住まいの雑学
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榎並 紀行(やじろべえ)
2016年2月13日 (土)

1万mタワー、空中都市…。本当にあった「トンデモ都市計画」

1万mタワー、空中都市…。本当にあった「トンデモ都市計画」
写真: iStock / thinkstock
国民が快適に、幸せに暮らせる都市をつくるのがオカミの仕事。古くは平城京の時代から、時の権力者や為政者による優れた都市計画が行われてきました。
しかし、なかには構想段階から「それは無理だろう」と首をかしげたくなる、大胆すぎる都市計画も存在したようです。
あまりに荒唐無稽だったり、予算がかかりすぎたりして立ち消えになった、“トンデモ都市計画”を紹介します。

エベレストを超える、1万mのバベルタワー

我々の常識の斜め上を行く都市計画。その多くは、1980年代後半から90年代初頭のいわゆるバブル期に数多く発案されています。バブルというイケイケの時代の全能感がそうさせてしまうのか、今思えば絶対ムリだろ! という、夢見がちなものが散見されます。

なかでも群を抜いてぶっとんでいるのが、「東京バベルタワー」と「空中都市ラピュタ」。そのネーミングだけで構想の斬新さは伝わるかと思いますが、実際の計画案は想像以上にファンタスティックです。というか、ほとんどSFです。

まず、1992年の地球環境サミットにて提唱された東京バベルタワー。その名の通り、バベルの塔さながら高さ1万メートルものハイパービルディングをつくろうという試みです。富士山どころかエベレストをも遥かに超える上空、飛行機が飛ぶ高度とほぼ同じ高さの建築物になるわけです。てっぺんの気温はマイナス50度に至るため、窓を開けるのも命がけです。

高さ1万メートルを実現するために必要な敷地面積は「東京の山手線の内側すべて」。建設費は3000兆円。つまり、東京都心はすべてバベル内におさまってしまうし、アメリカの国家予算の8倍強のお金がかかるわけです。スケールがでかすぎて、おとぎ話みたいですね。これ計画してたとき、きっと楽しかっただろうなー。

“土地を2階建て”にするラピュタ計画

次に「空中都市ラピュタ」。こちらもバブル期に想起された計画で、「現在の都市の上空31メートル付近に新しい地表面をつくり、土地を2階建てにする」というものです。

「土地を2階建てにする!」

にわかには意味が分からなかったので二度繰り返してみましたが、やっぱり分かんねえな。

まあ、ようするに「空にもういっこ土地をつくる」ってことですかね。「下界」の上に「空中都市」ができるってことですよね。うん、こいつはやばい!
空中都市の人間は下界を見下ろし、やっぱりこう言うんでしょうか。「見ろ、人がゴミのようだ」と。

空中都市の住居はすべて集合住宅になり、高層住宅群が10棟、中低層住宅が56棟。本当にこんなのが建っちゃったら、下界のタワマンのステータスが暴落しそうですね。

ちなみに、「ラピュタ」のプロジェクト名はジブリ映画のほうじゃなくて、『ガリヴァー旅行記』に出てくる架空の空中都市をイメージしているそうです。提案した大林組は2009年に開発した制震システムにも「ラピュタ2D」という名称をつけていますから、伝統的に冒険心を大事にする社風なのかもしれません。

と、いずれも夢のような計画でしたが、実現性はさておき当時は夢を見るだけの余裕があったということでしょう。経済的に豊かであれば、発想も豊かになるのもうなずけます。となると、筆者の発想が貧困なのは、リアルに貧困だからなのかもしれません。

ともあれ、こうしたある意味クレイジーな都市計画がまた出てくるくらい、もっともっと景気がよくなるといいんですけどね。

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