国内

東京地下鉄の地震津波対策「止水板」有効性不明と専門家指摘

 宮城県沖を震源とする東日本大震災では、実は東京湾にも津波が押し寄せていた。大都市圏が大地震に襲われた場合、地下鉄は大丈夫なのか。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏は対策の遅れを指摘する。

 * * *
 2009年、中央防災会議は、200年に1度という極めて激しい集中豪雨によって荒川堤防が決壊した場合のシミュレーションを行なった。それによると、最終的には100近い地下鉄の駅に浸水する。

 例えば、東西線は東陽町駅と南砂町駅の間で地上に出るが、そこは東の荒川と西の隅田川に挟まれたゼロメートル地帯で、地下への浸水の入り口となる。大地震によって荒川堤防が決壊し、東京湾を襲う津波が発生した場合も、地下鉄への浸水は起こり得る。

 東京メトロでは隅田川以東の駅出入り口に高さ70cmの止水板(2段組み)に加え、出入り口を塞ぐ防水扉を設置しているが、いざという時、どこまで有効かは不明だ。堤防が決壊するほどの激しい揺れで、止水板をはめ込む設備が壊れはしないのか。防水扉が正常に作動するのか。

 他にも、古い路線のトンネル強度、深い所を走っている路線の「地下難民」、多くの他社線と相互乗り入れをしているがゆえの復旧オペレーションの難しさ、といった多くの問題が地下鉄にはある。

 駅の柱に耐震補強が施され、車両の主要部分に不燃材を使って火災の発生を防ぐといった対策が取られてはいるが、地下空間であるがゆえに、発生し得る問題があまりに多く、十分な対策を取ることは難しい。

※SAPIO2012年3月14日号

関連キーワード

トピックス

なかやまきんに君が参加した“謎の妖怪セミナー”とは…
なかやまきんに君が通う“謎の妖怪セミナー”の仰天内容〈悪いことは妖怪のせい〉〈サントリー製品はすべて妖怪〉出演したサントリーのウェブCMは大丈夫か
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン