<社説>15回顧 沖縄戦70年 不戦と「戦後」継続を誓う


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 ことしは、おびただしい数の住民を巻き込んだ凄惨な地上戦があった沖縄戦から70年の節目だった。

 記憶の風化が懸念される中、集団的自衛権の行使容認やそれに伴う安全保障法制の成立など、沖縄が再び戦火に巻き込まれかねないと危ぶむ声が県内で広がった。
 沖縄戦の教訓を無にするかのような動きにあらがい、多くの県民が不戦の誓いを新たに刻んだ。沖縄の普遍的価値観を表す「命どぅ宝」を礎に、「戦後」をいつまでも継続する決意を強めたい。
 圧倒的な戦力を持つ米軍との戦闘や日本軍による住民虐殺を含め、防衛隊を含めた12万2千人の県民が犠牲になった。本土決戦への時間を稼ぐ「捨て石作戦」で辛酸をなめた体験を語ることができる世代が少なくなっている。
 戦後70年の「慰霊の日」を前に本紙と沖縄テレビが実施した県民世論調査で、「もっと戦争体験を語り継ぐべきだ」が75・4%に達し、「現在の程度で語り継げばよい」の19・4%を大きく上回った。
 県民の9割近くが戦後生まれとなったが、沖縄戦体験の継承は世代や思想信条を超えた共通認識となって息づいている。一方で、継承への課題は山積している。
 多くの観光客や修学旅行生が足を運ぶひめゆり平和祈念資料館(糸満市)は元ひめゆり学徒による館内講話が3月に終了した。80代後半から90代の証言員の体力を考慮しての決断だった。
 同資料館で戦後世代の説明員による講話が始まった。沖縄戦体験の発掘は市町村史レベルから字史レベルでも広がりを見せている。沖縄戦継承の幹を太くする新たな取り組みを拡充せねばならない。
 県教育庁が沖縄戦遺跡の保護に向け、文化財指定に着手したことは評価できる。今も発見が続く戦没者の遺骨をめぐり、遺族を特定するDNA鑑定を可能にするため、県は全遺骨を焼骨せず、保管する方針に転換した。遺族の心情に配慮した妥当な措置である。
 沖縄戦の教訓は「軍隊は住民を守らない」であり、それは「軍の駐留が住民の犠牲を招く」と同義だ。70年前の沖縄戦と安倍政権が強権の度を強める辺野古新基地建設と地続きの問題であり、県民を軽んじる為政者の存在という共通点がある。
 沖縄を前線にした戦争につながる動きへの警戒感を研ぎ澄ませ、不戦を貫く声を上げ続けたい。