イタチザメ、子宮内に栄養あった 美ら島財団が解明


この記事を書いた人 志良堂 仁

 【本部】沖縄美ら島財団(本部町)は26日、米国博士2氏との共同研究で、大型危険サメ「イタチザメ」の子どもが成長するのに十分な有機物が母ザメの子宮内の液体に存在することを解明したと発表した。胎盤やへその緒を持たない同種は、小さな卵黄以外の直接的な栄養供給がなく、胎内での成長過程が不明だった。今回の研究はサメ類の新たな繁殖様式の特定となり、海洋生物の生態解明や保存、希少生物の繁殖育成などに期待される。

 研究は、沖縄美ら島財団の佐藤圭一博士と米国海洋大気庁(NOAA)のホセ・カストロ博士、米クレムソン大のアシュビー・ボーディン博士(故人)の連名で「妊娠イタチザメの胎仔(たいし)に対する新たな栄養供給機構」の論文として、英国の海洋生物に関する国際誌「マリンバイオロジーリサーチ」に22日付で掲載された。
 イタチザメは世界の熱帯から亜熱帯の海域に分布し県内でも広く見られる。一度で最大80匹ほどの子ザメを妊娠、出産することで知られる一方で、胎内での成長について栄養供給方法が未解明だった。
 同種は授精前の卵の状態では乾燥重量30グラムほどだが、胎内で成長した子ザメは体長80センチ、体重350グラムと10倍以上になるという。
 研究チームは母ザメの子宮内部の液体に着目。八重山漁協や読谷漁港から個体の提供を受け、液体の栄養物質の有無を調査した結果、豊富な有機物が含まれていることを確認。これが子ザメに取り込まれているとし、卵黄の栄養に依存せずに成長すると結論付けた。
 佐藤博士は「子宮内が薄い膜で小部屋のように仕切られており、その中の透明な液体に栄養分となる有機物が存在した」と説明。「イタチザメを含むメジロザメのグループは、へその緒と胎盤を持っているが、イタチザメにはない。イタチザメの祖先が失った過程で、特異な繁殖方法を獲得したと思う」と話した。

イタチザメの胎仔(妊娠初期、体長約10センチ)と卵黄(沖縄美ら島財団提供)
本部町の沖縄美ら海水族館で飼育されているイタチザメの成体(沖縄美ら島財団提供)