2013年7月から東急リバブルが、「相続税立替払サービス」を開始した。それに続き、8月からは住友不動産販売が、「相続税立て替え融資サービス」を開始した。不動産仲介会社が相次いで、相続税の立て替え融資を開始する理由はどこにあるのだろう。
相続税は、相続開始を知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10カ月以内に納税しなければならない。しかし、相続税の納付額は、相続財産がいくらになるか評価し、相続人全員で誰が何を相続するか協議し、遺産分割が確定しないと決まらない。
遺産分割が確定するまでに時間がかかるうえ、納税資金の準備期間も必要となる。さらに、相続財産の中心が不動産ということも多いため、あわてて不動産を売却せざるをえないという事態も起こりうる。不動産の売買には、一般的に3~4カ月はかかるといわれているので、10カ月以内という期限は意外に短いものだ。
そうした事態に備えて、不動産仲介会社が、自社で売買契約が成立済みの売り主(東急リバブルの場合は売却保証システム利用の場合も対象)に対し、相続税を立て替える融資を行い、売却代金を受け取る際に立て替え分を差し引く仕組みが、相続税立て替え融資サービスだ。
東急リバブルは税理士法人レガシィと、住友不動産販売は三井住友銀行と提携していること、融資額が東急リバブルは最大1億円、住友不動産販売が最大3億円(売価の7割以内)といった違いはあるが、サービスの概要は、
・資金使途:相続税納税額、納税に必要な費用(提携先が認めた額)
・融資期間:最長1年間
・利率:年利1.475%(短期プライムレート連動)
と、同様のものになっている。
サービスを利用することで、相続税の納付期限を気にして安値で売り急ぐ、といったことが避けられるというメリットがある。
不動産仲介会社が相続税の立て替えに注目した理由はなんだろう?
まず、相続税の課税を強化する改正が予定されており、今より相続税を課税される事例が増える、といった背景がある。
2015年以降の相続については、遺産のうちの一定額は課税対象にしない「基礎控除」が縮小され、さらに2億円を超える相続の場合の税率がアップする(詳細は図表参照)。2011年の課税割合(年間課税件数/年間死亡者数)は4.1%に過ぎないが、基礎控除が縮小されると課税件数が倍増するといわれている。
特に、東京都区内などの地価の高いエリアの不動産を相続する場合は、課税される可能性が高くなる。あらかじめ相続税の準備をしていない場合は、不動産を売却せざるを得ない可能性が高く、こうした需要を取り込みたいという狙いがある。東急リバブル、住友不動産販売ともに、まずは首都圏でサービスを開始するとしている。
また、仲介会社の収入源は、仲介手数料にある。仲介手数料は、(売買価格の3%+6万円)+消費税が上限なので、売買価格が高いほど手数料も高くなる。したがって、円滑な相続をサポートすることで、富裕層を囲い込みたいという理由がある。
住宅を初めて買う層の人口は減少を続ける一方で、高齢化による相続件数は増加が見込まれる。立て替え融資サービスに限らず、相続税の改正をにらんだ顧客獲得のための新しいサービスが、今後は活発化すると考えられる。