みなさんこんにちは、タベアルキストのWakuiです。今回は縁あって、メシ通で連載することになりました。
タベアルキストとは、「食べる幸せ、探す喜び」をモットーにした、実名制の食べ歩きマニアのコミュニティ「Tabearukist Association」に所属する、年間300軒以上の外食をしているメンバーの呼称です。その一食、一食を、お腹も心も満たされる幸せな時間とするため、「一般人による一般人のためのグルメ検証」を旗印に、公正中立な立場から「食べる価値のある逸品」の情報を発信しています。
このメシ通でも、タベアルキストとしてのポリシーに従い、「食べる価値のある逸品」の情報を発信していきたいと思います。
名店巡礼
名店巡礼とは、タベアルキストが、わざわざ食べに行く価値のある逸品を提供しているお店を、ありとあらゆる情報を駆使してセレクトし、実際に訪れ食べまくる究極の食べ歩きです。
1人一軒2,000円以内の縛りを設けて5軒のお店を巡りますが、そのジャンルは、居酒屋、焼鳥、もつ焼き、スイーツなど様々。その地域で必ず行っておきたいお店を選びます。
名店巡礼のセレクト店の定義は、贅沢でなく、日常的に食される庶民的で美味しいと評判の料理です。
そして我々タベアルキストは、下記誓のもと活動しています。
*名店巡礼の誓い*
- 毎回特定のエリアにフォーカスし、5軒の食べ歩きをします
- 日本全国のありとあらゆるグルメを食いつくします
- 他の意見に左右されることなく、その供された食事の真価を見抜きます
~名店巡礼 秩父編~
第1回目の巡礼先として、我々は「秩父」を選びました。
秩父は、長瀞のライン下りやハイキングなど話題のアクティビティが充実していて、しかも都心から約90分で行けるという利便性の良さもあり、評判のレジャースポットです。
豊かな自然の中で生まれる山や川の幸ももちろん素晴らしいのですが、札所が34カ所もあり、祭礼も多く行われる秩父では、いわゆる「ごちそう」となる郷土料理が充実していたり、大きなセメント工場があるため労働者向けの食事処が数多くあったりと、単なる観光地とはまたひと味違った食文化が味わえます。
そんな秩父エリアから5軒をセレクト。在来種にこだわって作る特産の蕎麦や、かつては猪、現在は豚を味噌漬けの保存食にする文化、秩父山渓の湧き水から作る天然氷など、秩父を満喫できるラインナップとなりました。
それでは名店巡礼「秩父編」、いってみましょう!
【閉店】1軒目:手打そば こいけ 逸品:せいろ
我々は8月某日秩父駅へ降り立ちました。天気はあいにくの曇り空でしたが、空気はとてもすがすがしく、さすが秩父といったところでしょうか。
今回の巡礼では、3名のタベアルキストで秩父の名店5軒を巡ります。1軒目はこちらの蕎麦屋さん。
国道でもある彩甲斐街道沿いに店を構える秩父の蕎麦を牽引してきた名店「手打そば こいけ」。
店屋は古びた一軒家で、全国の蕎麦好きにとって知らぬ人は居ないその名に反し、気付くことなく通り過ぎてしまうであろう至って地味な佇まいです。
年季が入った扉を開くと、そこには歴史を感じさせる飾り気のない空間が広がっていました。
店内にはテーブル席が5卓ほど並べられ、奥には四角い卓を囲む小上がり席があり、着飾らない蕎麦屋然とした空気が流れています。
貼り出されたお品書きには、蕎麦やうどんの他に天ぷらもなどの料理も書かれています。
平日の為か出足の鈍い日ではありましたが、さすが評判のお店なだけあり昼時には満席になっていました。
せいろ 880円
こちらの蕎麦は、各地の玄そばを石臼で自家製粉をした十割蕎麦。
水の美味しい秩父ならではですが、蕎麦打ちのみならず全ての工程において水にこだわっているとのこと。
うっすらと緑を帯びた端正な仕上がりで、ざるの上に蕎麦がふわっと盛られている。箸で持ち上げると、スッと気持ちよく持ち上がる隙のない蕎麦切り具合です。
味わえば、しっとりとした腰と弾力のある歯切れがあり、表面の滑らかさが心地よい。噛締めれば、より蕎麦の風味や甘味を楽しむことができます。
ツユは鰹出汁が効いたキリッとした甘みのない味わい。
砂糖は使用しないかえしですが、みりんが醸しだす微かな甘味が粋なツユをまとめています。蕎麦と合わせるとほんのりと鰹の風味が蕎麦に優しく働きかけます。
