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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2014年9月10日 (水)

「リフォーム事業者登録制度」は、リフォームの依頼先選びの目安になる?

写真:iStock / thinkstock
写真:iStock / thinkstock
【今週の住活トピック】
「住宅リフォーム事業者団体登録制度」を創設/国土交通省
http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000537.html

国土交通省は9月1日に、「住宅リフォーム事業者団体登録制度」を創設した。多様な事業者が参入している住宅のリフォームについて、国が認定する登録制度を創設することで、消費者が安心してリフォームできる環境を整備する狙いだ。リフォーム事業者を選ぶ際の目安になるのか? どういった制度なのか見ていこう。

課題が多いリフォーム市場に関する環境整備が目的

ひとくちに、住宅のリフォームといっても、多様にある。住宅の骨組みのみを残してほぼ新規に改築するリフォームもあれば、内装だけを変えるもの、設備だけを交換するものもある。また、耐震や省エネ、バリアフリーなど機能を上げるリフォームもあれば、マンションの大規模修繕工事もリフォームに含まれる。こうした多様な工事内容によって、必要な体制や技術が異なるし、その技術も日々進化している。

一方、リフォームを依頼する一般消費者には、技術力の違いや見積もりの額の違いが分かりづらいという不安がある。きちんと相談に応じてくれて、適切な技術と価格で工事をしてくれ、工事中のトラブルや工事後のトラブルも少ないといった事業者に依頼したいところだが、それを判断する材料は乏しいというのが実態だ。

また、リフォーム事業者は工務店やリフォーム会社、ハウスメーカー、デベロッパー、住宅設備機器や建材メーカー、家電量販店やホームセンター等の小売系など、実にさまざまな業界から参入が進んでいる。さらに、500万円以下の工事であれば、建設業の許可を受けてなくても工事ができるなど、住宅を新築する場合に比べると規制が緩いという課題もあり、トラブルが多いという側面もある。

今後のリフォーム市場の拡大に伴い、安心してリフォームできる環境を整えようと、国土交通省は2013年に「事業者団体を通じた適正な住宅リフォーム事業の推進に関する検討会」を設置した。ポイントになるのは、リフォームの事業者団体を積極的に活用して、個別のリフォーム事業者の適正化を図ろうとしている点だ。

【図表1】「事業者団体を通じた適正な住宅リフォーム事業の推進に関する検討会」におけるとりまとめに関する資料

【図表1】「事業者団体を通じた適正な住宅リフォーム事業の推進に関する検討会」におけるとりまとめに関する資料

創設された「リフォーム事業者団体による登録制度」とは?

2014年4月に検討会がとりまとめた内容を受けて、国土交通省は「住宅リフォーム事業者団体登録規程」を定め、住宅リフォーム事業者団体登録制度を創設した。その主な内容を見ていこう。

まず、リフォーム事業者団体として認定されるには、次のような要件が求められる。
・団体に所属するリフォーム事業者の数やエリアが一定以上であること
・団体として一定期間以上活動しており、資力に問題がないこと
・一般社団法人や中小企業等協同組合などであること
さらに、団体として次のような活動をしていることが求められる。
・所属する事業者への人材育成を行い、適正なリフォームを行う知識・技術があることを確認している
・消費者に対する情報提供を行い、相談窓口を設けている

また、登録が認められた団体は、所属する事業者に対して、「契約書や見積書などを書面で交付すること」「一定金額以上の工事を請け負う場合に瑕疵保険(※)に加入すること」などを監督指導することが求められている。
※瑕疵保険(かしほけん)とは、住宅を引き渡されたときに知り得なかった重大な欠陥が見つかった場合、確実に補修や損害賠償を行えるように、請け負った事業者が倒産するなどした場合でも保険でカバーする仕組み。ここでは、リフォーム瑕疵保険または大規模修繕瑕疵保険の加入を求めている。

つまり、登録制度で団体を監督することで、団体を通じて所属するリフォーム事業者の適正化を求めようとするもの。なお、登録期間は3年間の更新制となる。

リフォーム事業者選びの目安になる?

国土交通省が9月1日に公表した「住宅リフォーム事業者団体登録制度に係るガイドライン」には、次の留意点も挙げられている。
・登録制度は任意であること
・登録を受けていない団体や登録団体に所属していないリフォーム事業者が、それだけで能力が不足している事業者であるというわけではないこと

上記の留意点にもあるように、登録されていない事業者というだけで、資質や技術を否定することもできない。また、登録された事業者が自分の希望にあうリフォーム工事を行う資質や技術があるかどうかも別の話だ。最終的には、リフォームを発注する消費者自身が、複数のリフォーム事業者と面談して、自分たちの希望をくみ取って適切な助言をしてくれるか、契約書や見積書が妥当かなどを比較検討して、信頼のおける事業者を選ぶことが大切だ。

とはいえ、今後登録が順調に進んでいけば、登録の有無が一定の判断材料にはなるだろう。登録している事業者であれば、ある程度安心ということになる。契約書や見積書の内容に不明な点があれば、登録団体のリフォーム事業者の場合は団体の相談窓口に相談をするという活用方法もある。
※登録されていない場合は、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」などを利用することもできる。

登録状況や各団体の特性などについて今後も注目していきたい。

●国土交通省「住宅リフォーム事業者団体登録制度」
HP:http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000090.html
●国土交通省「事業者団体を通じた適正な住宅リフォーム事業の推進に関する検討会」
HP:http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr4_000033.html
●(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住まいるダイヤル」
HP:http://www.chord.or.jp/index.php
https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/97a3e7d658abcc014cf75ce60ff9c1b1.jpg
連載 今週の住活トピック 住宅ジャーナリストが住まいの最新ニュースを紹介&解説する連載。毎週水曜更新の「今週の住活トピック」。
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