<識者評論>「沖縄に寄り添う」は失敗 日米首脳会議


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星野英一(琉大教授)

星野英一(琉大教授)
 G7伊勢志摩サミットの開幕を前に、日米首脳会談が開催された。その中で安倍首相は今回の事件にも触れ、オバマ大統領に対し「実効性のある再発防止策」を求め、両首脳は「沖縄の基地負担の軽減」に全力を尽くすことで合意したという。日本政府は米政府に厳重に抗議し、再発防止に向けた「綱紀粛正」を求めているが、県が求めていた日米地位協定改定の提起については後ろ向きで、従来通りの「運用面の改善」に取り組む姿勢でお茶を濁そうとしている。

 会談を前倒しして開催することで「沖縄への配慮」を示した、日米両政府の危機感の表れだとのニュース解説も聞こえてくるが、だとすると両政府は「沖縄の人々の気持ちに寄り添う」ことに失敗している。

 1995年には「米軍基地の段階的縮小と地位協定の改定」が県民の声だった。2004年には普天間基地の早期閉鎖・返還が、06年以降には辺野古新基地建設反対、普天間の県内移設反対が共通認識となった。10年前後には県外移設、国外移設が「沖縄の声」となった。

 今回の事件を受けて、いま沖縄の民意は「もう基地はいらない」との方向に動き出したように感じる。

 市議会が米軍構成員らの教育徹底や日米地位協定の抜本的な改定の意見書を全会一致で可決する一方、オール沖縄会議は米軍基地の大規模な整理縮小を要求の一つに掲げた。そして36の市民団体は共同して「安全な社会を実現するため、沖縄から全ての基地・軍隊の撤退を求める」との声明を発表した。

 綱紀粛正や徹底した再発防止などの言葉を何百回も聞かされてきた県民は、日米両政府の言う「沖縄の基地負担の軽減」が新基地建設強行を意味することも承知している。
 (国際関係論)