2011年12月15日

背景:
同じような習性や生活史を持った動物でも、体の大きさが大きく異なることがある。小さな動物はどのように似た習性や生活史を維持しているのだろうか。

要約:
スミソニアン学術協会の研究者によって、小さな蜘蛛の脳はその体に比べてとても大きく、体腔全体を占め脚まで広がっていることが分かった。

ハラーの法則によると、全ての動物は体が小さくなるほど脳の占める割合は大きくなる。例えばヒトの脳は体重の2~3%ほどしか占めていないが、小さな蟻の脳は15%ほどその体を占めている。

小型化が脳の大きさや行動にどのような影響を与えるのかという研究の一環として、大きなものから小さなものまで9種の蜘蛛の中枢神経系が測定された。すると蜘蛛は他の動物と同じく、小さくなればなるほど体に対して脳の割合が大きくなり、体腔のより広い部分を占めるようになるようだ。

パナマにあるスミソニアン熱帯研究所のWilliam Wcislo博士によると、小さな蜘蛛も大きな蜘蛛と同様に巣を張ったりといった複雑な行動をとるため、体が小さくなってもそれほど脳を小さくできるわけではない。彼らの観察した最も小さな蜘蛛は、脚の25%を含む体腔全体の80%に脳が広がっていたという。

小さく未成熟な蜘蛛は、膨れて変形した体に脳が詰まっている。脳細胞にも遺伝子の詰まった細胞核が存在するため、細胞自体を小さくできるわけではなく、また神経線維や軸索も、化学物質を運ぶ働きを維持するために細くすることはできない。そのためそれらを体全体へと広げる以外に選択肢はない。

また、脳細胞はとても大きなエネルギーを必要とするため、小さな蜘蛛は餌の大部分を脳のために消費しているのだろうと考えられる。

パナマやコスタリカの大きな生物多様性によって、彼らは小さな蜘蛛からその40万倍もの体重を持つ大きな蜘蛛まで、様々な種の脳を観察することができた。

補足:
体腔というのは、皮膚などの体壁と消化管との間にある、内蔵などが存在する部分のこと。

spiders' brains

元記事:
Whole New Meaning for Thinking On Your Feet: Brains of Small Spiders Overflow Into Legs
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/12/111212124707.htm

参照:
Rosannette Quesada, Emilia Triana, Gloria Vargas, John K. Douglass, Marc A. Seid, Jeremy E. Niven, William G. Eberhard, William T. Wcislo. The allometry of CNS size and consequences of miniaturization in orb-weaving and cleptoparasitic spiders. Arthropod Structure & Development, 2011; 40 (6): 521 DOI: 10.1016/j.asd.2011.07.002

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