秩父蕎麦の食べ歩きは、まずこのお店からスタートしてもらいたいお店です。
お店情報
【閉店】手打そば こいけ
埼玉県秩父市野坂町2-14-34
0494-22-1610
11:00~15:00
火曜、水曜定休
執筆者:Masayuki Wakui
※このお店は現在閉店しています。
※飲食店の掲載情報について。
2軒目:野さか 逸品:豚みそ丼
お昼時には行列もできる豚みそ丼専門店「野さか」。
秩父名物の豚の味噌漬けを備長炭で香ばしく焼き上げ、特製の醤油ダレをまぶしたご飯の上に、豪快に盛り付けたパワフルな一品が食せます。
豚みそ丼 並盛り 900円(全てお味噌汁、お新香付き)
炭火で焼き上げられた豚肉は程よく脂もおち、思いのほかサッパリ。ふちの軽く焦げた部分がワイルドさを演出します。
醤油ダレのご飯とシャキシャキとしたネギの食感・香りも相性がよく、豚・ネギ・米のゴールデントライアングルが完成。瞬く間にぺろりと完食してしまうでしょう。
全体的に味が濃いめになるのでネギだくの選択は正解でした。
お肉の種類はロースとバラの2種類。単品か合盛りが選べますが、今回は合い盛りで食べ比べ。
タベアルキスト3名の軍配は、味噌の旨味をしっかり吸いこみ、少し繊維が締まったロースにあがりました。豚丼と言えば、北海道帯広のものが有名ですが、それとは似て非なる野さかの豚みそ丼。
秩父の地に長く根付いた、豚と味噌の文化が感じられるご当地グルメとして成立しています。
しっかりお昼ご飯を食べたいとき、お蕎麦だけじゃ物足りない、そんなときにオススメの1店です。
お店情報
野さか
埼玉県秩父市野坂町1-13-11
0494-22-0322
11:00~15:00
月曜定休
執筆者:Kazushi Kikutani
3軒目:阿佐美冷蔵 金崎本店 逸品:蔵元秘伝みつのかき氷
3軒目はこちら。
1890年創業という「阿佐美冷蔵」は、全国でも数少ない天然氷の蔵元のうちの1軒。
金崎本店が上長瀞の駅からほど近い場所に位置しています。
近年のかき氷ブームもあいまって、蔵元直営のかき氷店には、貴重な天然氷のかき氷を求めて集まる人々が列をなし、夏場の週末にはなんと3時間を超える行列ができることもあるそう。
秩父エリアの新しい立ち寄りスポットとして、メディアなどでも積極的に紹介されている影響もあるかもしれません。
メニューには6種類のかき氷が。
イチオシの「蔵元秘伝みつのかき氷(1,000円)」をはじめ、旬の果物を使った自家製シロップや抹茶などがラインナップ。
蔵元秘伝みつのかき氷 1,000円
列に並んでいる間にオーダーを決め、席に着くとすぐに運ばれてきました。
シロップはあとがけ。まずは氷そのものをを味わうのがいいみたい。
高く、山のように形成されたかき氷をひとさじすくった感覚で、雪のようにふんわりやわらかな氷であることがわかります。
かどのないまろやかなくちあたりは、宝登山から流れ出る伏流水のミネラルを含んでいるため。
氷を味わったら蜜をかけて、シロップとのバランスを楽しみます。
和三盆を煮詰めた、スッキリとしてコクのある秘伝みつをかけていただく「蔵元秘伝みつのかき氷」。
シロップだけでもなめていたくなるような、上品な甘さに夢中になります。
お店情報
阿佐美冷蔵 金崎本店
埼玉県秩父郡皆野町金崎27-1
0494-62-1119
10:00~17:00
木曜定休
執筆者:Kae Suda
4軒目:みやま 逸品:ブルーベリーレモンジェラート
4軒目はこちら。長瀞駅から石畳へと続く商店街の中程にあるレトロなカフェ「みやま」でジェラートを。
秩父の素材を使い、職人が丁寧に作り上げたジェラートです。
公式ホームページによれば、ジェラートを作る機械や、コーンを焼く機械など、本格的な自家製ジェラート作りの設備が整っているようですが、現在はジェラート職人の方が不在のため、高崎のジェラテリアに依頼して作ってもらっているとのこと。
それでもケースには常時20種類の様々なジェラートが並びます。
ミルクは秩父の搾りたての牛乳と旬のフルーツや野菜などを使い、低温殺菌、無添加、無着色で作られるそう。素材の味が生きたジェラートです。
ブルーベリーレモンジェラート 300円
お店の方のいち押しである「ブルーベリーレモン」と季節ならではの「とうもろこし」を手焼きのコーンで。
