総売上58兆円と世界最大の企業グループとなった三菱グループ。経済誌でも特集が組まれるなどその強さの源泉に注目が集まっている。
三菱の結束力を示す中枢ともいえる「金曜会」では、三菱グループの主要企業29社の会長・社長が一堂に会し、昼食を共にする。この会は「あくまで親睦目的であり、メンバー企業の経営に干渉したり、グループとしての政策や経営戦略を討議決定する場所ではない」(三菱グループ全体の広報活動を行なう三菱広報委員会)という。
謎に包まれた会の様子を、実際に金曜会に出席したことのある人物の証言をもとに再現する。
金曜会は名前の通り、毎月第2金曜日に開かれている。午前11時45分を過ぎた頃、東京・丸の内の三菱商事本社ビルの地下駐車場に、各グループ企業29社のトップ48人を乗せた黒塗りのハイヤーが次々と滑り込んでくる。彼らが目指すのはビルの21階にある金曜会事務局。その内部にある「定例会用会議室」が舞台となる。部屋の中央には楕円形の大きなテーブルが置かれており、窓からは眼下に丸の内が一望できる。
会での席順は決まっていない。“長老”同士が固まらないように毎回くじを引いて決める。そのくじはゴルフ場のティグラウンドにあるような金属の棒で、その番号に従いトップたちは着席していく。当然、長老幹部と新人幹部が隣り合わせになることもある。
正午になると、世話人代表(現在は三菱商事の小島順彦会長)の挨拶で会が始まる。この日は東京會館から幕の内弁当が各席に運ばれた。しかし昼食会といえど、ゆっくり食べるわけではない。15分というわずかな時間で舌鼓を打つ。昼からの会合なのでソフトドリンクのみで、アルコールは出ない。メニューは簡単なコース料理や、少し趣向を変えてカツカレーだったこともあるという。