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駅の階段で押されてケガしたら犯人不詳でも被害届を出すべし

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「会社からの帰宅途中、駅の階段で押されてけがをしました」と、以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 夕方、勤務先からの帰宅途中に駅の階段で押されて転倒し、けがをしました。加害者はまだわかっていませんが、もし後ろから押して転倒の原因を作った人がわかれば、訴えて責任を追及し、治療費などの請求もできるのでしょうか。このような事故に遭った場合、どう対処すればいいでしょうか。

【回答】
 加害者が判明し、その人物があなたを押して転倒させたことが証明できるのであれば、責任追及は可能です。その場合、あなたに発生した損害、すなわち治療費や慰謝料、さらに休業損害等の請求ができます。

 階段で他人を押す行為は、極めて危険な行為であり、加害者は被害者に発生した損害を賠償する責任があります。ただし、直接あなたを押した人に責任があるかどうかは、一概にいえません。階段上で、さらに上にいた人が転んで、加害者と目される人もやむなくあなたを押したかもしれません。

 しかしこうしたことは、あとになっては再現できなくなります。そこで事故直後に加害者を捕まえて、その氏名や連絡先を確認するとともに、事故を目撃した人の協力を得るようにする必要があります。そのためにはけがの程度によるでしょうが、救急車だけでなく、警察にも連絡して現場に来てもらうことも有効です。

 人を押して転倒させ、けがをさせた場合、故意であれば傷害罪になります。また、不注意でうっかり押して転倒させてけがをさせた場合(過失)でも、過失傷害として、告訴があれば犯罪として処罰されます。

 こうした対応ができず、加害者が特定できなくても、故意に押されて重傷を負ったような場合は、危険な行為で悪質ですから、犯人不詳でも、被害届を出したり、告訴して警察の捜査を求めるべきでしょう。

 ところで、事故に遭ったのは勤務先を出たあとの帰宅途中のことですから、通勤災害として労災が適用されると思います。もっとも、友人と飲みに行くなどで寄り道し、通勤経路から外れて事故に遭った場合は認められません。また、事故が加害者とのけんかの上で起きた場合も通常の通勤で起きることではないので、労災の対象外になります。

※週刊ポスト2011年9月9日号

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