レモンが効いて爽やかな甘酸っぱさの「ブルーベリーレモン」と、滑らかなのに粒つぶまでイメージできるクリーミーな「とうもろこし」の組み合わせは、なかなかのコントラスト。
フルーティーとミルキーのそれぞれ違ったタイプの味わいを堪能できます。アイスコーンはワッフルタイプで、お店で焼いていて、クッキーのような甘さのあるコーンでした。
夏の間は、見渡せばどこも阿佐美冷蔵のかき氷のたれ幕がそこかしこにありますが、その中でもしっかりとした存在感を放つジェラートは、バリエーションが多い上に味の組み合わせも面白く、一年を通して楽しむことができるのが素敵ですね。
お店情報
みやま
埼玉県秩父郡長瀞町長瀞456
0494-66-3318
9:30~18:30
無休
執筆者:Kae Suda
5軒目:高砂ホルモン 御花畑 逸品:豚ホルモン盛り合わせ
5軒目、最後のお店です。
お店に近づくと見えてくるのが「味で勝負する高砂ホルモン」という看板。路地裏にある店舗の佇まいを見ると、「なるほどね」と納得。
昭和の時代、秩父の一大産業であったセメント業の労働者たちの胃袋を満たしていた、そんな時代背景を知ってから伺うと、その外観も素晴らしい「味」になります。
18時前にも関わらず、店内は楽しんでいる方が多数。空きテーブルは予約席の札で埋まっています。伺う際は是非予約をしてからをおススメします。
メニュー構成は至ってシンプルで、ホルモン数種とキュウリとキャベツ、ライスとお酒。
おススメを!とお願いして提供されたのが、レバー・ホルモン(白)・カシラ・タン・ハツ・ネック・コブクロ・ナンコツの全種盛り+ハラミ。
いずれも艶々としていて、見るだけで鮮度の良さが伝わってきます。
これを炭が赤々と燃える七輪で焼き、唐辛子とニンニクを効かせた特製のピリ辛のタレで頂いていきます。
どの部位もホルモン特有の臭みは全くなく、それぞれの味と食感の違いを存分に楽しむことができます。
この日、特に自信があるとのことだったハツとレバーの品質はかなりのもの。「鮮度」と「下処理」という美味しいホルモンに求められる2つの絶対条件を高いレベルで満たすことの凄味を感じることができました。
食べてもなかなか減っていかないボリューム。そして、思わず聞き直してしまうほど良心的なお値段。
このお店は、西武鉄道の秩父観光ポスターに取り上げられていますが、確かに秩父まで観光に行く目的になる、満足を感じられるお店でした。
お店情報
高砂ホルモン 御花畑
埼玉県秩父市東町30-3
0494-23-5858
17:00~21:00
火曜、木曜定休
執筆者:Kazushi Kikutani
名店巡礼 秩父編まとめ
今回我々がセレクトしたこの5軒は、いずれも味だけでなく、その店の持つ秩父らしさも含めて、訪問する価値のある店でした。
訪れて感じた秩父のグルメキーワードは「水」と「豚」。この2つを軸にそれらを引き立てる味噌などの調味料や、山の幸が入ってきます。
1軒目の蕎麦と3軒目のかき氷はまさに水の良し悪しが如実に出る料理ですし、2軒目と5軒目は両方訪れることで、豚の美味しさを余すところなく食べつくせます。
今回は訪れませんでしたが、川魚やウイスキーなど「水」に縁深いグルメや、もう一つのご当地グルメ、ワラジかつ丼など豚を楽しめる料理もまだまだあります。
観光地ということで、そこかしこに「名物」の幟旗が立ち、一瞬何を食べればよいのか戸惑ってしまうかもしれませんが、是非、上の2つのキーワードを意識して秩父グルメを味わってみてください。
さて、次回の名店巡礼は、千葉の「内房」です。お楽しみに!
書いた人:
タベアルキスト
タベアルキストとは、「食べる幸せ、探す喜び」をモットーにした実名制の食べ歩きマニアのコミュニティ「Tabearukist Association」に所属する、年間300軒以上の外食をしているメンバーのことを「タベアルキスト」と言います。その一食、一食を、お腹も心も満たされる幸せな時間とするため、「一般人による一般人のためのグルメ検証」を旗印に、公正中立な立場から「食べる価値のある逸品」の情報を発信しています。
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