Jリート(不動産投資信託)が好調だ。2014年12月初旬まで850から1000の間で低迷していた東証リート指数は、2015年5月時点で1900前後まで上昇した。上昇の大きな理由となったのは2014年10月末に公表された日銀の追加金融緩和だ。Jリートの買い入れ額がそれまでの約3倍に引き上げられ、年間900億円となった。これをきっかけにして、東証リート指数は12月以降、急激に上昇したわけだ。
ただ、一方的な価格上昇がありえないのもJリートの特徴だ。Jリートの投資家は、分配金利回りを重視しているからだ。価格が上昇すれば、その分、配当利回りが下がるため、投資家の買い意欲は衰えてしまう。
2015年5月8日時点の予想分配金利回りは平均3.17%。これに対して、10年国債の利回りは0.42%でその差は2.75%。機関投資家は、3%以上の利回り差を投資判断にしているといわれ、そう考えると、すでに割高な水準にあるといえる。
しかし、分配金利回りが向上する要素も出始めている。オフィスビルの需要が旺盛であることだ。三菱地所によると、2014年度第4四半期の空室率は2.80%だった。1年前には5.29%だったから、大幅に改善しているのがわかる。今後も旺盛な需要が続くと見る専門家が多く、そうなれば賃料の上昇につながる可能性が高い。Jリートの収益向上も期待できるわけだ。
Jリートの投資対象が広がりつつある。最近、注目されているのはヘルスケア分野だ。2014年11月にヘルスケアリート第1号となる「日本ヘルスケア投資法人」が上場し、2015年3月に「ヘルスケア&メディカル投資法人」が上場し、現在、2本が運用されている。投資対象は有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅だ。
今後、超高齢社会が到来することを考えると、これらの施設の需要はますます増加するはずだ。
病院への投資も検討されている。国土交通省は「病院等を対象とするヘルスケアリートの活用に係るガイドライン検討委員会」を開催し、検討を重ねている。ヘルスケアリートに組み入れられることは、病院側のメリットも大きい。セル&リースバックが利用できるからだ。
これは、病院を売却した後、賃貸契約を結んで利用を続ける方法だ。病院側は、資産効率を向上させることができる。
ただ、病院関係者の反対も強いという。通院患者や入院患者に不安を抱かせることになりかねないからだ。
※マネーポスト2015年夏号