カナダは、医療用大麻規制(Marijuana for medical purposes regulations)を始動させる準備をしている。知られているかぎり、治療用の大麻生産のための最も野心的なプログラムのひとつだ。13億ドルの予算が割り当てられ、これから2024年までに50万人もの人々がかかわることになるだろう。
政府の管理により、質が高く、純粋で細菌汚染のない大麻が保証されるだろう。さらに栽培者たちは新しい技術により、患者の必要に応じてさまざまなレヴェルの有効成分THC(テトラヒドロカンナビノール)を含有する大麻を生産するだろう。処置は1年間行われ、どのような種類のマリファナをどれだけ摂取するかを決めるのは、医師の処方箋となるだろう。
「大麻には患者の苦痛を緩和する作用があります」と、医師でジェノヴァ大学の教員、フランコ・エンリケットは説明する。「化学療法の間の吐き気や嘔吐の抑制以外にも、食欲の増加と気分の全般的な改善という、ポジティヴな効果が臨床試験で証明されました」。
この植物の薬理学的利用についての議論は、以前から進められてきた。しかしエンリケットにとって、科学コミュニティ内部における反対意見について話をすることはもはや意味がない。「効力はもう証明されていますし、データは広く認知されています」と彼は語る。「世界には、正規の手段でTHCやカンナビノイドを含む、治療目的の数多くの調合剤が存在します。ここイタリアでもイタリア医薬品庁、AIFAによって認可が行われています」。
カナダの医療プログラムは、商業的観点からみると重要な革新を取り入れている。いままで大麻は個人栽培者によってのみ生産されてきて、彼らは一度に2人の患者に供給することができた。今回必要な収穫規模を考えると、小規模生産者は認可と地位を失い、大規模な農業法人によって取って代わられるだろう。
この物質の医療目的での使用の出発点となる数字は、1gあたり7.60ドルだろう。しかしプログラムが制度として動き出せば、価格は1gあたり3ドルに下がると予想されている。
しかし、批判がないわけではない。大麻合法化賛成の権威となっている雑誌『Cannabis Culture』は、「工業的」方法に基づいて栽培される生産物の安全性に疑義を呈した。彼らの恐れは、大規模生産者を優遇することでほかのすべての人々が排除されるようになり、独占化がそのうち生じることになる、というものだ。
このような動きがカナダで起きているのは偶然ではない。この国では05年に、初めて多発性硬化症やがんの処置のための大麻エキス、Sativexスプレーの販売が認可された。5万人もの人々がカナダの保険制度によって許可を受けて、この植物を利用しながら治療を行っている。
さらにこの国では、大麻は莫大なビジネスとなる。ヴァンクーヴァーだけでも、連邦法が娯楽目的の使用と所有を禁止しているにもかかわらず、毎年5億ドルもの大麻の取引が行われている。
カナダのブリティッシュ・コロンビア州では00年以降、BC大麻党が活動している。彼らは大麻の非罰則化を求めていて、支持は4%に達している。ヴァンクーヴァー市長のグレガー・ロバートソンは彼らと同意見で、禁止反対の立場をはっきりと表明した。数カ月前に実施されたアンケートでは、カナダ人の65%が軽いドラッグの合法化に賛成であることが明らかになった。
TEXT BY DARIO FALCINI
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI