一戸建ての約29%、マンションの約25%が、リフォームや建て替えなどを検討している。母数は少ない(102件)が、リフォームのための平均予算額は約390万円(マンションで340万円、一戸建てで451万円)。リフォーム費用の捻出・調達方法を尋ねたところ、最多は「貯蓄」の79.4%で、2番目の「借入金」の14.7%に大差をつけ、貯蓄を切り崩してリフォーム費用に充てる人が大半となった。
「住み替え派」の住み替え先の住宅では、持ち家(一戸建て・二世帯住宅・マンション)が約79%と大半で、賃貸や高齢者向け住宅は約19%だった。持ち家に住み替えるという回答者に、予算を尋ねると平均で3753万円となり、新築・駅近を希望するほど予算が高くなる傾向が見られた。
さらに、持ち家に住み替える資金の調達方法を尋ねると、「貯蓄」の62.4%に加え、「現在の住まいの売却」も59.3%と多く、持ち家に住み替える際に今の自宅の売却価格が重要なカギになることが分かった。
では、20年以上住んだ持ち家の売却価格の相場を把握しているのだろうか?
住み替え意向の有無にかかわらず、売却価格の把握状況を尋ねると、「具体的な売却価格を把握している」(4.8%)、「おおむねお相場を把握している」(52.8%)と、約58%がある程度の把握をしている。これは一戸建てよりマンションのほうが、また同じ住居別なら住み替え派のほうが把握している割合が高くなる傾向にある。
どうやって相場を把握しているかについては、「近隣物件の不動産広告」が64.5%と最多で、「不動産業者による査定や情報提供」(31.3%)、「インターネット」(19.6%)、「ご近所からの口コミ」(17.2%)と続く。
たしかに、不動産広告やインターネットで近隣の類似物件の売り出し価格を知ることは可能だ。注意したいのは、掲載されているのは売り出し価格であって、実際に売買が成立した価格ではないということ。売買の交渉過程によって、成約価格は売り出し価格より下がることが多いので、売り出し価格より低めに把握することが大切だ。
特に一戸建ては、売買事例が少ないことに加え、似たような場所で同じような広さだとしても、道路との位置関係や土地の形状などの細かい条件によって、価格設定の幅が大きくなる。想定した額より高かったり安かったりすることも多い。
やはり正しく相場を把握するには、数多くの売買事例を見ている不動産会社に、査定や情報提供をしてもらうのがよいだろう。ただし、高い査定額を付けて、売却の委託を受けようという不動産会社も中にはいるので、複数の不動産会社から聞くようにしよう。
住み替えを検討する場合は、今の持ち家の売却価格を的確に把握できていないと、希望通りの住まいに住み替えができない可能性がある。長く住んで愛着のある自宅は、高い価値があると思いがちなので、注意するようにしてほしい。