伝統やちむんピンチ 県産白土の不足深刻


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一部の人の盗掘が続いたことで白土の採掘が禁止された私有地=19日、恩納村内
県内産の白土と、白土で表面の化粧を施した作品

 沖縄の伝統焼き物の表面に化粧土として使われる白土が県内で新たに採掘できず、深刻な不足から国内外の白土で一部代用を余儀なくされている。主な産地である恩納村安富祖や名護市喜瀬での土地開発が進み、道路や建物の下に白土が埋まったことなどが原因だ。県内窯元は焼き物を沖縄の土で作りたい思いとは裏腹に、白土が県内に存在するのにもかかわらず使えないという伝統存続の危機を突き付けられている。

 問題が生じたのは2001年ごろから。約6年前には辛うじて白土が採れた私有地でごく一部の人が盗掘し、地権者の信頼を失ったことで採掘が禁止され、入手困難に追い打ちがかかった。
 不足分は極力質の近い白土を各自が国内外から探すなどしている。県内最大の登り窯・読谷山焼「北窯」の親方(工房主)である松田米司さんは約10年前に入手した県産白土を切り崩しながら、場合によってベトナムの白土も配合している。「沖縄の白土で作ることはアイデンティティーに関わる。どうにか伝統を守りたい」と危機感を募らせている。
 行政の協力も求め「ボーリング調査で土分布が分かれば、無駄のないように白土が採れる」と提案する。
 県内24窯元からなる壺屋陶器事業共同組合(那覇市)は今後5~10年分の県産白土を持っており、県内窯元への販売もしているが、新たな入手先のめどはない。読谷村に工房を構える同組合の島袋常秀理事長は「採れなくなれば、外から白土を入れざるを得ない。県内の化粧土は沖縄の焼き物の特徴そのものだ」と語る。
 白土の保護に対する県民意識が高まれば、問題解決への一助となる。沖縄の焼き物の伝統技法を科学的に解明した沖縄科学技術大学院大学の佐二木健一研究員(生物学)は「現代社会で土地開発は避けられないが、工事などの過程で出る白土の一部でも捨てずに活用できれば、沖縄の焼き物を沖縄の土で作ることができる」と話している。
(長浜良起)