新しい音楽の指標を作り出す

音楽の共通言語を生み出すためには、個別の楽曲やアーティストの戦略、戦術を検討する上でも可能ですが、もう少し大きなレイヤーで物事を俯瞰してみると、前回の記事「日本で権威ある音楽アワードが必要な2つの理由」でも言及しましたが、音楽アワードの存在は確実にキーポイントになります。

もしも日本で音楽アワードが生まれ変わるとしたら、グラミー賞のような専門家のキュレーションだとしても、Youtube Music Awardsのようなユーザーが決めるものだったとしても結局、生活者にとって「聴くべき、聴いておくべき曲」となる信頼性を担保したアワードである必要があります。そして、何よりアワードと併せてランキングも、もはや変わらざるをえません

音楽ランキングの仕組みは変化している

現にドイツでは公式音楽チャートにおいて音楽ストリーミングサービスの再生回数データを集計対象に加えるとドイツの音楽産業連邦協会(BVMI)が発表しました。

アメリカの音楽ランキングのビルボードも2012年から音楽ストリーミングサービスでの再生データをチャートに反映し始めています。そして、イギリスも同様です。

海外では足並みを揃えるように音楽ストリーミングのデータ集計を開始したことは、いよいよストリーミングが無視できない存在にまで拡大していると言えます。

参考:All Digital Musicドイツ、音楽ストリーミングからの再生回数をシングルチャートに連携しランキングを拡充

NextBigSound_Logo_Color

Next Big Soundは、バンドの人気や音楽ファンの対話的行動の内容を、Facebook、Twitter、YouTube、Last.fmなどのソーシャルメディアでの情報を調べ上げるビックデータの調査会社です。

Next Big Soundは、ビルボードチャートにソーシャル50とNext Big Soundが注目する新人アーティストリストというふたつのランキングにデータを提供しています。

このような海外での動きを踏まえて、日本でも新しい音楽の指標を整備し直す必要があります。オリコンランキングはもはや機能していません。日本でも強い影響力を持っているジャニーズがデジタルを解禁していないので、大きな物量が動くジャニーズを含めるのか、含めないのかという難しい問題は確かに存在します。

そもそも、別に「聴くべき、聴いておくべき曲」なんていらないと考える方もいるでしょう。しかし、音楽がもっと日常の中に浸透して、多くの生活者が音楽を聴く、聴きたくなる風土を作ることは誰かを傷つけるものではありません

音楽をコミュニケーションツールとして復権させる

「聴くべき、聴いておくべき曲」を生み出すことは、音楽が再び生活者同士の中で、コミュニケーションツールとして復権する可能性を秘めています

学校で、職場で、家庭で音楽が媒介となるコミュニケーションを発生させる事が出来ます。音楽は人生を、生活を、仕事を、恋愛を、豊かにするチカラを持っていると思います。

音楽の新しい指標を生み出すことは、ひいては音楽が人生に溶け込むことです。音楽の指標の刷新に対して、過去を懐かしんでいるわけでも、過去を憂いているのでもなく、音楽というチカラは強いコミュニケーション力を本来的に内包しています。音楽の新たな指標が描く未来は、音楽が人と人をつなげ、鮮やかなコミュニケーションを生み出すことが出来るはずです。

音楽がコミュニケーションとして復権する際のキーワードとして、「戦略PR」やソーシャルメディアは必ず必要になります。

特に「戦略PR」は必須です。なぜなら、CDランキングでも、配信ランキングでも、ストリーミング再生ランキングだったとしても、ある日、世の中に「新しい音楽ランキングが出来ました!」と告知したとします。ほとんどの生活者は見向きもしないでしょう。どのランキングであろうと関係ありません。理由は明確です。必要性を感じないからです。そして、世の中に「聴くべき、聴いておくべき曲」という空気が生まれていないからです。

だからこそ、「戦略PR」によってカジュアル世論を生み出し、生活者に「気づき」を与えて、「聴くべき、聴いておくべき曲」という理由を作り出す必要性があります。それは「戦略PR」でなければ、不可能です。

音楽の新しい指標を生み出すことは手段でしかありません。目的は音楽の新たな指標が描く未来は、音楽が人と人をつなげ、コミュニケーションを生み出すことです。その結果、ある一側面ではありますが、音楽を文化として根付かせることが出来ると思っています。

最後まで読んでくださってありがとうございました。