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嘉屋 恭子
2015年11月5日 (木)

学校建設費の一部をマンションが負担、江東区の協力金制度とは

大規模マンションが誕生! 小学校の建設費はどうなるの?
写真:iStock / thinkstock
大規模マンション、タワーマンションが誕生すると、人が増えて小・中学校の建設・増改築が必要になる、なんて話を聞いたことはないだろうか。その場合、小学校や中学校などの公共施設の建設費用は誰が負担するのか? 「公共施設整備協力金」を導入している、江東区に取材した。

30戸以上のファミリー向け住戸を含むマンションが対象に

たとえどんなにすばらしいマンション・建物が完成しても、周囲に小・中学校や保育園、公園、道路などのインフラがなければ、生活は成り立たない。とはいえ、公共施設を建設するのはタダではない。そんなとき建設費はどう捻出しているのか。ピーク時には一年間に約1万戸分ものマンション建設が申請されたという東京都江東区に話を伺った。

「江東区の場合、急増するマンションのインフラ建設に対応するため、公共施設を整備するための協力金を開発会社の方にお願いしています」と話してくれたのは、江東区都市整備部住宅課長の岩瀬亮太さん。この協力金は、30戸以上のファミリー向け住戸を含むマンションであれば、分譲・賃貸問わず、依頼しているのだそう。ただし「税金」ではなく、協力をお願いする「寄付金」という位置づけだ。竣工(建物完成)時に納めてもらっているという。

「もともと昭和40年〜50年代の高度成長期には、首都圏の他の自治体でも同様の負担金があったと聞いています。ただ、江東区では一時期、開発が落ち着いたので、この負担金がなくなったこともありました。しかし、ご存じのように2000年代に入り、江東区内で大規模マンションの開発が続き、『寄付金』として“復活”させたというのが、大きな流れです」(岩瀬さん)

ちなみに、2014年度(平成26年度)で、13棟が対象となり、納入された金額は12億7190万円。平成27年度の小学校建設・増改築予算がおよそ70億円程度というから、約18%に当たる計算に。いかにその影響が大きいか分かるだろう。

寄付金は、小・中学校や保育園、公共施設の建設に充てられる

では、この「公共施設整備協力金」が使われるのは、小学校だけなのだろうか。

「基本的には、小・中学校新築や増改築、保育園などの整備に使われていますが、最近では、豊洲シビックセンターの建設にも使われました。そのほかにも道路や街頭の整備などにも協力金を使用していますね」と岩瀬さん。なるほど、小学校だけでなく、ほかのインフラにも使われているなら、子どもなし世帯で負担するのも、(変な言い方だが)モトはとれているといえる。ちなみに、この協力金は、寄付金という位置づけのため、毎年積み立てていき、必要なときに取り崩して使用するのだという。

「現在、区内全域で人口が増えており、小・中学校で新設・増改築が続いています。子どもが増えるのは大変喜ばしいのですが、整備にはお金が必要。正直な話、この協力金は本当にありがたい存在です」と岩瀬さん。江東区の中長期計画によると、2019(平成31年度)までに、区内の小学校数は46校になる予定で、これから新規開校する計画もあるのだとか。

最後に気になる本題、「公共施設整備協力金」125万円はマンション価格に上乗せされているのだろうか。

「そこまでは、私どもではなんとも分かりません」と岩瀬さんはいう。ただし、この協力金は10年ほど前から導入されているため、開発会社には理解を得られていて、今後も継続させていく方針だという。

1戸当たり125万円(※)はけして安い金額ではないが、一方で取材をしてみると町の整備に欠かせないことが分かった。インフラの利用と負担は難しい問題だが、個人的には子どもがいると利用頻度・接触頻度が増えるため、納得感が増すように思う。

また、新築マンションの建設ラッシュが続いている江東区だが、一方で区内の既存マンションの老朽化なども問題になっているという。区の住宅課では、こうしたマンションに対し、アドバイザーの派遣や共用設備修繕のための助成などを行っているという。住む人が必要に応じた負担をすること、また行政の適切なサポートにより、住みよい街はつくられていくのではないだろうか。

※世帯用住戸30戸以上のマンションにおいて、30戸目から1戸当たり125万円。125万円/戸×(世帯用住戸数-29戸)

●取材協力・参考
・江東区都市整備部 住宅課 住宅指導係/江東区住宅支援事業
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