石垣陸自配備、レーダーで電波望遠鏡に影響恐れ 銀河解明計画頓挫も


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 【石垣】石垣市への陸上自衛隊配備が、石垣市登野城にある国の電波望遠鏡の観測に影響し、銀河系誕生の仕組みなどを解明する国立天文台のプロジェクトを阻害する可能性があるとして、専門家の間で懸念の声が広がっている。同天文台の石垣島観測局は、防衛省が提示した市平得大俣の候補地から直線距離で約2キロの位置にあり、設置される可能性のある陸自レーダーの使用周波数によっては宇宙からの電波受信を妨げることになる。観測局の関係者は「機能できなければプロジェクトは頓挫する」と不安視し、早期の情報公開の必要性を指摘している。自衛隊の配備で、国のロマンあるプロジェクトが揺らぐ可能性が出ている。

国立天文台のプロジェクトの中核となっている石垣島観測局の電波望遠鏡=石垣市登野城

 国立天文台の電波望遠鏡は石垣島のほか、岩手県と鹿児島県、東京都の小笠原諸島父島に配置され、同時に同じ星を観測することで直径2300キロの望遠鏡と同じ性能になるという。石垣島観測局が設置された2002年から本格的に観測を開始。天体の位置を精密に特定することで銀河系の立体図を作るほか、構造や運動を解明する国際的なプロジェクトを進めている。
 電波望遠鏡は天体が発する数種類の周波数を受信する仕組み。高い感度と精度が求められ、周辺で発せられる同種の電波も受信してしまうため、石垣島観測局は谷間に設置された経緯がある。
 一方、石垣市で計画される陸自は地対艦ミサイル(SSM)、地対空ミサイル(SAM)を運用する部隊の配置が明らかになっている。そのため監視用レーダーの設置が想定されている。
 同局責任者の宮地竹史さんは「依然概要が分からないが可能性として」と前置きした上で「自衛隊が使用する周波数が、望遠鏡が受信する周波数とその前後の周波数だったり、強かったりした場合、計測に障害が出る。石垣観測所は観測の中核。機能できなければプロジェクトは頓挫する」と不安をのぞかせる。
 電波望遠鏡の電波受信環境は法律でも保護されているが、自衛隊法第一一二条で電波法の適用除外が定められている。
 宮地さんは「相手は自衛隊。機密性も高いのでどちらが優先されるか分からない」と予想される状況を説明し、候補地の近さに困惑した。
 研究者からは早期の情報開示を求める声が上がっている。(謝花史哲)