住まいの雑学
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2013年2月2日 (土)

湿地を守る「ラムサール条約」では田んぼも湿地と定義されてるって知ってた?

ラムサール条約では田んぼも湿地と定義。日本の湿地の現状を知る
Photo: iStockphoto / thinkstock

今日2月2日は「世界湿地の日」。1971年の今日、ラムサール条約が締結されたことから、1996年に毎年2月2日を「世界湿地の日」とすることを定めた。ラムサール条約の正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」で、イランのラムサールで条約が作成されたことから、この略称がつけられた。

皆さんは“湿地”と聞いて、どのようなものを思い浮かべるだろうか。潮干狩りのできる海の浅瀬を思い浮かべた人もいれば、葦の生い茂る水辺や沼地を思い浮かべた人もいるだろう。実はラムサール条約における湿地の定義は幅広い。

日本湿地学会事務局の方からこのような説明が聞けた。

「日本では、釧路湿原など46湿地がラムサール条約湿地(国際的に重要な湿地)として登録されています。ラムサール条約では、湿地の定義を広くとっていて、湿原や湖沼、河川、干潟やマングローブ林、サンゴ礁、さらにはダム湖や水田などの人工湿地も、湿地として扱っています」

“ダム湖が湿地なの?”と不思議に思う人もいるだろう。正式名称「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」に注目してほしい。つまり条約では、水鳥を始めとした動植物に重要であれば、自然物はもちろん人工物でも“湿地”と認めているのだ。

そんな湿地だが、近年はさまざまな原因により消滅の危機にある。なかでも大きな原因が「開発」だ。例えば沖縄県の泡瀬干潟では、1980年代から埋め立て事業が進められてきた。その後、事業費負担の問題や経済効果が疑問視されるようになり工事は中断されている。長崎県の諫早湾では、1989年から国営諫早湾干拓事業が開始。1997年に堤防が締め切られ、堤防内の干潟は消滅した。ただし堤防の排水門を開けるなどの提言がなされており、干潟復活の可能性を模索中だ。

「開発」以外にも自然環境の変化がある。例えば温暖化による気温上昇や、ゲリラ豪雨や雪解け水の増加による水質変化。また皮肉にもラムサール条約への登録により観光客が増えたことで「踏み荒らされる」「ゴミが増える」「貴重な動植物が採集される」「外部の動植物が持ち込まれる」などの被害が出ているところもある。

日本湿地学会事務局の方は、湿地の重要性についてこう語っている。

「人間を含めて、すべての生き物は水がないと生きていけません。その水を何らかの形で貯めているのが湿地です。また、沿岸部では干潟やマングローブ、サンゴ礁は漁業資源の確保になくてはならない場所となっています。さらに、多くの湿地は生物多様性の宝庫となっていたり、炭素の貯蔵庫となっていたり、我々の生活に大切なさまざまな役割をになってくれています」

失われたものを再生させるには、莫大な労力や費用がかかる。貴重な自然の一つである湿地を大事に見守っていきたいものだ。

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