日本最後の清流といわれる、全長196kmの四万十川。その中流域にある、自然に囲まれたのどかな町が、突然もたらされた「日本一」の看板をめぐって、思わぬバトルに巻き込まれている。
高知県四万十市西土佐にある江川崎地域気象観測所で、国内観測史上最高気温となる41.0度を記録したのは8月12日のことだった。
四万十市は猛暑で知られる地域で、10日から4日連続で40度を超えていた。四方を山に囲まれた盆地で、温かい空気が溜まりやすいのだという。
降ってわいた日本一の称号に、地元は大騒ぎだ。駅に記念パネルが飾られ、道路脇や食堂前など、あちこちに『日本一暑い江川崎』の立て看板が並ぶ。西土佐の産直市場では、通常1杯100円のかき氷を41度にちなんで41円で販売を始めた。
「3日間で2000杯以上も売れました。例年この時期の市場のお客さんは、1日200人程度ですが、今年は1日1000人以上いらしてます」(西土佐ふるさと市組合)
江川崎の観測所にも大勢の観光客が立ち寄り、すっかり人気スポットになっている。ところが、この盛り上がりを素直に喜べない地元住民もいる。
「この暑さに加えて雨も全然降らないから、土が乾いて、野菜が育たんのです。里芋やなすは葉っぱが枯れてしまい、きゅうりも例年に比べて全然大きくならん。市場に持って行けるもんがなんもないんで、農家はみな悲鳴を上げてます…」(40代農家女性)
農業だけでなく、漁業も大打撃を受けている。四万十市名物の鮎が、この高温でいなくなり、収穫量が昨年比で10分の1に落ち込んでいるのだ。
※女性セブン2013年9月5日号